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2009. 01. 11

『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』 スザンナ・クラーク



Jonathan Strange & Mr. Norrell (2004)
スザンナ・クラーク / 中村浩美 訳 / ヴィレッジブックス 2008-11
[ Amazon:I巻 ] [ Amazon:II巻 ] [ Amazon:III巻 ]

「ふたりの魔術師、イングランドにあらわれん。ひとりはわれを恐れ、いまひとりはわれを求める」――かつて、英国では魔術が栄え、伝説の大魔術師・大鴉の王(またの名をジョン・アスクグラス)が北イングランドを統治していた。いつしか魔術は失われ、それから300年余り経った19世紀初頭。ヨークシャーの田舎に長年ひきこもって魔術書の研究を続けていた有閑紳士ギルバート・ノレルは、英国魔術を復活させるため、ロンドンにやって来る。ミスター・ノレルは弟子に迎え入れた青年紳士ジョナサン・ストレンジとともに、魔術を駆使し、対ナポレオン戦争でのイギリスの勝利に貢献するが……。

人間を異界に攫っていく気まぐれで残酷な妖精、19世紀の作家たちを思わせる文章など、「英国の伝統」的なものがふんだんに織り込まれた幻想文学。

2004年に原書が刊行されて話題になっていた(ヒューゴー賞・世界幻想文学大賞・ローカス新人賞を受賞、その他さまざまな賞にノミネート)ときから4年、翻訳が出るのをずっと待ち続けていたのだけど、その甲斐はあった。
何と言っても、文章のおもしろさ。オースティンやディケンズ、サッカレーなどの作家を思わせる、ユーモアと皮肉と風刺のきいたキャラクター造形と人物描写(その筆頭が狭量な小男のミスター・ノレル。またジョナサン・ストレンジも矛先を免れてはいない)、ゆるやかな物語展開で、19世紀英文学が好きな私には直球ストライク。これだけでご飯三杯はいける……いや、この場合は厚いハードカバー3冊いける(笑)。他にも、アン・ラドクリフへの言及があったり、バイロンが登場して、諧謔のネタにされていたりもする。(錯乱状態のストレンジをバイロンが嬉々として観察している場面に大ウケ/笑)

薄暗い雰囲気に覆われた「幻想」の部分も、負けてはいない。第一部(I巻)ではノレルが英国魔術を復活させてイギリス中に知らしめ、第ニ部(II巻)ではその弟子となったストレンジが魔法を使って、ナポレオン軍相手の戦場で活躍する。しかし、第三部(III巻)を読み始めると、それらは前座であったことがわかる。ノレルが復活させた魔術はほんの序の口に過ぎず、真の魔術がイギリスによみがえるあたりの描写は圧巻。イギリスのあちらこちらに妖精界につながる道ができるというところが好きだなあ。あと、物語の序盤、ヨークの大聖堂でノレルが人前で初めて魔術を実践してみせる場面が印象的で、ここでぐっと物語に引き込まれた。

それから特筆すべきは、章ごとにつけられた膨大な量の脚注。最初はこれも古典文学のパロディのように思えたけれど、ここで語られる古今の魔術師のエピソード、民間伝承、書物の引用などによって、英国魔術の世界とその歴史が見えてくるという仕掛け。
さまざまな趣向が凝らされた力作で、堪能しました。

* Tag : 歴史/時代もの  

2009.01.11 23:45 | Comments(0) | Trackback(0) | SF&ファンタジー

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