* Caramel Tea *

Reading Diary

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2009. 10. 19

『リヴァトン館』

The Shifting Fog (2006)
ケイト・モートン / 栗原百代 訳 / ランダムハウス講談社
2009-10
[ Amazon ]

老人介護施設で暮らす98歳のグレイス。ある日、彼女のもとを新進気鋭の映画監督が訪れる。1924年に「リヴァトン館」で起きた悲劇的な事件を映画化するにあたり、ただひとりの生き証人であるグレイスにインタビューしたいと言う。封じ込めていた「リヴァトン館」でのメイドとしての日々がグレイスのなかで鮮やかに甦る。ふたりの美しいお嬢様、苦悩する詩人、厳格な執事、贅を尽くした晩餐会――そして、墓まで持っていこうと決めたあの悲劇の真相も。死を目前にした老女が語り始めた真実とは……。 (カバー折込より)

帯の「ゴシック風サスペンス」という文字に見事釣り上げられて、飛びついてみたけれど……最後まで「どこが“ゴシック風サスペンス”なんだろう?」と首をひねりながら読み終えることになりました。

「悲劇の事件」――ハンナとエメリンの令嬢姉妹が目撃した詩人ロビーの自殺の真相、というミステリーは終盤まであまり前面に出てこず(冒頭からあまり興味を惹きつけられる謎でもないし、その事件の真相と過程も正直言って陳腐だ)、第一次世界大戦によって、個人が、社会が、上流階級が、使用人たちの世界が大きく変わりゆくさまが、メイドであるグレイスの眼を通して語られる、というのが物語の中心となっています。
しかし、その時代背景描写をこなしていくことに筆をとられてしまっている印象があり、ちょっと表面的な話に感じられたというか、物語世界にどっぷり浸るということはできなかった。(私はこの手の物語に、その作者ならではの独特な物語世界とか、時代の流れなんて関係ない閉じた世界を期待してしまっているのかも)

ちなみに、この作品はオーストラリアの作家のデビュー作で、訳者あとがきによると、2作目は東京創元社から刊行予定があるとのこと。
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2009.10.19 23:21 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2009. 05. 05

読了メモ 『魔法の玩具店』

5連休の真っ最中です。
実は連休の直前の4月28日に熱を出して、三日間寝込んでしまいまして……(5月1日には出勤できましたが、でなければ私だけ9連休にしてしまうところだった……)
その風邪がどうも治りきっていなくて、連休中も家でおとなしくしてます……つまり、本を読んで昼寝するという毎日を送ってるってこと。


魔法の玩具店
The Magic Toyshop (1967)
アンジェラ・カーター / 植松みどり 訳 / 河出書房新社
1988-01

現実と夢の間をさ迷う、純白のウェディング・ドレスの少女メラニー。血染めのドレスに暗示される、両親の突然の死。メラニーは、奇怪な玩具店の経営者、繰り人形に異常な執着を示す叔父フィリップの欲望に巻きこまれていく…。性の目覚めとそれに伴う様々な喪失。少女の成長の痛みを鮮烈に捉えた、いまイギリスで最も注目を集めているアンジェラ・カーターの意欲作。 (「BOOK」データベースより)

田園地方で裕福な暮らしをしていた15歳の少女メラニーは、突然の事故で両親を失い、模型作りに夢中の弟やまだ幼い妹とともに、一度も会ったことのない叔父の家で暮らすことになる。ロンドンの下町で叔父が営む玩具店には、結婚の夜に言葉を失くしてしまった叔父の妻と、彼女の年若い二人の弟が同居しており、叔父はその一家を暴君として支配していたのだった。
悪魔的な叔父に虐げられる若い娘、というゴシック小説の枠組みに、少女が女になっていく苦い成長物語を融合させた小説。
メラニーが叔父にグロテスクな白鳥の人形と演じさせられる「白鳥とレダ」のエピソードなど、様々な象徴と暗示に満ち満ちた作品なんだけど、自分にはそれらをうまく読み取れないのが歯がゆい。

ところで、左上の表紙絵は洋書(Penguinのペーパーバック)のものなんだけど、大きな画像で見てみると、オレンジのペンギンのマークまでが……!

