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2009. 01. 10

『黄金の壺―近代のメールヘン―』 ホフマン

Der Goldne Topf (1814)
E.T.A.ホフマン / 中野孝次 訳 / 筑摩世界文学大系26

ドイツ・ロマン派の異才ホフマン(1776-1822)自らが会心の作と称した一篇。緑がかった黄金色の小蛇ゼルペンティーナと、純情な大学生アンゼルムスとの不思議な恋の物語は、読者を夢幻と現実の織りなす妖艶な詩の世界へと誘いこんでゆく。芸術的完成度も高く、作家の思想と表現力のすべてはこの作品に注ぎこまれている。 (岩波文庫版の内容紹介より)

『怪奇小説傑作集(5) ドイツ・ロシア編』 に収録されていた「イグナーツ・デンナー」がおもしろかったので、ホフマンをもっと読んでみようと、まず手に取ったのがこれ。
現実とは違う世界のものに心奪われた男性の話というのは、『ホフマン短篇集』→感想)の大半の短編と同じなんだけど、こちらは不気味な雰囲気は少ないし(登場人物の言動はどことなくユーモラスで、皆なんだか妙にテンション高い)、ハッピーエンド。いや実を言うと、あれって本当にハッピーエンドなのか…?という気がしないでもないけれど、まあとにかく、主人公のアンゼルムス本人は幸せみたいだし。
蛇の乙女セルペンチーナの影が薄くて、そのせいでアンゼルムスとセルペンチーナの恋物語として読むよりも、他の部分に目が行ってしまった。
そのうちのひとつが、アンゼルムスに恋し、セルペンチーナの持つ黄金の壺を狙う老婆に手を貸すことになってしまう少女ヴェローニカ。結局はアンゼルムス本人というよりも「将来の枢密顧問官」という存在を愛しているようなものなんだけど、それでいて恋する乙女のひたむきさみたいなものを兼ね備えていて、アンゼルムスがセルペンチーナに夢中になっていて振り向いてもらえないという中盤の姿は切なくって気の毒に思えたほどだった(最後の変わり身の早さには、ある意味「強い」な、徹底してる、と思った。こっちも、本人幸せそうだからまあいいじゃん、と言うか……)。正ヒロインのセルペンチーナよりも、ヴェローニカのほうが強く印象に残ってるなあ。
そしてもうひとつ印象的だったのが、最後の章で物語の書き手(ホフマン本人?)が登場すること。「わたし」は、王室記録管理官リンドホルスト(実は火の精サラマンデルでセルペンチーナの父)の手助けによって、アンゼルムスがセルペンチーナとともに別世界アトランチスで幸福に暮らしている様子を見せてもらう。アトランチスの素晴らしさに驚嘆すると当時に、これから自分が戻っていく現実の生活のみじめさ・わびしさに絶望する「わたし」。この嘆きは切々と胸に迫ってくる。そんな「わたし」にリンドホルストは言う、「そんなに嘆くものではない! あなただって、あなたの感性の詩的な財産として、あの地に少なくとも小ぎれいな農場くらいはお持ちではないのかな? そもそもアンゼルムスの幸福とてが、詩の中の生活にほかならんのではありませんかな? 詩の中でこそ、自然のもっとも深奥な秘密として、万物の聖なる調和が明らかになるのではありませんかな?」と。この幻想的な物語において、ホフマンがいちばん書きたかったのはここの部分、現実生活に対する嘆きと「詩の中にこそアトランチス(理想郷)があるのではないか」という希望なんじゃないかなあ……やっぱり不思議な作家だ、ホフマンって。

※ 岩波文庫版: 黄金の壺 (岩波文庫)

2009.01.10 00:57 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-19世紀

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