* Category : 「 ミステリ&サスペンス 」の記事
- 2008-03-06 ポール・ドハティ
- 2008-03-04 『擬死』 アン・フレイジャー
- 2008-02-28 『悪魔はすぐそこに』 D・M・ディヴァイン
- 2008-02-18 『ビーコン街の殺人』 ロジャー・スカーレット
- 2008-02-12 『甘美なる危険』 マージェリー・アリンガム
- 2008-02-03 『道化の死』 ナイオ・マーシュ
- 2007-12-30 『女王館の秘密』 ビクトリア・ホルト
- 2007-10-25 『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』 ウィリアム・ブリテン
- 2007-10-18 『緑は危険』 クリスチアナ・ブランド
- 2007-09-07 『黒い天使』 コーネル・ウールリッチ
2008. 03. 06
ポール・ドハティ
来月のポケミス新刊に、ポール・ドハティが来た〜!(ハヤカワ・オンライン情報)
でも、ずっと待ってたロジャー・シャロットシリーズの続きじゃなくて、密偵ヒュー・コーベットものなのかよ!
でもでも、ドハティの代表作だというヒュー・コーベットシリーズが読めるのもかなり嬉しいな〜
ついでに、『赤き死の訪れ』の読了メモをずっと書きそびれていたので、ここで書いておこっと。
『赤き死の訪れ』
The House of the Red Slayer (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫
アセルスタン修道士シリーズ2作目。
とっても面白かった。前作も悪くなかったけれど、ミステリ部分も物語の盛り上げ方も格段に良くなってるんじゃないかなあ。連続殺人事件のそれぞれのトリックは派手さはないものの、アセルスタンが抱えている教区の墓荒しの問題の真相も含めた合わせ技で結構満足感があるし、「死んだはずの人間が復讐しに舞い戻ってきたのか」という時代背景にマッチした展開も好みでした。
アセルスタンもクランストンも犯人に対して手厳しかったけれど、私は犯人に大いに同情しちゃうなー。
でも、ずっと待ってたロジャー・シャロットシリーズの続きじゃなくて、密偵ヒュー・コーベットものなのかよ!
でもでも、ドハティの代表作だというヒュー・コーベットシリーズが読めるのもかなり嬉しいな〜
ついでに、『赤き死の訪れ』の読了メモをずっと書きそびれていたので、ここで書いておこっと。
『赤き死の訪れ』The House of the Red Slayer (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫
ロンドン塔の城守、ラルフ・ホイットン卿が塔内の居室で殺された。卿は数日前に届いた手紙に、異常なほどおびえていたという。その後も、同様に手紙を受けとった者たちのもとを、死が相次いで訪れる。それぞれ悩みを抱えながらも、姿なき殺人者を追うアセルスタン修道士とクランストン検死官…。クリスマスを控えた極寒のロンドンに展開する、中世謎解きシリーズの傑作第二弾。 (裏表紙より)
アセルスタン修道士シリーズ2作目。
とっても面白かった。前作も悪くなかったけれど、ミステリ部分も物語の盛り上げ方も格段に良くなってるんじゃないかなあ。連続殺人事件のそれぞれのトリックは派手さはないものの、アセルスタンが抱えている教区の墓荒しの問題の真相も含めた合わせ技で結構満足感があるし、「死んだはずの人間が復讐しに舞い戻ってきたのか」という時代背景にマッチした展開も好みでした。
アセルスタンもクランストンも犯人に対して手厳しかったけれど、私は犯人に大いに同情しちゃうなー。
* Tag : ポール・ドハティ(ドハティー)
2008. 03. 04
『擬死』 アン・フレイジャー
Play Dead (2004)アン・フレイジャー / 北沢あかね 訳 / ランダムハウス講談社文庫
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ジョージア州サヴァナ。北米で最も美しいこの歴史都市で、解剖中の死体が息を吹き返し、再び死ぬという事件が発生した。それを皮切りに似たような事件が相次ぎ、街は“ゾンビ事件”の恐怖に包まれる。殺人課の女刑事エリーズは捜査に乗り出すが、まったくやる気のない相棒刑事のグールド、あやしい娼館の女主人、そして自分の過去にまつわる忌まわしい噂に行く手を阻まれ……。期待の新人による、新感覚の恐怖ミステリ! (裏表紙より)
オカルト・ホラーものかと思ったら、よくあるタイプの普通のミステリー小説でした。アメリカ南部が舞台で、「ヴードゥー」やら「呪術」やらというキーワードが出てくるところは、J・D・カーの後期作品をちょっと連想してみたり。
暗い過去を抱えた主人公たち(エリーズとグールド)が事件を追ううちに自分の過去とも向き合うことになり、それを乗り越えていく……といった定番の展開なのですが、その過去がらみの話にページを割きすぎて事件の話とどっちつかずになっているし、最後はなんだか「なあなあ」で終わってしまっているしで、なんとも食い足りない感じでした。
犯人の意外性は十二分だったけど。(グールドのダメっぷりも半端じゃなかった。と言うか、この物語って、彼がヒロインですよね?)
