* Caramel Tea *

Reading Diary

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2008. 12. 31

今年読んだ本

毎年恒例、今年の総括。
読了本は全121冊でした。読了本リストはこちら
目標の120冊(10冊/一ヶ月)をなんとかクリアしたぞ(笑)。

今年の目標の「18世紀から20世紀前半あたりの海外文学を重点的に」というのは、(私基準からすれば)そこそこ達成できたんじゃないかな。来年はこれをさらに強化したいと思っているんですが。

海外古典ミステリがあまり読めなかったのは残念でした。これは、今年刊行された本のうち、私が興味を持ったものが少なかったというのもあるかなあ。マーシュやスカーレット(この2冊は去年末に刊行されたもの)、デイリーの邦訳新刊を読めたのは嬉しかったですが。
来年はもっとたくさんミステリも読みたい。

そんななかで、印象に残っている本を列挙。
読んだ順に並んでいます。感想があるものはリンクしてあります。

         

このなかでも、「萌え」という点においてベスト本だったのは、何と言ってもジョルジュ・サンドの『愛の妖精』ですねっ。ファデットとランドリーの牧歌的で微笑ましい胸キュン恋物語に、萌え転がりました。ランドリーの双子の兄シルヴィネの超ブラコン病弱美形ぶりも強烈だった……。

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年越し本は 『ルルージュ事件』 の予定。
それでは、皆様、どうぞよいお年をお迎えください~。
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2008.12.31 15:18 | Comments(0) | Trackback(0) | その他の話題・雑記

2008. 12. 30

まとめて手抜き感想 その2

やっつけ感想後編、その他の海外文学編。

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ゾロ 伝説の始まり(上) ゾロ 伝説の始まり(下)
El Zorro : Comienza La Leyenda (2005)
イサベル・アジェンデ / 中川紀子 訳 / 扶桑社ミステリー 2008-03

18世紀末の南カリフォルニア。後にゾロと呼ばれることになる男の子が産声を上げた。名前はディエゴ・デ・ラ・ベガ。父はスペインの元軍人、母は北米先住民族の戦士だった。ディエゴは父からフェンシングを習い、母方の祖母からは先住民族としての生き方を教え込まれた。ある日、お告げ探しの旅に出た彼は、一匹のキツネに出遭った。そして、そのキツネが彼の魂の師であると祖母から知らされたのだった。スペイン語圏で絶大な人気を誇るI・アジェンデが創り上げた波瀾万丈の歴史冒険物語。 (裏表紙より)

アジェンデによる、『快傑ゾロ』(ジョンストン・マッカレー)の前日譚。
元のゾロの話を知らなくても(私も何年か前に読んだんだけど細部は忘れちゃってたし)、19世紀初頭のカリフォルニアやスペインを舞台にした少年の成長物語&冒険娯楽小説として楽しめます。
原作のドン・ディエゴののらくら軟弱御曹司っぷりが楽しかったので、そういう描写がたくさん出てくるといいなあと期待していたのですが、ほとんど無しで残念。まあ、そういうフリをしなければならない場面が少ないので仕方ないけど。

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ガラスの宮殿 (新潮クレスト・ブックス)
The Glass Palace (2000)
アミタヴ・ゴーシュ / 小沢自然・小野正嗣 訳 / 新潮社
2007-10

ビルマ最後の王都陥落――英軍が侵攻する古都の混乱のなか、幼き孤児と侍女は偶然出会った。そして、彼らの生と交錯するインド人エリート官僚の美しき妻。世界屈指のストーリーテラーが魔法のように紡ぎだす運命の恋のゆくえ、遍在する死の悲劇と20世紀の激動。 (出版社の内容紹介より)

イギリスによるビルマ最後の王朝の崩壊・植民地化から始まり、アウンサンスーチーの登場する現代に至るまで、19世紀末から20世紀末までのビルマ・ミャンマーの歴史を背景に描かれた、四代に渡る家族の物語。ビルマの近現代史なんてほとんど知りませんでしたが、この本を読めばよくわかります。ビルマだけでなく周辺のインドやマレー半島も舞台となっており、インドの独立運動が高まるなかでのイギリス軍のインド人兵士の葛藤に深く考えさせられたり……。それだけでなく、歴史に翻弄されながら懸命に生きる人々の物語としても、感慨深い作品でした。

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リトル・ガールズ
The Little Girls (1964)
エリザベス・ボウエン / 太田良子 訳 / 国書刊行会
2008-08

