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2008. 10. 23

『ルース』 エリザベス・ギャスケル

Ruth (1853)
エリザベス・ギャスケル / 巽豊彦 訳 / 大阪教育図書 (ギャスケル全集3)
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※関連記事
読書中の本 『ルース』 (2008.10.18)
『ルース』 第8~23章 (2008.10.21)

正直言って、後半はかったるかったです……。もともと、主人公が耐え忍ぶ話って好きじゃないからなあ。ストーリーの起伏もあまりないしね(ルースの話に、ブラドショー家の家庭内のゴタゴタが絡んでくる程度)。
身分の高い男に誘惑されて囲われ者になるも捨てられ、未婚の母となる少女ルースの話ですが、このような行為を「罪」「道を踏み外した」と見なす当時のヴィクトリア朝的道徳観を批判する小説ではありません。ギャスケルも、ルースが相手の男ベリンガムの誘惑に身をゆだねたことを(宗教的観念から)はっきり「罪」だとしています。そのうえで、転落した女性たちに自己救済の機会を与えるべきだ、見捨てるのではなく援助するべきだと訴えているのです。しかし、前回も書いたように、その自己救済後のルースがまるで聖女のようで立派すぎて、どうにも現実離れしているように思えてしまいます。もう少し地に足の着いた更生ぶりでもいいだろうに……と思うのよね。
(ところで、ミスター・ベンスンに長年仕えている女中のサリーの給料が年6ポンド、一方、ブラドショー家の家庭教師をしていたルースの給料が年40ポンド、という記述が出てきます。サリーとルースの身分はもともとあまり違わなかったはずなのに、その差にびっくりです。さらに、サリーがその給料をこつこつと貯金し続け、ベンスン家の経済危機(ルースがブラドショー家から解雇されてベンスン家に生活費を入れられなくなったため)のときに使ってほしいと差し出すという場面があって、何と言うか……)

【以下、結末に触れるので反転します】
ベリンガムとの過去のことが町の人たちにバレ、つまはじき者状態になってしまったルースですが、やがて看護婦の仕事を始め、チフスが猛威を振るったときに病院の隔離病棟の婦長を引き受けて献身的な看護を行ない、町の人々から大変感謝され尊敬されて、社会に再び受け入れられることになります。しかし、ミスター・ダンことベリンガムもチフスに罹患していることを知ると、彼の看護に駆けつけ、逆に自分が感染して、命を落としてしまいます。
男に誘惑されて捨てられた少女が未婚の母となって苦労を重ね、最後には死んでしまう話というと、1791年に出版されたスザンナ・ローソンの 『シャーロット・テンプル』(→感想) を思い出します。ローソンの作品は、若い女性に向けて「シャーロットのような悲惨な目にあわずに済むよう十分に気をつけましょう」と警告する意図で書かれたものなので、シャーロットが失望のなかで死ぬという不幸な結末を迎えるのは必然のことと言えます。しかし、ギャスケルは「転落した女性たちの救済」をテーマとして 『ルース』 を書いているので、道をあやまった見せしめとしてルースを死なせたわけではないはずです。ではなぜ、社会復帰も果たしたルースをギャスケルは死なせたのか。ルースは最期まで他の人のために尽くした(自分を捨てた男のために命を投げ出すという最大の自己犠牲)という形で終わらせたかった……などと考えられますが、訳者あとがきでは、贖罪とか自己犠牲の精神とかは関係なく、ルースの死は若き日の「ただ一回の恋の思い出」に殉じたものであった、という解釈が試みられています。
(あまり関係ないけれど、『赤毛のアン』のアンたちが物語クラブを作ってそれぞれ物語を書くという場面で、疫病患者の集落に看護に行った美しい少女が最後にはその病気にかかって死んでしまうというのが、傍から見ると滑稽だけれど少女たちは素晴らしくロマンチックな悲劇だと大真面目で感動している話の例として出てきたのを、ふと思い出しました……)

* Tag : エリザベス・ギャスケル  『ルース』  

2008.10.23 19:21 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-19世紀

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