2008. 02. 28
『悪魔はすぐそこに』 D・M・ディヴァイン
Devil at Your Elbow (1966)D・M・ディヴァイン / 山田蘭 訳 / 創元推理文庫
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ハードゲート大学の数学講師ピーターは、横領容疑で免職の危機にある亡父の友人ハクストンに助力を乞われた。だが審問の場でハクストンは、教授たちに脅迫めいた言葉を吐いたのち変死する。次いで図書館で殺人が起き、名誉学長暗殺を仄めかす手紙が舞い込む。相次ぐ事件は、ピーターの父を死に追いやった八年前の醜聞が原因なのか。クリスティが絶賛した技巧派が贈る傑作、本邦初訳。 (裏表紙より)
年末の各種ミステリ・ランキングの上位に入っていたので気になっていたのを、今更ながら読んでみました。
あー、これは高評価なのも十分納得。初読時はオーソドックスなフーダニット本格として楽しめる、しかしすごいのは二読目。最初からざっと読み返してみて、著者の技巧ぶりに舌を巻かされました。
【以下、ネタバレにつき反転】
翻訳であるために日付表記の伏線がわかりやすくなってしまっているのがもったいない〜。私は最初にあの日付表記が出てきたときに「どういう意味だ? あ、日付か」とひっかかりを感じていたので、脅迫状に書かれた日付を見た時点で犯人(とその動機)がわかってしまったもの。まあ、その後はミスディレクションを意識しながら読むことができたんだけど。あの日付の部分、原文ではどのように書き分けられていたのかな。
2008. 02. 18
『ビーコン街の殺人』 ロジャー・スカーレット
The Beacon Hill Murders (1930)ロジャー・スカーレット / 板垣節子 訳 / 論創社
論創海外ミステリ72
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ビーコン街に住む株成金の男サットンの屋敷に招待された弁護士アンダーウッド。夕食の席には、サットンの家族の他に、ボストン社交界の花であるミセス・アーンセニイの姿もあった。夜も更けてアンダーウッドが帰宅しようとしたとき、屋敷に銃声と女性の悲鳴が響き渡る。皆が二階の一室に駆けつけると、サットンが心臓を撃ち抜かれて死んでいた。部屋の中にはミセス・アーンセニイがおり、傍らのテーブルの上にピストルが。他に部屋に出入りした者は誰もおらず、ミセス・アーンセニイに容疑がかけられるが……。
ロジャー・スカーレットのデビュー作。連続して起きた二つの不可能犯罪に、西太后由来の非常に高価な翡翠のペンダントの消失が絡んできます。探偵役は他の作品と同じくボストン警察のノートン・ケイン警視、助手役は語り手アンダーウッドとモートン巡査部長。
「陰気な屋敷で嫌われ者の当主が殺される」というスタイルは、第一作から既に確立されていたんですねー。屋敷の人々(主に被害者の親族)の不気味さというスカーレット特有の雰囲気もしっかり出ています。
トリックはあまりパッとしない&かなり無理があるような気がするけれど、伏線やミスリーディングなどはなかなかよく出来ているんじゃないかと思います。多少強引なところも気になるものの、全体としては楽しく読むことができました。
これで、スカーレットの全5作品のなかで新訳(完訳)がないのは2作目 "The Back Bay Murders" だけになりましたねー。それの刊行も期待しております>論創社さま。
* Tag : ロジャー・スカーレット 論創海外ミステリ
2008. 02. 12
『甘美なる危険』 マージェリー・アリンガム
Sweet Danger (1933)マージェリー・アリンガム / 小林晋 訳 / 新樹社ミステリ