セント・アガサ女学校に通う、ダイアナ、シーラ、クレア。大戦によって引き裂かれ、女学校という不思議の国を出た3人が、オールド・ガールズとなって再会した、その目的とは――。20世紀を代表する女性作家ボウエンが描きだす、少女たちの無垢と棘。

あいかわらず、訳文が読みづらい(婉曲表現)「ボウエン・コレクション」第二弾。
初老の女性たちが取り留めのないおしゃべりを繰り広げている話、って印象なんだけど(女学校時代のパートよりも現代のパートのほうが多い)、ときどきすごくハッとさせられる描写があるんだよなー。

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.12.30 12:22 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 12. 29

まとめて手抜き感想 その1

年末なので、たまっていた感想文をまとめて片付けてしまおうという試み。
2~3ヵ月前に読んで、記憶が薄れかけているものもあるので、いいかげんなこと書いている部分とかあっても許してください……。
まずはサスペンス小説編。

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ビューティ・キラー(1) 獲物
Heartsick (2007)
チェルシー・ケイン / 高橋恭美子 訳 / ヴィレッジブックス
2008-06

2年前、美貌の女性連続殺人鬼グレッチェンから、想像を絶する苛烈な拷問を受けた刑事アーチー。心も体も癒えぬまま復職した彼を待ち受けていたのは、女子高生を狙う〈放課後の絞殺魔〉だった! 一方、そのアーチーを密着取材することになった若手女性記者のスーザン。アーチーの過去の事件を追ううち、グレッチェンとアーチーの恋愛ともいえる不思議な関係を知ることになる。取材過程でグレッチェンと面会することになったスーザンは、〈放課後の絞殺魔〉解決に意外な手がかりを与えることになる。心に傷を持つアーチーとスーザンの葛藤、グレッチェンの呪縛からふたりは逃れられるのか?! 大型新人の驚異のデビューサスペンス! (出版社の内容紹介より)

2年前の事件の傷が身体的にも精神的にも癒えぬアーチーと、刑務所のなかから彼に力を振るい続けるグレッチェン、この二人の異常な関係がなかなかおもしろい。スーザンがでしゃばっているのが正直言って邪魔に思えるんだけど、実は彼女は現在の事件にはなくてはならぬ存在なんだよな……。(でもまあ、いろいろと傍迷惑な女に思える)
2巻目は来年出る予定みたい。

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バスルームから気合いを込めて (集英社文庫)
Eleven on Top (2005)
ジャネット・イヴァノヴィッチ / 細美遥子 訳 / 集英社
2008-07

ステファニー・プラムシリーズ11作目。バウンティ・ハンターの仕事に嫌気がさして転職活動を始めたステフだったが、そこは彼女のこと、すんなりといくわけがなく……。
今回、モレリがかなり悲惨な目にあっているのだけど、このシリーズにおいてはあまり大したことではないように思えてくる不思議……(笑)。

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女たちの真実 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
What The Dead Know (2007)
ローラ・リップマン / 吉澤康子 訳 / 早川書房
2008-01

それはありふれた自動車事故だった。加害者の中年女がこう言うまでは。「わたしはベサニー姉妹なの」――30年前、15歳の姉と11歳の妹が忽然と消えた。警察の捜査もむなしく姉妹は見つからず、事件は忘れ去られた――この女は主張どおり行方不明の姉妹の一人なのか? だとしたらいま名乗り出た真意は? 不可解な証言の中からやがて哀しくも恐ろしい事実が明らかに……華々しい受賞歴を誇る著者による女たちの秘密の物語。 (裏表紙より)

私立探偵テス・モナハンシリーズが翻訳されている(私も以前何冊か読みました)リップマンのノン・シリーズ作品。
アンソニー賞・マカヴィティ賞・バリー賞と、今年の賞を獲りまくっている印象だったので、興味を持って読んでみたんだけど……。結構長い話(550ページ)に付き合ってきて、姉妹失踪の真相それかよ、と脱力気分に……両親がとても気の毒に思えた。登場人物たちの行動や感情に納得がいかない部分も多いし、女性たちの内面描写はみっちりと書き込まれているのだけど、それも大どんでん返しを狙ったせいで焦点がぼやけてしまったように感じられる。
あと、ソーシャルワーカーのケイはもっとベサニー(と名乗る女)と絡むかと思ったのに、単なる宿・メシ・アッシー要員で終わっちゃうとは……。