2009.05.05 23:40 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2009. 03. 20

読了メモ 『火山に恋して』

ブログの更新は滞っているけれど、私は元気です…
(更新が滞っているのは、最近あまり本が読めていないので、更新ネタがないという理由もある…)


火山に恋して
The Volcano Lover (1992)
スーザン・ソンタグ / 富山太佳夫 訳 / みすず書房
2001-04

これぞ、小説! 読者は、これがあのソンタグ女史の小説かと、ビックリするだろう。読む楽しみを十分に堪能させてくれる、まさに歴史小説の傑作である。舞台はナポリ、ヴェスヴィオ火山を背景に、英国公使にして稀代の蒐集家ハミルトン卿(カヴァリエーレ)、その奥方で絶世の美女エマ、そして救国の〈英雄〉ネルソン提督、この三人が織りなす華麗かつ奇妙な三角関係がじっくりと描かれる。三者三様の心理と行動、並外れた〈愛と死〉のドラマが展開してゆく。 (裏表紙より)

18世紀末、フランス革命やナポレオン戦争時代のナポリの宮廷を主な舞台とした、愛人エマ・ハミルトンとネルソン提督、そしてエマの夫で英国大使のハミルトン卿の話。
不勉強ゆえに知りませんでしたが、著者のスーザン・ソンタグはアメリカの著名な評論家なんだそうで。それを示すように、著者の歴史批評・社会批評・文化批評などがふんだんに織り込まれており、読み応えがあってとても興味深い作品でした。その一方で、史実のなかにいつの間にか「トスカ」のストーリーが織り交ぜられている、といった遊びの部分もあって楽しかった。
ネルソン提督については、「対ナポレオンのイギリスの英雄」というくらいの知識しかなくって、フランス革命時にナポリ宮廷(ブルボン王家)に味方するような形でナポリの共和国派と戦い(のちにナポリ王から「ブロンテ公爵」という爵位をもらった)、「ブルボン王家の処刑人」と揶揄されていただなんて、そんなことをしていたとは「へえ~」って感じでした。

2009.03.20 23:40 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2009. 01. 15

読了メモ 『山猫』

Il Gattopardo (1958)
トマージ・ディ・ランペドゥーサ / 小林惺 訳 / 岩波文庫
2008-03
[ Amazon ]

1860年春、ガリバルディ上陸に動揺するシチリア。祖国統一戦争のさなか改革派の甥と新興階級の娘の結婚に滅びを予感する貴族。ストレーガ賞に輝く長篇、ヴィスコンティ映画の原作を、初めてイタリア語原典から翻訳。 (カバー折込より)

19世紀後半のシチリア島を舞台に、名門貴族サリーナ公爵家の当主ドン・ファブリーツィオの後半生を描いた小説。題名の「山猫」はサリーナ公爵家の紋章。
イタリア統一運動とともに衰退していく貴族社会。ドン・ファブリーツィオは、過去の栄光にしがみつくようなことはせず、むしろイタリア統一に対する国民投票に賛成票を投じるくらいなのだが、積極的に何かをするということはなく、貴族社会の斜陽を諦観の境地でもって眺めている。
著者本人がシチリア貴族の末裔だったそうで、「美」を崇拝しているようなところだとか、特に何もせずに静観しているようなところなど、文中から垣間見られる価値観が、なるほど「貴族」らしいなあと思った(偏見?)。私には、そのあたりが読んでいていまいち居心地が悪かったんだけど。
あと、食事のシーンがやたら活気に満ちているのがなんかシチリアらしい。(これも偏見?)
機会があったら、ヴィスコンティの映画版も観てみたい。

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2009.01.15 23:40 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 12. 30

まとめて手抜き感想 その2

やっつけ感想後編、その他の海外文学編。

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ゾロ 伝説の始まり(上) ゾロ 伝説の始まり(下)
El Zorro : Comienza La Leyenda (2005)
イサベル・アジェンデ / 中川紀子 訳 / 扶桑社ミステリー 2008-03