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十字軍の時代から、イギリスのポンティスブライト伯爵家が領有してきたバルカン半島の小王国アヴェルナ。19世紀半ばに伯爵家は途絶え、国の所有権を示す証文・譲渡証書・王冠の三つの証拠もどこかへ消失した。しかし突如、アヴェルナが軍事上重要な地点となり、三つの証拠を入手するよう当局の依頼を受けたアルバート・キャンピオンは、友人たちと共に伯爵家の元領地に向かう。その村の水車場では、伯爵家の正統な継承者だと主張する少年ハル・フィットンが姉のメアリーやアマンダらとともに暮らしていた。水車場に下宿したキャンピオンは村に隠された手がかりを追うが、巨大企業の社長サヴァネイク一味も三つの証拠を狙っており……。
これまで読んできたアリンガム作品とは趣が異なる、宝探しもののバリバリの冒険スリラー。
アヴェルナが軍事上重要な地点となる経緯がすごいです。海に面しつつも完全に岩山に囲まれた狭い土地だったのに、地震があったために岩に亀裂が入って崩れ、短い海岸線が出来て港を造ることが可能になったという。そんな規模の地震って、かなりの大惨事じゃないのか?とツッコミを入れたくなるのですが、そんなことはさておき。
キャンピオンに元泥棒の従僕ラッグ、そして本作で初登場となるアマンダ・フィットンが活躍しているのでシリーズキャラクターに馴染みのある読者なら楽しめますが、単独の作品として見るとどうなのかなあ……と思ってしまいます。キャンピオンが一足飛びに真相を見抜いてしまうところなど、登場人物のキャラクター性に大きく依存しすぎなような気がする。
あと、この作品のときには17歳の少女であるアマンダは、私にとっては「魅力的なお転婆ヒロイン」という造形のあざとさが少々鼻につくように思えました。まあ、単に好みの問題なんだけど。
ところで、冒頭にキャンピオンの経歴が載っているのですが、アルバート・キャンピオンって偽名なんですよね(他の作品でそのことは読んだはずだけど忘れてた)。英国王室に連なる貴族の家の次男で、そんな貴人が探偵業などに従事していたらスキャンダルものだから、偽名を使って活動しているという。そんな派手な設定でありながら、どうして、他の作品ではいつもいつもあんなに目立たず地味な存在なんだろうね……(笑)。
2008. 02. 03
『道化の死』 ナイオ・マーシュ
Off with His Head (1956)ナイオ・マーシュ / 清野泉 訳 / 国書刊行会
世界探偵小説全集41
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年に一度、冬至の次の水曜日にマーディアン・キャッスルで催される民俗舞踊「五人息子衆のモリスダンス」。そのクライマックスで、道化役の男が首を切り落とされた死体となって発見される。舞台は終始見物の目にさらされており、誰にも犯行は不可能なはずだった。スコットランド・ヤードのアレン警視が捜査に乗り出す。民俗色豊かな背景、巧妙な伏線に大胆不敵なトリック。マーシュの戦後代表作。
雪に囲まれた排他的な田舎の村で殺人事件が起こる――発表されたのは1956年ですが、黄金期本格の雰囲気そのままの作品。傑作とまでは行かなくともしっかりと作られた推理小説で、個性的な登場人物たちのいきいきとした描写や軽妙な会話というマーシュ作品の魅力もあって、楽しんで読めました。
マーシュの作品はたいてい殺人場面が派手かつ残酷なのですが、剣を使った舞踊の最中に道化役の男の首が切り落とされて発見されるという本作は特に派手&残酷です。しかも衆人環視下。