2008.12.29 18:05 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 12. 28

『怪奇小説傑作集(5) ドイツ・ロシア編』

H・H・エーヴェルス 他 / 植田敏郎・原卓也 訳 / 創元推理文庫
[ Amazon ]

「恐怖は人間の最も古い、最も強い情感だ」――H・P・ラヴクラフト。かくして人間は、恐怖を手なずけ、さらには恐怖を愉しむために怪奇小説を発明した。本アンソロジー全5巻には、その代表的な名作が網羅されている。このドイツ・ロシア編には、死んだ美しい女の回向のさなか、身の毛もよだつ妖怪に襲われた神学徒を描くゴーゴリの「妖女(ヴィイ)」をはじめ、全9編を収録した。 (裏表紙より)

新版の怪奇小説傑作集全5巻、結局第1巻しか感想書いていませんが、ちょっとずつ読み続けていたんです。でも4巻のフランス編を飛ばしちゃったので、読むのはこれで4冊目です。
ロシア編のほうには、ゴーゴリ、チェーホフといった文豪の名前が並んでいます。
以下、一部の簡単な感想。

「蜘蛛」 H・H・エーヴェルス(ドイツ編)
あるホテルの一室で首を吊る自殺者が相次ぎ、医学生がその部屋に泊まりこんで謎を解こうとするが……。
探偵小説愛読者としては「人を殺す部屋ですね!」と思ってしまうのですが、これは怪奇小説です、密室トリックなんて出てきません。
医学生の日記という形で話が進んでいくのが、ひたひたと怖い。「かゆうま」みたいな。

「イグナーツ・デンナー」 E・T・A・ホフマン(ドイツ編)
これ、とってもおもしろかったー。この本のなかでいちばん好きです。
善良な狩人が不思議な旅人を家に泊めたことから盗賊騒動に巻き込まれ、悪魔的な人物と対峙することになるという、どこかメルヘンがかった冒険物語。
これに似たような傾向のホフマンの作品があるなら、もっと読んでみたいなあ。

「妖女(ヴィイ)」 ニコライ・ゴーゴリ(ロシア編)
まるでチンピラみたいな神学生、妖術に手を染めた令嬢、娘の祈祷を続けさせるために暴力で強要しようとするコサック中尉など、なんだかメチャクチャな登場人物たちにビックリ……。

「黒衣の僧」 アントン・チェーホフ(ロシア編)
健康的な平凡な幸せか、芸術(学問)の高みへと至る狂気じみた精神の高揚か。この話の主人公のように後者を望む人も少なくはないんじゃないでしょうか、特に怪奇小説を愛読する人には。
この二つの対比で、トーマス・マンの 『トニオ・クレエゲル』 を連想しました(こっちは狂気に犯されてはいないけど)。

2008.12.28 23:40 | Comments(0) | Trackback(0) | 怪奇小説&ホラー

2008. 12. 22

『リンゴの丘のベッツィー』 ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー

Understood Betsy (1917)
ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー / 多賀京子 訳 / 徳間書店
2008-11
[ Amazon ]

赤ちゃんのときに両親を亡くしたベッツィーは、町に住む大おばさんのもとで、それはそれは大切に育てられました。ところが、九歳になったある日、大おばさんが病気になり、ベッツィーは、田舎の親戚の農場に行くことに。泣き虫で人に頼ってばかりいたベッツィーは、まったく新しい生活をはじめることになりますが……? アメリカ・バーモント州の美しく豊かな自然を舞台に、厳しくも温かい家族に見守られ、さまざまな経験をとおして成長していく少女の姿を、のびやかに描いた物語。1917年に出版されて以来、世代を越えて読みつがれてきた、アメリカ児童文学の名作古典です。 (カバー折込より)

町の親戚に過保護に育てられ、自分ひとりでは何にもできないようなひ弱な少女ベッツィーが、農場を営む親戚パットニー家に預けられ、一家の温かい視線とバーモント州の自然のもとで、たくましく成長する話。バターやメイプルシロップ作り、村の小さな小学校の様子など、アメリカの昔の少女小説・家庭小説の雰囲気を楽しめます。(でも、ちょっと子供向けかも。訳文が「ですます体」だし)
物語後半で、ベッツィーと年下の友人モリーが、隣人にちょっと離れた町の品評会に連れて行ってもらうも、手違いで会場に取り残され帰れなくなる……という場面があります。汽車で帰るために、その運賃をなんとか稼ごうとするベッツィー。すでに電話が普及している時代なので、誰かに頼んで家に電話させてもらって迎えに来てもらえばいいじゃんと思ってしまうのだけど、自分自身の力で帰ろうとする方が成長物語としてはやはり相応しいのかな。(パットニー家の人々を心配させないためには電話したほうが良かったわけだけど)
ところで、この話に続編があったとすれば、ベッツィーと同級生のラルフはカップルになったのかなあ~。

