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Reading Diary

2010年09月の記事一覧

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2010. 09. 26

『エアーズ家の没落』 サラ・ウォーターズ



The Little Stranger (2009)
サラ・ウォーターズ / 中村有希 訳 / 創元推理文庫
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ウォリックシャー州でかつて繁栄を誇った領主のエアーズ家。しかし、第二次世界大戦直後の今日では、残った一族もその住居であるハンドレッズ領主館も没落の一途を辿っていた。領主館で働いていたメイドの息子で長じて医師となったファラデーは、ある日、メイドの往診を頼まれて領主館を訪れたのをきっかけに、エアーズ家の人々と親しくなる。貴婦人そのもののエアーズ夫人、娘のキャロライン、戦争で深い傷を負った息子のロデリック――彼らと親交を深めていくファラデー医師。その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、時代に取り残されたエアーズ家の滅亡を後押ししていくのだった……。

原書が刊行されたときから、翻訳されるのをとても楽しみにしていた作品です。内容紹介を読むと、私の好みド真ん中だったんだもの!
実際に読んでみると、期待にたがわず、とても端正で正統派な「ゴースト・ストーリー」であり、素晴らしいゴシック・ロマンでした(ゴシック・ロマンが「主人公がお城を手に入れようとする物語」だとすれば、あの人物は望んだ形ではなかったとはいえ、自分だけの屋敷を手に入れたのだから。ついでに、ファラデー医師ってファーストネームがないのね……)。シャーリイ・ジャクスンの 『たたり(丘の屋敷)』 と本棚に並べておきたくなりました。
嬉しくなっちゃうほどのイギリス小説伝統の道具立て、それでいて、サラ・ウォーターズ独特の捻りが効いている。読み進むうちに、上で挙げた要素以外にもさまざまな側面を見せ、読者に答えを示唆しつつも、それに限定してしまわない余地を与えている。
あの最後の一文はなんとも素晴らしく、深い余韻を残す。

この作品はまた、お屋敷小説でもあります。過去の輝いていた時代のハンドレッズ領主館、そして現在のだんだんと寂れていく館の情景描写がとにかく濃密で、最初のほうなど、そっちに筆が割かれているためにストーリーはほとんど進んでないんじゃないかと思ってしまったくらい(笑)(もっとも、その陰でストーリーは深く静かに進行していたんだけどね……)
まるで自分もファラデー医師と一緒に屋敷の中を見てまわっているかのように感じられて、これは映像化されたものを是非観てみたいなー、と思ったのでした。
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2010.09.26 23:00 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2010. 09. 05

8月に読んだ本まとめ

6月分と7月分がまだですけど、とりあえず8月分。
ツイッターでつぶやいたものにちょっと手を加えてあります。


闇の妖精王 (創元推理文庫)
Ink Exchange (2008)
メリッサ・マール / 東京創元社 (2010/06)

少女一人と男性二人の三角関係というのは、前作 『妖精の女王』 と同じだが、ずっとダークで痛々しい(特に主人公レスリーに対して容赦ない)。物語の雰囲気も、男性陣(ボディガード役のフェアリー、ダークフェアリーの王)も、前作より好み。ラストシーンの彼が切ないねえ……。


機械探偵クリク・ロボット (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
Krik-Robot, Détective-Á-Moteur (1945,1947)
カミ / 早川書房 (2010/06)

ちょっととぼけた感じがたまらない、ユーモア探偵小説の傑作。ダジャレ(この部分は訳者さんの功績)や暗号でメッセージを伝えるクリク・ロボットがお茶目すぎる。著者自身によるイラストも味がある。この作品で唯一残念な点は、本書に収録された中篇2編しか書かれていないことだ!


マネキンさん今晩は―コーネル・ウールリッチ傑作短篇集(4)
コーネル・ウールリッチ / 白亜書房 (2003/03)

私の夏の大定番、ウールリッチ=ウィリアム・アイリッシュ(夜のシーンが多くて、読んでいるとなんとなく涼しい気分になれるから)。ウールリッチの短篇って、若い女性が探偵役になり、その事件に関係した若い刑事と最後に結ばれる、というパターンがわりと多いな。この巻には「裏窓」が収録されているためか、巻末に「ウールリッチ映画化作品リスト」が載っている。(このリストは映画化に限られているけど、ウールリッチ作品の映像化といえば、NHKのドラマで藤木直人が主演だった「喪服のランデヴー」が印象に残っているなあ)



オーバーン城の夏(上)  オーバーン城の夏(下)
Summers at Castle Auburn (2001)
シャロン・シン / 小学館ルルル文庫 (2007/12)

貴族の庶子である少女コリーは、毎年夏の間だけ、異母姉やその婚約者の王子らが住むオーバーン城に滞在していた。上巻では、14歳のコリーがガキっぽいというかアホすぎてイライラ(翻訳のせいで、コリーが「~だもん」という言い訳や反論のセリフ連発なのが、さらにイラッ……)。下巻ではコリーは17歳になっているのだが、子供っぽいところがあるのはそのまま。そして、「はいはい、そうそう、よかったね(棒読み)」と言いたくなる予定調和的な結末。登場人物たちは話を都合よく進めていくためのステレオタイプな人物造形ぽくって、人物描写が物足りなかった。……同じ著者の 『魔法使いとリリス』 は好きだったのになー。


喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 1-1)
Rendezvous in Black (1948)
コーネル・ウールリッチ / 早川書房 (1976/04)

先日ちょっと名前を出したら読みたくなってしまって、再読。やっぱいいなあ、この小説。好きだー。日付変更線のひどい間違いなんてどうでもよくなってしまうくらいの素晴らしさ。


鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)
ダフネ・デュ・モーリア / 東京創元社 (2000/11)

「林檎の木」は、あの夫にしてあの妻あり、って気がする……。
巻末の解説を見ると、東京創元社でデュ・モーリアの作品を刊行していく予定、みたいなことが書かれているけど、結局、この短篇集と 『レイチェル』 だけで終わっちゃったのかなー。『ジャマイカ・イン』 の新訳とか出してほしかった……。


女魔法使いと白鳥のひな (創元推理文庫)
The Sorceress and the Cygnet (1991)
パトリシア・A・マキリップ / 東京創元社 (2010/08)

最初は話が把握しづらかったけど、メグエットが登場したあたりから、かなりおもしろくなってきた。女王家の人々が素敵だったー。数週間後の話だという第二部の翻訳が9月に出るので楽しみ。


オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件
OSCAR WILDE and the Candlelight Murders (2007) 
ジャイルズ・ブランドレス / 国書刊行会 (2010/06)

オスカー・ワイルドが、シャーロック・ホームズのごとく探偵役をつとめる話(ドイルも登場する)。正直、この手の時代ミステリ(実在の有名人物が主役のゆるい探偵小説)とたいした違いは感じられなかった。出してるのが国書刊行会だから仕方ないけど、文庫本向けの内容じゃないのかなあ。

2010.09.05 22:37 | Comments(0) | Trackback(0) | その他の話題・雑記

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