18世紀末の南カリフォルニア。後にゾロと呼ばれることになる男の子が産声を上げた。名前はディエゴ・デ・ラ・ベガ。父はスペインの元軍人、母は北米先住民族の戦士だった。ディエゴは父からフェンシングを習い、母方の祖母からは先住民族としての生き方を教え込まれた。ある日、お告げ探しの旅に出た彼は、一匹のキツネに出遭った。そして、そのキツネが彼の魂の師であると祖母から知らされたのだった。スペイン語圏で絶大な人気を誇るI・アジェンデが創り上げた波瀾万丈の歴史冒険物語。 (裏表紙より)

アジェンデによる、『快傑ゾロ』(ジョンストン・マッカレー)の前日譚。
元のゾロの話を知らなくても(私も何年か前に読んだんだけど細部は忘れちゃってたし)、19世紀初頭のカリフォルニアやスペインを舞台にした少年の成長物語&冒険娯楽小説として楽しめます。
原作のドン・ディエゴののらくら軟弱御曹司っぷりが楽しかったので、そういう描写がたくさん出てくるといいなあと期待していたのですが、ほとんど無しで残念。まあ、そういうフリをしなければならない場面が少ないので仕方ないけど。

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ガラスの宮殿 (新潮クレスト・ブックス)
The Glass Palace (2000)
アミタヴ・ゴーシュ / 小沢自然・小野正嗣 訳 / 新潮社
2007-10

ビルマ最後の王都陥落――英軍が侵攻する古都の混乱のなか、幼き孤児と侍女は偶然出会った。そして、彼らの生と交錯するインド人エリート官僚の美しき妻。世界屈指のストーリーテラーが魔法のように紡ぎだす運命の恋のゆくえ、遍在する死の悲劇と20世紀の激動。 (出版社の内容紹介より)

イギリスによるビルマ最後の王朝の崩壊・植民地化から始まり、アウンサンスーチーの登場する現代に至るまで、19世紀末から20世紀末までのビルマ・ミャンマーの歴史を背景に描かれた、四代に渡る家族の物語。ビルマの近現代史なんてほとんど知りませんでしたが、この本を読めばよくわかります。ビルマだけでなく周辺のインドやマレー半島も舞台となっており、インドの独立運動が高まるなかでのイギリス軍のインド人兵士の葛藤に深く考えさせられたり……。それだけでなく、歴史に翻弄されながら懸命に生きる人々の物語としても、感慨深い作品でした。

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リトル・ガールズ
The Little Girls (1964)
エリザベス・ボウエン / 太田良子 訳 / 国書刊行会
2008-08

セント・アガサ女学校に通う、ダイアナ、シーラ、クレア。大戦によって引き裂かれ、女学校という不思議の国を出た3人が、オールド・ガールズとなって再会した、その目的とは――。20世紀を代表する女性作家ボウエンが描きだす、少女たちの無垢と棘。

あいかわらず、訳文が読みづらい(婉曲表現)「ボウエン・コレクション」第二弾。
初老の女性たちが取り留めのないおしゃべりを繰り広げている話、って印象なんだけど(女学校時代のパートよりも現代のパートのほうが多い)、ときどきすごくハッとさせられる描写があるんだよなー。

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.12.30 12:22 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 09. 28

『ジャック・マッグズ』 ピーター・ケアリー

Jack Maggs (1997)
ピーター・ケアリー / 宮木陽子 訳 / DHC
2000-11
[ Amazon ]

1837年、流刑囚としてオーストラリアに流されていたジャック・マッグズは、露見すれば死刑となる危険をおかし、密かにロンドンに舞い戻ってきた。ところが到着を知らせてあった屋敷には当主はおろか使用人の姿もない。誤解をさいわい隣家の従僕におさまったマッグズは、「息子」である当主の帰りを待つことにした。マッグズに関心をもった新進作家のオーツは、マッグズの息子の捜索への協力と引き換えに、催眠実験の被験者となるよう取り引きを申し出る。持病の治療のためと説得されしぶしぶ承諾したマッグズだが、オーツは催眠実験でマッグズの正体をつかんでいた。 (カバー折込より)