ちなみに私は、子供は都会よりも自然の多いところで育ったほうがいいだろうと思ってる。
あと、佐竹美保さんの表紙絵と押絵が素敵。


【原書】
Understood Betsy
by Dorothy Canfield Fisher

2008.12.22 18:52 | Comments(0) | Trackback(0) | YA&児童書

2008. 12. 15

読書中の本 『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』

以前このブログで話題にした、スザンナ・クラーク 『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』 を、数日前から読んでいます。
全3冊のうち、一冊目を読み終わったところですが、これ、おもしろい~。
ストーリーのおもしろさっていうのとは違って、文章のおもしろさ。私の好きなタイプのイギリス文学なんです。
多少カリカチュアライズされたキャラクター造形と、ユーモアと軽い皮肉のきいた人物描写で、19世紀英文学の作家たちを連想させます。
今はまだ表面には出てきませんが、背景に見え隠れしている幻想部分もいい感じ。
読む前は「3冊? 長いなー」と思っていたけれど、これからまだ2冊分残っていると考えると嬉しくなる。
ゆっくり楽しみながら残りの2冊を読んでいきたいと思います。


そう言えば、同じヴィレッジ・ブックスから、「テメレア戦記」の二冊目が今月の20日に出るみたいですね。
こちらも、ナポレオン戦争時代のイギリスが舞台の歴史ファンタジー。ローカス賞新人賞を獲っているところも同じ。
ナポレオン軍をファンタジー的手段(『ジョナサン・ストレンジ~』では魔術、「テメレア戦記」ではドラゴン)で撃破しようとする、という同じ素材を、二人の作家がそれぞれどのように捌いているか、読み比べてみるのもいいかも。

2008.12.15 23:41 | Comments(0) | Trackback(0) | SF&ファンタジー

2008. 12. 14

『二人の女の物語』 アーノルド・ベネット

二人の女の物語 (上) 二人の女の物語 (中) 二人の女の物語 (下)
The Old Wives' Tale (1908)
アーノルド・ベネット / 小山 東一 訳 / 岩波文庫

別名「老妻物語」としても知られる、イギリスの自然主義作家ベネット(1867‐1931)の代表作である。作者は自分の生まれ故郷「五つの町」を舞台に、この町で仕立屋を営むベインズ夫人とその2人の娘コンスタンスとソファイアの2代にわたる女の生涯と栄枯とを、正確な写実と伝統的なユーモアの円熟した筆致で描き出した。 (出版社の紹介文より)

「読書中の本 『二人の女の物語』」 の続き

1860年代から1900年代に渡って、地方の中産階級出身の二人姉妹のそれぞれの人生を描いた作品。

従業員サミュエル・ポビィと結婚して家業の洋服店を継いだ姉のコンスタンスは、男児シリルを産み、やがて夫に先立たれます。平凡だけど優しい夫とは最期まで愛し愛され、店は繁盛、息子は芸術の才能を認められて奨学金を得て、傍から見れば妻として母親としての幸せを謳歌したように思えるコンスタンス。しかし、芸術の勉強のためにロンドンへ行ったシリルは母親のことを省みてはくれず、寂しい思いをしています。

一方、ジェラルド・スケールズと駆け落ちした妹ソファイアは、パリへ行って失望続きの短い結婚生活を送った後でスケールズと別れ、成り行きから下宿屋を営むことに。そして、普仏戦争でのパリ包囲やパリ・コミューンなどに遭遇しながらも、下宿屋をせっせと切り盛りして一大事業に育て上げます。ビジネスウーマンとして成功したと言えるソファイアですが、家族のいない孤独感にいつもさいなまされています。

