2006. 11. 06
『猫の手』
Cat's Paw (1931)ロジャー・スカーレット / 村上和久 訳 / 新樹社ミステリ
エラリー・クイーンのライヴァルたち 4
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陰気なゴシック様式の大邸宅に暮らす独身の大富豪マーティン・グリーノウは、金銭援助によって5人の甥と姪の人生を支配していた。75歳の誕生日、マーティンは甥たちと彼らの妻や婚約者を屋敷に集め、パーティーの席で甥たちの立場を揺るがす重大発表をする。その直後、マーティンが殺された。休暇から戻ったボストン警察のケイン警部は、友人の弁護士アンダーウッドや捜査を担当したモーラン部長刑事から話を聞いて、事件解決に乗り出す。
「猫の手」なんてかわいらしい題名ですが、スカーレットお得意の「陰気なお屋敷で横暴な老人が殺される<館もの>」。英語の「猫の手(cat's paw)」には「手先として利用される人」という意味があるそうで、作中では二重の意味で使われています。
『エンジェル家の殺人』 (→感想) や 『ローリング邸の殺人』 (→感想) ほどお屋敷自体の不気味さは強調されていないものの、その代わり、マーティンを取り囲む人々の人間関係に重点が置かれています。事件が起こるのは全体の半分を過ぎてからと遅く(そのせいで終盤のケインの真相解明場面は少々あわただしい気がする)、そこまでは登場人物の性格描写・一触即発の人間関係に費やされているのですが、それが事件の真相と密接に結びついており、「ああ、なるほど」と言いたくなりました。劇的なラストシーンも好きだ。
[ ネタバレにつき以下反転 ]
重要な証拠「猫の手の跡のついたカード」が読者に前もって提示されない件は、確かにアンフェアだけど、私はそれほど気にならなかったな。題名が「猫の手」であることで、何らかの形で関わってくるであろうことは予想できたし。
その反面、なぜ犯行時に銃声が聞こえなかったのか、至近距離から撃たれたのか離れたところから撃たれたのかぐらいは傷口を見てわからないのだろうか、という点が気になる。
[ 反転ここまで ]
しかし、この推理小説のいちばんの謎は、ハッチンスンとアミーリアみたいな二人がどうして結婚したか、だよなあ…。
ロジャー・スカーレットは 『エンジェル家の殺人』 を読んだときにはさほど興味をひかれる作家ではなかったんですが、『ローリング邸の殺人』 『猫の手』 と読んできて、ファンになっちゃったよ。欠点も目立つものの、伏線の張り方だとか作品全体の雰囲気が好み。でも、長編全5作のうち残り2作 『ビーコン街の殺人(密室二重殺人事件)』 『白魔』 は古い雑誌に載った抄訳しかないので、読む機会はないかなあ。論創社あたりが新訳で出してくれるといいんだけど。
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ところで、今年に入ってから新樹社の「エラリー・クイーンのライヴァルたち」シリーズを4冊中3冊読んだことに。まったく意図していなかったことなんですが。こうなったら、残る1冊のパトリック・クェンティン 『死を招く航海』 も今年中に読んでしまおうかなー。
* Tag : ロジャー・スカーレット
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