ディケンズの 『大いなる遺産』 を下敷きにして書かれた作品。ちなみに 『大いなる遺産』 は十年くらい前に読みましたが、ミス・ハヴィシャムの印象だけ強く残っていて、他はあまりよく覚えていない状態。
訳者あとがきでは本作はかなり高く評価されているけれど、私にはどこがどう良いのかさっぱり……。著者は一体、この小説を通して何を語りたかったのか? どうにもピンとこなかった。
副主人公格の作家トゥバイアス・オーツは、若き日のディケンズを元にしているらしい。けれど両者が同じなのは経歴や環境だけで、ディケンズ本人がオーツのような、情けない男であるうえに人でなし(催眠術をかけてマッグズが秘密にしておきたかったことを暴いてしまったり、その様子をマッグズ本人の許可を得ずに他人に見せたり、オーツが蒔いた種が原因で二人も人間が死んでしまったり)だったとは到底思えない。オーツをディケンズとはかけ離れた人物にしたところに何か意味はあったのだろうか?
『大いなる遺産』 をちゃんと読み直してみようかな、という気になったことが唯一の収穫。


【原書】
Jack Maggs
by Peter Carey

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.09.28 23:32 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 08. 28

7月に読んだ本その2

右サイドバーの「読みたい新刊」に、一気に8冊分追加しました。
ここ一週間のうちにドバッと出たよ……。
8月に入ってからまだたった2冊しか読み終えていないし、その遅れを取り戻すためにも頑張って読まなきゃ。
早速お待ちかねのマキリップの新刊に手を出したいところですが、今は短篇集はちょっと辛いので(ひとつ読んだらそこで止まってしまってなかなか進まない)、今週末にはルルル文庫のほうを入手できると思うので、そっちを先に読もうかと。

Yahooのトップページからリンクしてあった記事。
【英「タイムズ」誌が選ぶ最も偉大なミステリ作家ベスト10】
http://xbrand.yahoo.co.jp/magazine/courrierjapon/146/1.html
ベスト50まで載ってる。「聞き慣れない作家も多いが、あなたはどれだけ知ってます?」ってさー、名前だけなら80~90%は知ってるよ。「聞き慣れない」とか言うなよー。
いろいろ文句をつけたいところはあるけど、とにかく日本人の選ぶランキングとはかなり違いますね。

今更だけど7月に読んだ本、その2。

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木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
The Man Who was Thursday : A Nightmare (1908)
G・K・チェスタトン / 南條竹則 訳 / 光文社
2008-06

この世の終わりが来たようなある奇妙な夕焼けの晩、十九世紀ロンドンの一画サフラン・パークに、一人の詩人が姿をあらわした。それは、幾重にも張りめぐらされた陰謀、壮大な冒険活劇の始まりだった。日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社とは。 (裏表紙より)

いやー、これは大変おもしろい本を読んだわ。体の中から裏返って、内側が外側に、外側が内側になってしまう、そんなような感覚がすごい。まさに悪夢的。
スコットランド・ヤードのスパイが無政府主義者たちの秘密結社に潜り込む冒険小説なんだけど、それだけじゃない……と言うより、それはほんの一部なのね。これが刊行されたときチェスタトンはまだブラウン神父シリーズを書く前だったけれど、「探偵とはどうあるべきか」を思索した小説でもある。

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またの名をグレイス(上) またの名をグレイス(下)
Alias Grace (1996)
マーガレット・アトウッド / 佐藤アヤ子 訳 / 岩波書店 2008-03

現代カナダ文学を代表する作家アトウッドの最高傑作(ギラー賞受賞)。一八四三年にカナダで実際に起きた殺人事件に題材を求め、入念な資料調査をもとに仕上げられた作品。若くて類まれな美貌の主人公グレイスは女悪魔・妖婦だったのか、それとも汚名を着せられた時代の犠牲者だったのか。十六歳で事件に関わり約三〇年間服役した、同国犯罪史上最も悪名高いと言われている女性犯グレイス・マークスの物語である。記憶の信頼性とアイデンティティの揺らぎ、人格の分裂、夢、性と暴力をはじめとする人間存在の根源に関わるテーマを、多彩な小説手法を駆使しながら、大きな物語に描き上げた力作。