そんなインパクトのある不可能犯罪興味と比べると、フーダニット興味のほうはやや薄いように思えます。それは多分、主たる容疑者であるアンダースン家の五人兄弟が1名を除いて、あまりはっきりと書き分けられていないからではないかな。ただ、これはマーシュが「書き分けられなかった」のではなく「書き分けなかっただけ」なのだろう、ということは、容疑者から外されている目撃者たちは個性豊かに、さらに人間模様も濃く描かれていることから窺えます。今回、マーシュの興味は五人兄弟よりも、舞踊の場面を作るのに必要だった目撃者たちに向けられていたということかな。(その傾向は、他の作品にも多かれ少なかれ見られるような気がします)
ところで、国書刊行会の「世界探偵小説全集」もこの巻をもって終了。非常に残念だけど、他の出版社からもこれだけたくさんクラシック・ミステリが翻訳されていると、続けるのも難しいのでしょうか。でも、まだ三分の一ほど読んでいないのがあるから、とりあえずそれを読まなくてはね〜。
(論創社のマーシュはどうなってるんでしょうか……。もう半分諦めたようなつもりでいたほうがいいのかな……)
* Tag : 世界探偵小説全集
2007. 12. 30
『女王館の秘密』 ビクトリア・ホルト
The Secret Woman (1970)
ビクトリア・ホルト / 小尾芙佐 訳 / 角川文庫
『流砂』と並んで、古書では高値がついている本。幸い地元の図書館の書庫にあったので、借りてきて読んでみました。
約550ページという長さを一気に読ませてくれるし、終盤で意外な展開があったりして、なかなかおもしろかったです。でも、途中でシャンテル(伯母の看護をした若い看護婦でアンナの友人)の溌剌として小気味好い日記文が挿入されずに、主人公の辛気臭い一人称語りがずっと続いていたらちょっと辛かったかもなあ……。(ホルト作品の主人公って、見た目は落ち着いているけれど、内心は意志強固で自尊心が高いというタイプがほとんどのような気がします)
個人的には、アンナとレッド・ストレットン船長の恋愛部分が嫌いなパターンだったのがマイナスポイントでした。『ジェイン・エア』 そのままですね、相手の奥さんが南国出身のエキゾチック美人で、若気のあやまちで結婚してしまい今はそれを後悔している、この作品のモニクは狂人ではないけれど精神的に不安定(ノイローゼ状態)だし。二人とも常識人ぶっているから口には出さないものの、内心では「あの妻が早く死んでくれれば、自分たちは一緒になれるのに」と思っている。そんなカップルの恋愛なんて応援できんわ。第一、精神を病んだ妻の死を願うようなヒーローなんてちっとも魅力的じゃないよなあ……。(登場人物を道徳的に裁くつもりはないけれど、こういう恋愛は読んでいて楽しくないというのは動かしようのない事実なので。これと同じ理由で、『続あしながおじさん』 の恋愛部分も好きじゃありません。著者が同じ状況だったと知ってからはなおさら。本家 『ジェイン・エア』 については、ジェインはさっさとロチェスターのもとから離れているし、ロチェスターも非常に大きな代償を払うことになるので、例外。「本家」なのに「例外」というのもおかしな話だけど)
ちなみに、邦題は 『女王館の秘密』 ですが、女王館にはあまり秘密はなく、地元の富豪でアンナが家庭教師として住み込んだクレディットン家にまつわる秘密が話の中心となっています。
時代背景はヴィクトリア朝あたりのようですが、登場人物たちのメンタリティーは、この作品が書かれた1970年前後の人間のものですね。
(2007年9月読了分)
ビクトリア・ホルト / 小尾芙佐 訳 / 角川文庫
その昔、女王も泊まられたという古い館に、アンナは伯母と二人暮らしだった。他に頼る身寄りもなく、彼女の青春は伯母の看病でむなしく過ぎた。伯母が死んだ時、世間に恐ろしい噂がたった――アンナが薬を盛って殺したのだと。検死廷で無罪は証明された。だが、夢遊状態のうちに自分が毒を飲ませたのかもしれない。殺人の恐怖は彼女にとり憑いて離れなかった…。やがてアンナはクレディットン家の城に家庭教師として住みこんだ。初恋の男性レッドとの再会に、彼女の胸は高鳴った。所詮ゆるされぬ恋とは知りつつも。そして舞台は南海の島コラールへと移り、そこにはさらに大きな運命の変転が彼女を待っていた――ゴシック・ロマンの女王ホルトの最新傑作。 (カバー折込より)
