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2008. 12. 14

『二人の女の物語』 アーノルド・ベネット

二人の女の物語 (上) 二人の女の物語 (中) 二人の女の物語 (下)
The Old Wives' Tale (1908)
アーノルド・ベネット / 小山 東一 訳 / 岩波文庫

別名「老妻物語」としても知られる、イギリスの自然主義作家ベネット(1867‐1931)の代表作である。作者は自分の生まれ故郷「五つの町」を舞台に、この町で仕立屋を営むベインズ夫人とその2人の娘コンスタンスとソファイアの2代にわたる女の生涯と栄枯とを、正確な写実と伝統的なユーモアの円熟した筆致で描き出した。 (出版社の紹介文より)

「読書中の本 『二人の女の物語』」 の続き

1860年代から1900年代に渡って、地方の中産階級出身の二人姉妹のそれぞれの人生を描いた作品。

従業員サミュエル・ポビィと結婚して家業の洋服店を継いだ姉のコンスタンスは、男児シリルを産み、やがて夫に先立たれます。平凡だけど優しい夫とは最期まで愛し愛され、店は繁盛、息子は芸術の才能を認められて奨学金を得て、傍から見れば妻として母親としての幸せを謳歌したように思えるコンスタンス。しかし、芸術の勉強のためにロンドンへ行ったシリルは母親のことを省みてはくれず、寂しい思いをしています。

一方、ジェラルド・スケールズと駆け落ちした妹ソファイアは、パリへ行って失望続きの短い結婚生活を送った後でスケールズと別れ、成り行きから下宿屋を営むことに。そして、普仏戦争でのパリ包囲やパリ・コミューンなどに遭遇しながらも、下宿屋をせっせと切り盛りして一大事業に育て上げます。ビジネスウーマンとして成功したと言えるソファイアですが、家族のいない孤独感にいつもさいなまされています。

フランスの自然主義文学に傾倒していた著者ベネットは、この小説を 『女の一生』 のイギリス版にしようと考えて書いたんだそうです。(さらに 『女の一生』 を超えるために女主人公を二人にした)
どこにでもいそうな平凡な女性のいたって普通の生活を(ソファイアは当時の女性としてはあまり平凡ではないかもしれませんが)、そこはかとないユーモアまじりながらも淡々とリアリスティックに描写している作品であるため、読む人によっては退屈に思えるかもしれません。かく言う私も、コンスタンスが育児に専念しているあたり、それにソファイアがあまり好きになれなかったので彼女のパリ時代のあたりは、読むのがちょっと辛かった……。

やがて、シリルの友人からパリでソファイアに会ったことを教えられたコンスタンスは妹に手紙を書き、ソファイアは下宿を高値で売り払い、バーズリーの実家に住み続けている姉のもとに約三十年ぶりに帰ってきて、一緒に暮らし始めます。
しかし、長年別々に暮らしてきて、性格も全く違う姉妹の同居は平穏無事というわけにはいきません。バーズリーの町と薄暗く古臭い実家に固執して旅行に行こうともしないコンスタンスの田舎者根性に、ソファイアは苛立ちを覚え、家から離れて見聞を広めるようにせっつきます。イライラさせられる気持ちはわからなくもないのですが、今の人生に満足している人間に対してそれまでの暮らしを変えさせようとするのは、おせっかいでしかないと思う。だいたい、パリに行って世間をさんざん見てきたソファイアの人生が、視野が狭いとされるコンスタンスの人生に比べて、より豊かなものだったと言えるのだろうか?(フランスではソファイアもイギリスの島国根性丸出しだし)
より性格の強いソファイアに自分の家を仕切られ、無理矢理旅行にも連れ出されたコンスタンスはついに、「私を抑えつけようとしないでちょうだい! 私を変えようとしないで!」と感情を爆発させます。これには、コンスタンスに同情してしまう。
しかし、それでも別れたりせずに、小さな不満を抱えながらも同居を続ける老姉妹。やがて、ソファイアが先立ち、コンスタンスは妹の生涯は不幸なものだったと回想します。「ソファイアの一生は役に立たず、天性の特質がむだになった」、駆け落ちという犯した罪の報いを受けなければならなかったのだと(妹の人生を自分の価値観で見ているわけです。生前のソファイアも自分の価値観を姉に押し付けていたので、おあいこよね)。ソファイアの人生、そしてさらに一年後に病死するコンスタンスの人生をどう思うかは、読者によってそれぞれ違うことでしょう。

この小説は、二人の女性の生涯の物語であるとともに、ヴィクトリア朝における一つの産業都市の移り変わりを描いた作品でもあります。物語の舞台となっている町バーズリー(「五つの町」のひとつ)は、ベインズ姉妹の娘時代は活気があって商売も繁盛していましたが、鉄道が開通するにしたがって隣の大きな町に客を取られ、昔ながらの商店は衰退していきます。さらに、コンスタンスが死を迎えるころには、「五つの町」の他の町とともに合併されようとしてしまうのです。
また、家庭を中心に活動する女性たちが主人公であるために、地方の中産階級の日常生活もなかなか細かく描写されています。しかし、その日常生活に登場するベインズ家のメイドたちは、なんだか気の毒でした。みんな頭の弱い・思慮の足りない人物として描かれているし、ベインズ姉妹からも同じ人間として扱ってもらえず、最初から「女の一生」の舞台にも上がらせてもらえていない、って感じで……。

ところで、アマゾンで「アーノルド・ベネット」で検索すると、時間の使い方やら生き方がどうのこうのという自己啓発本(?)がぞろぞろ出てきます。これ、同姓同名の別人ではなくて、この小説の著者と同一人物みたいです。時間術とか100年近く前の本でも、現代で通用するんですねー。へえ。

2008.12.14 23:19 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-20世紀前半

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