裕福な独身地主キニアと彼の愛人でもあった女中頭ナンシーが、その屋敷の女中グレイス・マークスと使用人マクダーモットによって惨殺される。マクダーモットは絞首刑に処されるが、当時16歳だったグレイスは終身刑に減刑され、その後三十年を牢獄で過ごした……という、1843年にカナダで実際に起こった殺人事件を題材にした小説。
服役中のグレイスが精神科医に自分のことを話すという形式で話が進んでいくんだけど、これ、グレイスが本当のことを話しているとは限らないんだよな……。
殺人の話ではあるものの、生活描写がかなりみっちり書き込まれていて(グレイスの大きなお屋敷での新人メイドとしての様子、小規模なキニア家を切り回すメイドとしての様子、自分の家庭を主婦として切り回す様子、そしてカナダの女性たちが作り続けるキルトの数々)、そのためか、穏やかな話にも感じられる。19世紀半ばのカナダの女性たちの生活ぶりを描いている、という側面も大きいかも。
(キニアとナンシーはちょっと気の毒だなー。周囲に白い目で見られつつも、内縁の夫婦状態でそれなりにうまくやっていたのに、逆恨みもしくは強盗目的で殺されちゃって……)

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哀れなるものたち (ハヤカワepi ブック・プラネット)
Poor things (1992)
アラスター・グレイ / 高橋和久 訳 / 早川書房
2008-01

作家アラスター・グレイは、グロテスクな装飾の施された一冊の書を手に入れた。『スコットランドの一公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話』と題されたその本は、19世紀後半のとある医師による自伝だった。それは、実に驚くべき物語を伝えていた。著者の親友である醜い天才医師が、身投げした美女の「肉体」を救うべく、現代の医学では及びもつかない神業的手術を成功させたというのだ。しかも、蘇生した美女は世界をめぐる冒険と大胆な性愛の遍歴を経て、著者の妻に収まったという。厖大な資料を検証した後、作家としての直感からグレイはこの書に記されたことすべてが真実であるとの確信に到る。そして自らが編者となってこの「傑作」を翻刻し、事の真相を世に問うことを決意するが……。虚か実か? ポストモダン的技法を駆使したゴシック奇譚。 (裏表紙より)

最初の話が、後から出てくる話によって次々とひっくり返され、さらにその話が……という形式はおもしろかったんだけど、メインの話が「ヴィクトリア朝の人々が“女性”をどう扱ったか」の見本市みたいで、ちょっと食傷気味に。あまり楽しめなかった。

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.08.28 23:50 | Comments(2) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 05. 12

シェイクスピア×2

Amazon.co.jp で詳細を見るお気に召すまま (新潮文庫)
As You Like It
ウィリアム・シェイクスピア / 福田恆存 訳 / 新潮社

弟に領地を奪われた公爵は、アーデンの森に移り住んでいる。公爵の娘ロザリンドは、叔父の娘シーリアと大の仲良しのため邸内にとどまっていたが、ついに追放される。男装したロザリンドは、シーリアとともに森に向ったが、一方、公爵の功臣の遺子オーランドーも、兄の迫害を逃れて森にやって来る……。幾組もの恋人たちが織りなすさまざまな恋を、明るい牧歌的雰囲気の中に描く。 (裏表紙より)

アーデンの森で、男装したロザリンドはお互いに一目惚れしたオーランドーと再会。相手がロザリンドだと気づかずに彼女への想いを訴えるオーランドーに、恋の病を治すためと称し、自分がロザリンドの役をしてあげるから、それをロザリンドだと想像して口説く練習をするように言う場面があります。つまり、他人のふりをして、自分への恋の告白を思う存分楽しむという悪戯です。このシチュエーションは結構萌える。ただ、オーランドーが本気すぎて、傍から見れば「かわいそうに、頭がこわれてしまったんだね!」と思われてしまう光景だけど。


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Amazon.co.jp で詳細を見るテンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)
The Tempest
ウィリアム・シェイクスピア / 松岡和子 訳 / 筑摩書房