『流砂』と並んで、古書では高値がついている本。幸い地元の図書館の書庫にあったので、借りてきて読んでみました。
約550ページという長さを一気に読ませてくれるし、終盤で意外な展開があったりして、なかなかおもしろかったです。でも、途中でシャンテル(伯母の看護をした若い看護婦でアンナの友人)の溌剌として小気味好い日記文が挿入されずに、主人公の辛気臭い一人称語りがずっと続いていたらちょっと辛かったかもなあ……。(ホルト作品の主人公って、見た目は落ち着いているけれど、内心は意志強固で自尊心が高いというタイプがほとんどのような気がします)
個人的には、アンナとレッド・ストレットン船長の恋愛部分が嫌いなパターンだったのがマイナスポイントでした。『ジェイン・エア』 そのままですね、相手の奥さんが南国出身のエキゾチック美人で、若気のあやまちで結婚してしまい今はそれを後悔している、この作品のモニクは狂人ではないけれど精神的に不安定(ノイローゼ状態)だし。二人とも常識人ぶっているから口には出さないものの、内心では「あの妻が早く死んでくれれば、自分たちは一緒になれるのに」と思っている。そんなカップルの恋愛なんて応援できんわ。第一、精神を病んだ妻の死を願うようなヒーローなんてちっとも魅力的じゃないよなあ……。(登場人物を道徳的に裁くつもりはないけれど、こういう恋愛は読んでいて楽しくないというのは動かしようのない事実なので。これと同じ理由で、『続あしながおじさん』 の恋愛部分も好きじゃありません。著者が同じ状況だったと知ってからはなおさら。本家 『ジェイン・エア』 については、ジェインはさっさとロチェスターのもとから離れているし、ロチェスターも非常に大きな代償を払うことになるので、例外。「本家」なのに「例外」というのもおかしな話だけど)
ちなみに、邦題は 『女王館の秘密』 ですが、女王館にはあまり秘密はなく、地元の富豪でアンナが家庭教師として住み込んだクレディットン家にまつわる秘密が話の中心となっています。
時代背景はヴィクトリア朝あたりのようですが、登場人物たちのメンタリティーは、この作品が書かれた1970年前後の人間のものですね。
(2007年9月読了分)
2007. 10. 25
『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』 ウィリアム・ブリテン
The Man Who Read John Dickson Carr and other stories (1965-1978)ウィリアム・ブリテン / 森英俊 訳 / 論創海外ミステリ68
[ Amazon ]
J・D・カーに捧げる密室殺人 傑作パロディ全14編
ホームズ、ポワロ、フェル博士、クイーン、ブラウン神父、ネロ・ウルフ、サム・スペード、メグレ……名探偵、揃い踏み! (帯より)
ホームズ、ポワロ、フェル博士、クイーン、ブラウン神父、ネロ・ウルフ、サム・スペード、メグレ……名探偵、揃い踏み! (帯より)
ミステリ・マニアたちがそれぞれお気に入りの作家・名探偵に関する知識をフル活用して事件を解決する(もしくは犯罪を企てる)、「…を読んだ〜」シリーズ全11篇を含む短篇集。
うーん、楽しいことは楽しいんだけど、一作一作は小粒というか、ちょっと物足りなく思えました。でも、表題作の「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」だけは、文句なくケッサクだ(笑)
「ジョルジュ・シムノンを読んだ男」のメグレ警視が懐かしかったです。高校の図書室に河出文庫版が並んでいて、何作か読みました。あれ、全部で50冊も出てたのか……。
2007. 10. 18
『緑は危険』 クリスチアナ・ブランド