フランスの自然主義文学に傾倒していた著者ベネットは、この小説を 『女の一生』 のイギリス版にしようと考えて書いたんだそうです。(さらに 『女の一生』 を超えるために女主人公を二人にした)
どこにでもいそうな平凡な女性のいたって普通の生活を(ソファイアは当時の女性としてはあまり平凡ではないかもしれませんが)、そこはかとないユーモアまじりながらも淡々とリアリスティックに描写している作品であるため、読む人によっては退屈に思えるかもしれません。かく言う私も、コンスタンスが育児に専念しているあたり、それにソファイアがあまり好きになれなかったので彼女のパリ時代のあたりは、読むのがちょっと辛かった……。

やがて、シリルの友人からパリでソファイアに会ったことを教えられたコンスタンスは妹に手紙を書き、ソファイアは下宿を高値で売り払い、バーズリーの実家に住み続けている姉のもとに約三十年ぶりに帰ってきて、一緒に暮らし始めます。
しかし、長年別々に暮らしてきて、性格も全く違う姉妹の同居は平穏無事というわけにはいきません。バーズリーの町と薄暗く古臭い実家に固執して旅行に行こうともしないコンスタンスの田舎者根性に、ソファイアは苛立ちを覚え、家から離れて見聞を広めるようにせっつきます。イライラさせられる気持ちはわからなくもないのですが、今の人生に満足している人間に対してそれまでの暮らしを変えさせようとするのは、おせっかいでしかないと思う。だいたい、パリに行って世間をさんざん見てきたソファイアの人生が、視野が狭いとされるコンスタンスの人生に比べて、より豊かなものだったと言えるのだろうか?(フランスではソファイアもイギリスの島国根性丸出しだし)
より性格の強いソファイアに自分の家を仕切られ、無理矢理旅行にも連れ出されたコンスタンスはついに、「私を抑えつけようとしないでちょうだい! 私を変えようとしないで!」と感情を爆発させます。これには、コンスタンスに同情してしまう。
しかし、それでも別れたりせずに、小さな不満を抱えながらも同居を続ける老姉妹。やがて、ソファイアが先立ち、コンスタンスは妹の生涯は不幸なものだったと回想します。「ソファイアの一生は役に立たず、天性の特質がむだになった」、駆け落ちという犯した罪の報いを受けなければならなかったのだと(妹の人生を自分の価値観で見ているわけです。生前のソファイアも自分の価値観を姉に押し付けていたので、おあいこよね)。ソファイアの人生、そしてさらに一年後に病死するコンスタンスの人生をどう思うかは、読者によってそれぞれ違うことでしょう。

この小説は、二人の女性の生涯の物語であるとともに、ヴィクトリア朝における一つの産業都市の移り変わりを描いた作品でもあります。物語の舞台となっている町バーズリー(「五つの町」のひとつ)は、ベインズ姉妹の娘時代は活気があって商売も繁盛していましたが、鉄道が開通するにしたがって隣の大きな町に客を取られ、昔ながらの商店は衰退していきます。さらに、コンスタンスが死を迎えるころには、「五つの町」の他の町とともに合併されようとしてしまうのです。
また、家庭を中心に活動する女性たちが主人公であるために、地方の中産階級の日常生活もなかなか細かく描写されています。しかし、その日常生活に登場するベインズ家のメイドたちは、なんだか気の毒でした。みんな頭の弱い・思慮の足りない人物として描かれているし、ベインズ姉妹からも同じ人間として扱ってもらえず、最初から「女の一生」の舞台にも上がらせてもらえていない、って感じで……。

ところで、アマゾンで「アーノルド・ベネット」で検索すると、時間の使い方やら生き方がどうのこうのという自己啓発本(?)がぞろぞろ出てきます。これ、同姓同名の別人ではなくて、この小説の著者と同一人物みたいです。時間術とか100年近く前の本でも、現代で通用するんですねー。へえ。

2008.12.14 23:19 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-20世紀前半

2008. 12. 06

読書中の本 『二人の女の物語』

数日前から、アーノルド・ベネット 『二人の女の物語』 (岩波文庫、全3冊) を読んでいます。1908年の作品。
ヴィクトリア朝中期から後期にかけて、イングランド中西部スタフォドシャーの「五つの町」(ファイヴ・タウンズ:ベネットの故郷で、著作のほとんどはここを舞台にしているらしい)を背景に、若い二人姉妹が年を取って老いていくのを描いた小説……のようです。