弟の姦計により、地位を奪われ、娘ミランダとともに孤島に流されたミラノ大公プロスペロー。歳月を経て秘術を身に付けた彼は、ある日魔法の力で嵐を起こす。彼を陥れた弟とナポリ王、王子を乗せた船は難破し、孤島へ。そこでミランダとナポリ王子は恋に落ち、プロスペローは妖精を操って公国を取り戻す。詩的音楽性と想象力に満ちた作品を、評価高まる新訳で。 (裏表紙より)

シェイクスピア最後の作品と言われており、追放された大公プロスペローが魔術を使って、敵に復讐する話。いや、最後には敵を赦しているので復讐という言葉はきつすぎるか。懲らしめるってところかな。
しかし、私にはこのプロスペローが、どーなのよ、っていう人物なんだよな……。国を追われた経緯からして、趣味の魔術の研究に没頭して(「国よりも大事な書物」とか言っちゃうような大公だ)、弟を信頼して政治を任せっきりにしていたら裏切られたという。それはクーデター起こされても仕方ないんじゃ……。さらに孤島にやってきてからの傍若無人ぶり。空気の妖精エアリエルを脅しつけて酷使し、島の持ち主だった魔女シコラクスの息子キャリバンから島を乗っ取り、野蛮なキャリバンに教育を施してやったのに感化されなかったからといって下働きとして扱き使う。暴君としか思えない~。

福田恆存訳だと邦題は 『あらし』 になってます。
Amazon.co.jp で詳細を見る夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

2008.05.12 23:32 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 04. 27

『エヴァ・トラウト―移りゆく風景』 エリザベス・ボウエン

Amazon.co.jp で詳細を見るEva Trout, or Changing Scenes (1969)
エリザベス・ボウエン / 太田良子 訳 / 国書刊行会
[ Amazon ]

無口で大柄、ジャガーを乗り回す女ヒロイン、エヴァ・トラウト。母親はエヴァを産むとすぐに恋人と駆け落ちして飛行機事故で亡くなり、男の愛人を連れていた父親はのちに自殺し、莫大な遺産をエヴァに残す。巨万の富を手にしたエヴァは、イギリスを飛び出して渡米し、降誕節の夜、不正に子どもを手に入れる。しかしそうして手にした男児は耳が聞こえなかった――両親に見捨てられ、ことばを信じず、一度として泣いたことがないエヴァの愛をめぐるクロニクル。 (出版社の内容紹介より)

国書のボウエン・コレクション第一弾。
これは翻訳があまりよくないんじゃないだろうか……ただでさえわかりにくい話なのに、翻訳でさらにわかりづらくなっている気がする。
エヴァが何故、滞在先のイズー(寄宿女学校在学時の英語教師)の家を飛び出したのか。何故、自分で男の赤ん坊を育てようと思ったのか。他の登場人物が自分の考えを述べているし、読者はある程度推測することができるけれど、エヴァを始めとする登場人物たちの行動の理由が明確に説明されることはない。だけど、確実なことが掴めないその分、エヴァを利用しようとすると同時にエヴァの言動に振り回される食えない人々の、本心を隠したやり取りがスリリングだったりする。
ここがおもしろい!とか言うことはできないけれど、じわじわと滋味深さが染み出してくるような作品でした。ボウエンは短篇集 『あの薔薇を見てよ』 がとても良かったけど、長篇もいいな。『パリの家』 も読んでみたくなった。


【原書】
Eva Trout
Elizabeth Bowen

2008.04.27 12:09 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 02. 23

『リチャード三世を愛した女』 ジーン・プレイディー

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Reluctant Queen: The Story of Anne of York (1990)
ジーン・プレイディー / 友清理士 訳 / バベル・プレス
[ Amazon ]

キングメーカー・ウォリック伯を父にもつ少女アン・ネヴィルはグロスター公リチャードとの間に淡い思いを通わせていた。だが、父と国王の不和をきっかけに、アンも激動の乱世の渦中に投げ込まれる――。同盟関係がめまぐるしく変転するばら戦争の進行を、敵味方に引き裂かされながらもリチャード三世と添い遂げ、イングランド王妃にまでなったアンの視点を通して描き出す。 (帯より)