Green for Danger (1943)
クリスチアナ・ブランド / 中村保男 訳 / ハヤカワ・ミステリ文庫 [ Amazon ]
第二次大戦下のヘロンズ・パーク陸軍病院。空襲で怪我を負って運び込まれた老郵便配達夫ヒギンズが、手術のために麻酔をかけられると、急に苦しみ出して息絶えてしまった。医療事故かそれとも殺人か。その調査のためにコックリル警部が派遣されるが、「あれは殺人だ。犯人が誰かも知っている」と言っていた看護婦ベーツが、手術室でメスを突き刺されて殺されているのが見つかり……。
大戦下の軍用病院で、あちこちから集まってきた医師・看護婦(正式な看護婦の他に、志願してきた特志補助看護婦がいる)たちの錯綜する人間関係のもとで起こる連続殺人事件。
最初はちょっと取っつきにくく、なかなか読み進まなかったのですが、終盤の追い上げがすごかった! 大どんでん返し、そして犯人像とその動機・犯行過程の深いドラマ性。伏線の張り方もとても巧みで、「あれがそうだったのか」と唸らされました。トリック自体はシンプルなのですが、実に見事な作品でした。
ああ、やっぱり、クリスチアナ・ブランドは翻訳されているものは全部読まねば〜。
クリスチアナ・ブランド / 中村保男 訳 / ハヤカワ・ミステリ文庫 [ Amazon ]
第二次大戦下のヘロンズ・パーク陸軍病院。空襲で怪我を負って運び込まれた老郵便配達夫ヒギンズが、手術のために麻酔をかけられると、急に苦しみ出して息絶えてしまった。医療事故かそれとも殺人か。その調査のためにコックリル警部が派遣されるが、「あれは殺人だ。犯人が誰かも知っている」と言っていた看護婦ベーツが、手術室でメスを突き刺されて殺されているのが見つかり……。
大戦下の軍用病院で、あちこちから集まってきた医師・看護婦(正式な看護婦の他に、志願してきた特志補助看護婦がいる)たちの錯綜する人間関係のもとで起こる連続殺人事件。
最初はちょっと取っつきにくく、なかなか読み進まなかったのですが、終盤の追い上げがすごかった! 大どんでん返し、そして犯人像とその動機・犯行過程の深いドラマ性。伏線の張り方もとても巧みで、「あれがそうだったのか」と唸らされました。トリック自体はシンプルなのですが、実に見事な作品でした。
ああ、やっぱり、クリスチアナ・ブランドは翻訳されているものは全部読まねば〜。
2007. 09. 07
『黒い天使』 コーネル・ウールリッチ
The Black Angel (1943)コーネル・ウールリッチ / 黒原敏行 訳 / ハヤカワ・ミステリ文庫
[ Amazon ]
夫はいつも彼女を「天使の顔」と呼んでいた。彼女を誰より愛していたのだ。それが突然そう呼ばなくなった。ある日、彼女は夫の服がないことに気づく。夫は別の女のもとへ走ろうとしていた。裏切られた彼女は狂おしい思いを抱いて夫の愛人宅を訪ねる。しかし、愛人はすでに何者かに殺されており、夫に殺害容疑が! 無実を信じる彼女は、真犯人を捜して危険な探偵行に身を投じる……新訳で贈るサスペンスの第一人者の傑作。 (裏表紙より)
ヒロインのアルバータは、殺された女優のミアの部屋で「M」のイニシャル入りのマッチ箱を拾い、それが犯人のものであると確信。ミアの電話帳に書かれていた「M」のイニシャルの5人の男を、身元を隠してひとりずつ順番に訪ねていく。タイムリミットは、有罪が確定した夫カークの死刑執行まで……と、ウールリッチお得意のパターン。
しかし、アルバータが、17歳のときに結婚してから5年、夫以外に世間との接点がないといったような「かわいい奥様」タイプで、『黒衣の花嫁』 の主人公のような魅力がない。で、世間知らずかと思えば、ときどき「いつどこでそんなの身につけたんだ?」と思ってしまうような世慣れた様を発揮して、なんだかチグハグ。
と、まあ、いまいちのれない話でしたが、ほろ苦い結末部分はなかなかよかった。