バーズリーの町でいちばん繁盛している呉服屋のベインズ家。しかし、主人のジョン・ベインズは病気で寝たきりになっており、ベインズ夫人と男性店員サミュエル・ポヴィが店を切り回していた。
ベインズ家には二人の娘がいた。おとなしくて堅実な姉コンスタンスと、気性が激しく美しい妹ソファイア。ベインズ夫人は二人に今通っている学校を退学させ、将来店を任せられるように家業の見習いをさせようと考える。しかし、店を手伝うのが嫌なソファイアは学校の教師になると言い出し、母親を困らせる。
それから二年後、望み通り教師の職についていたソファイアは、店にやってきた卸商のハンサムな外交員ジェラルド・スケールズに一目惚れする。しかし、ソファイアがスケールズに夢中になって目を放した隙に、一人きりで放って置かれた病気の父親がベッドからずり落ちて死んでしまい、罪の意識にかられたソファイアは教師を辞めて店の手伝いを始める。が、結局、スケールズと駆け落ちしてしまう。
一方、コンスタンスはポヴィ氏と結ばれ、ベインズ夫人は店を娘夫婦に任せて、同じく未亡人である姉と一緒に暮らすために家を出て行く。

ここまでが上巻のあらすじ。
若い女性の平凡な生活を描いているだけあって、日常の生活描写が結構細かく、地方の中産階級の暮らしぶりが窺えます。
訪問客にお茶を出すときに、「メイドがお盆に茶道具を載せて持ってくる→ベインズ夫人が鍵束から鍵を出して茶壷の鍵を外す→紅茶の葉をポットに移してまた茶壷に鍵をかける→お茶を入れるためにメイドが盆を持って下がる」ところだとか。


二人の女の物語 上 (岩波文庫 赤 252-2)
アーノルド・ベネット / 岩波書店

「老妻物語」として知られるイギリスの作家ベネットの代表作。作者の故郷「五つの町」を舞台に、二代にわたる女の生涯を、伝統的なユーモアと円熟した筆致で描く。 (カバー折込より)

2008.12.06 22:33 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-20世紀前半

2008. 12. 02

『神の家の災い』 ポール・ドハティー

Murder Most Holy (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫
2008-11
[ Amazon ]

1379年6月。かつてアセルスタンが修行時代を過ごしたドミニコ会の修道院で、院内総会が行なわれている最中に、修道士たちが次々と殺されるという事件が起きる。修道院長はクランストンとアセルスタンに調査を依頼するが、クランストンは摂政ジョン・オブ・ゴーントの差し金でイタリア人貴族から出題された「緋色の部屋」の謎――その部屋に泊まった者は必ず怪死を遂げ、四人の死者が出ていた――を解かねばならず、アセルスタンは改修中の教会から見つかった身元不明の白骨死体――その遺骨に触れると怪我や病気が治ると評判になって大騒ぎに――と、それぞれ抱える問題に頭を悩ませていた。

アセルスタン(托鉢)修道士シリーズ3作目。
創元のこのシリーズは順調に翻訳が続いていて喜ばしい。(ポケミスの2シリーズはちゃんと続き出してくれるんでしょうか……)

中世英国を舞台にしたシリーズものとしては、安定したおもしろさ。
今回、アセルスタンは、かつて生活していた修道院で事件の調査をすることを通して、それに遺骨騒動を通して、自分の担当する下町の教会や教会区民たちへの愛着を改めて実感することとなります(最後の場面が特に良い)。また、ベネディクタに寄せる想いにも、ある転機が訪れます。
クランストンとアセルスタンの足並みもかなり揃ってきて、名コンビぶりを発揮しつつあるところも、読んでいて楽しい。

しかし、謎解きという面では、かなーり期待はずれでした。トリックがチャチだというのならまだマシなのですが、そうではなく、真相に至るまでの過程が何の捻りもなくて平板であっけなさすぎるうえに、その真相というのが最初から見え透いてしまっているのです。それに、遺骨の謎の件では【(ネタばれ→)治療までしておきながら、ニセの傷跡であることを医師が見抜けない】というのはかなり無理があるように思える。
ドハティーに大掛かりなトリックや大どんでん返しなどを期待してはいけないことはうすうす気づいてはいたけれど、翻訳されている3シリーズのなかでは本シリーズがもっとも本格ミステリ寄りであるだけに、残念。

* Tag : ポール・ドハティ(ドハティー)  歴史/時代もの  

2008.12.02 22:50 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

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読んだ本の感想メモ、気になる本の情報など。翻訳小説が中心です。特に好きなのは、海外古典ミステリと19世紀イギリス文学。
[ 管理人 : Rie ]

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