『プリンセス・オヴ・ウェールズ―英国皇太子妃列伝』 の感想記事で触れた本です。
子供の頃、ウォリック伯の娘アン・ネヴィルと、ウォリック伯の庇護下にあるエドワード四世の弟・リチャードは同じミドラム城で暮らしていました。しかし、ウォリック伯がエドワード四世(ヨーク家)と不仲になり、寝返ってヘンリー六世(ランカスター家)側についたため、アンとリチャードはお互い敵の立場に。さらに、アンはヘンリー六世の王太子エドワードと結婚させられます。それから間もなく、ヨーク家との戦いにおいてウォリック伯と王太子エドワードは敗れて戦死。父と夫を亡くしたアンは翌年、再会したリチャードと結婚し、思い出の地ミドラムで結婚生活を送ります。そして11年後、リチャード三世として国王に即位した夫にともない、アンは王妃になったのでした。
この作品は、そのアンを主人公にして回想記風に書かれた歴史小説ですが、王太子エドワードとは婚約しただけで、法的にも実質的にも結婚していなかったことにされてます。それと、「夫を亡くしたアンがロンドンでメイドとして働いているところを、リチャードが見つけて救い出した」というなんだかすごい伝説があるそうなんですが、その話もうまくアレンジして作中に組み込んであります(そのアレンジがプレイディーのオリジナルかどうかはわからないけど)。

幼なじみ設定は大好物なので、そのあたりのツボっぷりには萌え悶えながら読んでました(笑)。子供時代、4歳年上のリチャードに懐くアン、普段は人を寄せ付けない少年リチャードもアンにだけは心を許し、舞踏会ではいつも二人で踊るところなど堪りません。
しかし、話が進むにつれて顕著になっていく心情描写が大味なのがなあ……。父と婚約者を殺したヨーク家の一員であるリチャードに再会したときのアンの心情が嬉しさ一辺倒で、「エドワードが死んでくれてラッキー☆ これでリチャードと結婚できるわ♪」だなんて、情緒もへったくれもねーよ! その後も登場人物の情感は繊細さ・機微を欠き、また、人物描写もどこか一面的です。あと、「エドワード四世は素晴らしい王様」「クラレンス公いやな奴、信用できない」など、同じことを何度も繰り返し強調して書いてるのがしつこく感じられてくる。
史実自体が興味深いので話はおもしろく読めるんですが、小説としての出来はちょっと微妙なところだなー……という気がします。

作中でも書かれていますが、王妃になってからのアンの生活はあまり明るいものではなかったようです。病弱だった一人息子の死、アン自身の健康状態の悪化、リチャードが離婚して姪のエリザベスと結婚したがっているという嫌な噂。結局2年足らずで、28歳の若さで病死してしまうのですが、その数ヵ月後にリチャードがヘンリー・チューダーとの戦いで戦死することになるのを考えると、それを見ずにすんだのはせめてもの幸運だったのかなあ……。


この作品の著者の「ジーン・プレイディー」というのは、ヴィクトリア・ホルトの別ペンネーム。プレイディー名義で歴史小説を何十冊も書いており、イギリス本国では好評価を受けているようです。



Amazon.co.jp で詳細を見る訳者あとがきで紹介されていた、アン・ネヴィル関連の他作品。

The Sunne in Splendour: A Novel of Richard III
Sharon Kay Penman

シャロン・ケイ・ペンマンによる1982年出版の小説。
「原書で900ページを超える大作だけあって主要登場人物みなが丁寧に扱われており、つとに評価が高い」だそうで、ぜひ読んでみたいぞ。でも、翻訳出なさそうだしなあ、原書は到底無理だし……。
それより、『時の娘』 の内容をすっかり忘れてしまっているので、そっちを再読するか……。

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.02.23 18:54 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

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読んだ本の感想メモ、気になる本の情報など。翻訳小説が中心です。特に好きなのは、海外古典ミステリと19世紀イギリス文学。
[ 管理人 : Rie ]

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