2008. 05. 15
『ケニルワースの城』 サー・ウォルター・スコット
Kenilworth (1821)ウォルター・スコット / 朱牟田夏雄 訳 / 集英社 世界文学全集
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(左の表紙写真は原書版のもの)
1575年のイングランド。コーンウォールの老騎士の娘エミー・ロブサートは、父親の元を黙って抜け出し、レスター伯爵ロバート・ダドリーと駆け落ち同然に結婚した。しかし、女王エリザベスの寵をライバルのサセックス伯爵と競っている野心家のレスター伯は、女王の寵愛を失うことを恐れてこの結婚を秘密にし、腹心の臣下リチャード・ヴァーニーに命じてエミーをカムナー屋敷に閉じ込めさせておく。エミーの居場所を突き止めた元婚約者のトレシリアンは、その相手をヴァーニーだと勘違いし、彼の非道を女王に訴え出たことから、レスター伯とヴァーニーは窮地に陥る。その後、女王エリザベスは国内巡業の途中で、レスター伯の居城ケニルワースに滞在。そこへ、ヴァーニーのもとから逃げ出したエミーが夫の庇護を求めてやってくるのだが……。
サー・ウォルター・スコットが、女王エリザベスと寵臣レスター伯爵、謎の転落死を遂げたその妻エミー(エイミー)の話を基に描いた歴史小説。他にもサー・ウォルター・ローリー(見せ場あり)やシェイクスピア(こちらは出番ほとんどなし)など実在の人物が多数登場しますが、史実どおりというわけではなくて、実際にレスター伯とエミーが結婚したのは1550年(エリザベスの即位前)で秘密でもなんでもなく、エミーが亡くなったのは1560年であるなど(エリザベスと結婚したいレスター伯がエミーを邪魔に思って殺したという説があるのは実話)、物語をおもしろくするためにかなりの改変が加えられているそうです。
後半になって主要登場人物がケニルワースに集合するあたりからおもしろくなってくるんですが、前半はなかなか話が進まず。それに、トレシリアンやその配下の人々が、やらないほうがいいようなことばかりやるんだよなー。エミーの名誉を重んじての行動とは言え、逆にエミーをどんどん苦境へと追い込んでいくばかりで、「もう余計なことするからーっ」ってイライラする。「エミーが助けを望まないなら、介入しないほうがいい」とアドバイスする人物もいるのに。エミー本人も、レスター伯爵夫人として宮廷で注目されたいという思いもあって、ちょっと分別が足りない若い女性だし。
そんなヒロイン側と比べると、「悪党」のヴァーニーは策略に長けていて(この人の行動も割合行き当たりばったりだけど)、自己の出世や保身のためには手段を選ばない冷徹さで、こちらのほうが強く印象に残ります。
レスター伯はね……まあどうしようもない人ですね。
サー・ウォルター・スコットって、日本では名前ばかり有名で作品はあまり読まれていないという印象があるんだけど、スコットランドの国民的詩人&作家で、当時の人には非常に愛読されていたんですよね。今回、初めてスコットを読んでみて、当時の人々が熱中したのもわかる気がしました。
エリザベス女王がサセックスとレスターを対峙させる宮廷のシーンとか、エリザベスがケニルワースに入場するシーンとか、本当に華々しくって素晴らしいんだもん。
他にも、ヴァーニーとトレシリアンそれぞれに従う錬金術師(医師)や、エミーに忠実に仕える田舎娘ジャネットなど、エンターテイメント的な人物配置も巧いし。
ちなみに、物語とは直接関係ないけれど、レスター伯ロバート・ダドリーは、ノーサンバランド公爵ジョン・ダドリーの息子。つまり「九日間の女王」レディ・ジェイン・グレイと政略結婚したギルフォードのお兄さんだったんですねー。
※ イングリッシュ・ヘリテージのサイトのケニルワース城のページ
http://www.english-heritage.org.uk/server.php?show=nav.16873
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