2008. 05. 06
『ジュルジュ・サンドセレクション(1) モープラ』
Mauprat (1837)ジョルジュ・サンド / 小倉和子 訳 / 藤原書店
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フランス革命直前のペリー地方。孤児になったベルナール・モープラは、地方貴族ながら没落して山賊に成り下がった祖父に引き取られ、森の中の小さな城ロッシュ=モープラで、荒々しいモープラ一族に囲まれて成長する。十七歳になったある日、城に迷いこんできた親戚の娘エドメに一目惚れしたベルナールは、助けるのと引き換えにエドメに自分のものになると誓わせて、彼女を連れて城から逃げ出し、エドメの父ユベールのもとで暮らし始める。しかし、エドメは野獣のようなベルナールを拒否し、自分と結婚したければ教育を受けるように告げるのだった。
粗野で無教養だった青年が、愛する女性のために、頑張って勉強したりアメリカ独立戦争に参加したりして努力して、立派な人間に成長する物語。『愛の妖精』 がとても気に入ったので、他のサンド作品もと思って読んでみたのですが……。
これはひどい。何がって、エドメの鼻持ちならなさが。助けてもらうのと引き換えに「あなたのものにならないうちは誰のものにもならない」と誓ったエドメですが、粗野なベルナールと結婚するのが我慢なりません。ベルナールに、教育を受けて愛するに値する人間に生まれ変われば結婚してもいいとほのめかす一方で、以前から婚約していたド・ラ・マルシュ氏との婚約を解消しようとはせず、やっと婚約解消した後も、あーだこーだと理由をつけてベルナールとの結婚を先延ばしにしようとします。それでいて、エドメの冷たい態度と生殺し状態に耐えられなくなったベルナールが出て行こうとすると、彼を息子のように思っている父ユベールが悲しむからと言って引き止めるのです。もう一体どうしたいんだよ、あんたはー! もっとも、ベルナールの一人称の視点から語られているのでエドメの真意がはっきり見えないという事情があって、エドメは「愛する男性と対等な立場でいたい(精神的な意味でも)」という理想をひたすら追求しようとしているわけなんですね。とは言っても、七年間も引き伸ばすのは明らかにやりすぎでしょうよ。それに付き合ったベルナールもベルナールだ。普通の人だったら付き合いきれません。
しかし、エドメのベルナールに対するひどい仕打ちはこれで終わりません。エドメが誰かに銃で撃たれて重態になり(そのまま天国行っちゃえばよかったのに……とか思ったことは内緒です)、その事件が物語後半の山場となるのですが、発砲した人物を見ていなかったエドメはとうとうキレたベルナールが自分を殺そうとしたのだと考え、それが原因でベルナールは逮捕されてしまうのです。あー、この女、最後までベルナールが生まれ変わったことを信じていなかったんだ……。これはさすがにベルナールが気の毒すぎる。その後、あれやこれやで大団円になだれこんでも、納得できないよー。
そんな恋愛小説としての側面はさて置き、社会小説としては、革命の気運高まるフランスとアメリカ独立戦争を背景に、自由と平等の精神、そして人は教育によって生まれ変われるのだということを謳った作品です。(エドメを始めとする教師陣からルソーなど当時の最先端の哲学を叩き込まれたベルナールは、フランス革命の思想を体現する人物と言えます。それに理性によって感情を制御することを学んだわけで、フランス革命というのは「理性」を信仰した時代だったっけ)
ここまでフランス革命を希望を込めて描いた作品というのは、久しぶりに読んだわ。著者サンドにとっては、この小説が書かれた当時の王政復古期は抑圧された前時代的な代物で、それと比べて自由思想を実現しようとした革命時のほうが輝かしく見えた、というのが背後にあるようだけど。
▼出版社の『モープラ』解説ページ
http://www.fujiwara-shoten.co.jp/sand/sand01.htm
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