* Category : 「 怪奇小説&ホラー 」の記事
- 2007-08-23 『幽霊』 イーディス・ウォートン
- 2007-02-28 『鼻のある男―イギリス女流作家怪奇小説選』
- 2006-07-10 『怪奇小説傑作集(1) 英米編1』
- 2005-10-17 『悪魔の見張り』
- 2005-06-22 『ヴァンパイア・コレクション』
- 2005-04-20 『たたり』 シャーリイ・ジャクスン
- 2005-02-11 『恐怖の愉しみ (上)』
2007. 08. 23
『幽霊』 イーディス・ウォートン
イーディス・ウォートン / 薗田美和子・山田晴子 訳 / 作品社[ Amazon ]
端麗な描写の7つのゴースト・ストーリーを収録した短篇集。
『怪奇小説傑作集(3)』 にウォートンの「あとになって」が入っていたけれど、それに似た感じの作品がほとんど。読者を恐怖でゾッとさせるよりも、不思議な物事を優美な筆致で淡々と描写していく、というような…。
前半の四つは、冷酷な夫によって古いお城やお屋敷に閉じ込められた妻の悲劇という、ほとんど同じシチュエーションの話。妻の性格はそれぞれ異なっているけれど(「祈りの公爵夫人」の奥方には同情できないな〜)、ウォートンはこの設定が気に入っていたのでしょうか。
いちばん印象的だったのは、後半の「柘榴の種」。夫のもとに時々届く奇妙な手紙に疑念を抱く妻シャーロット。と同時に、夫の死んだ先妻の影を感じ……という話。
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2007. 02. 28
『鼻のある男―イギリス女流作家怪奇小説選』
梅田正彦 訳 / 鳥影社 2006-12[ Amazon ]
ローダ・ブロートン 「鼻のある男」
イーディス・ネズビット 「すみれ色の車」
ルイザ・ボールドウィン 「このホテルには居られない」
D・K・ブロスター 「超能力」
ヘンリエッタ・D・エヴェレット 「赤いブラインド」
アミーリア・エドワーズ 「第三の窯」
キャサリン・ウェルズ 「幽霊」
メイ・シンクレア 「仲介者」
19世紀後半から20世紀前半のイギリス女性作家8人の怪奇小説アンソロジー。
強く印象に残ったのは、なんといっても、メイ・シンクレアの中篇「仲介者」。ネグレクトの話と幽霊譚が巧みに組み合わされた秀作。激しい気性の持ち主であることから、それを疎んだ夫の精神的暴力に苦しめられることとなり、その鬱積した感情を幼い我が子に向けるようになる女性の歪んだ心理を、著者は見事に描き出しています。そんな母親の哀れさ(もちろん幼児虐待はどんな場合でも許されないことですが)、一途に母の愛情を求める子供の哀れさに強く胸を打たれました。これこそ現代にも通じる作品だと思いますが、1932年にこんな話が書かれていたんですねえ…。
他の作品は、怪異現象や幽霊の正体や由来をあまりはっきりと書かない、どちらかといえば曖昧な話が多いかな。
あと、イギリス怪奇小説史における女性作家たち、そして「ゴシック・ロマンス」から19世紀半ばの「怪奇小説」への移り変わり、両者の違いについて述べられている巻末の訳者解説は、参考になります。
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2006. 07. 10
『怪奇小説傑作集(1) 英米編1』
平井呈一 編・訳 / 創元推理文庫[ Amazon ]
ブルワー・リットン 「幽霊屋敷」
ヘンリー・ジェイムズ 「エドマンド・オーム卿」
M・R・ジェイムズ 「ポインター氏の日録」
W・W・ジェイコブズ 「猿の手」
アーサー・マッケン 「パンの大神」
E・F・ベンスン 「いも虫」
アルジャーノン・ブラックウッド 「秘書奇譚」
W・F・ハーヴィー 「炎天」
J・S・レ・ファニュ 「緑茶」
数年前から英米怪奇小説のアンソロジーを好んで読んでいるのですが、実はいちばんの入門書というべき本傑作集をまだ読んでいませんでした。ちょうど今、新版が刊行中なので、これを機に5巻全部読んでみようかと。
1冊目の「英米編1」は各短篇の発表年数が19世紀半ばから20世紀初頭ということで、語り口は良くも悪くも古めかしい。しかし、内容のほうはそんなこともなく、さまざまな種類の怪奇小説が選ばれていてバラエティー豊か。幽霊話が大半かと思っていたのに、超常現象ではなく人間の異常心理を描いたサイコホラーのような話が半分ほどを占めていたのはちょっと驚きでした。
なかでも印象的だったのは、ミステリのような展開を併せ持つ「パンの大神」、不気味な屋敷での恐怖の一夜からバカ話へと変貌する「秘書奇譚」、シンプルな短い話ながらもそれゆえに強烈な「炎天」(今の時期に冷房のきいていない蒸し暑い部屋で読むと臨場感満点)。
ところで、本書の編者でもある平井呈一氏の翻訳は名訳なんですが(恐怖小説史について述べられた巻末の解説もとても参考になる)、一箇所、思わず噴き出してしまったところがありました。「がまんできない。あばよ」「あばよ、オースチン」――それを読んだ途端、私の脳内には柳沢慎吾の顔をした英国紳士ふたりが会話をしている光景が…(笑)
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2005. 10. 17
『悪魔の見張り』
The Sentinel (1974)
ジェフリイ・コンヴィッツ / 高橋豊 訳 / ハヤカワ文庫NV (モダンホラー・セレクション)
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ニューヨーク西89丁目――閑静なブラウンストンのアパートに移り住んだファッションモデルのアリソンは、その日から些細だが奇妙な現象に悩まされる。そのうえアパートには、盲目の老神父、レズビアンのカップル、不気味な猫を飼う老紳士など異様な人物ばかりが住んでいた。アパートの周旋業者の女性のところへ隣人の苦情を言いにいったアリソンは、しかし、逆に彼女から信じがたい事実を知らされるのだった…。
原題は単に「見張り」という意味なんだけど、この邦題はネタバレだよねえ…。
キリスト教的な要素がかなり大きかったのが、ちょっと予想外でした。とは言っても、信心深いとかそういうのではなく、巻末の解説で指摘されているように、ホラーを語るための手段として「キリスト教の聖職者 vs. 悪魔」という図式を利用しているだけなんだけど。なにしろ、この作品が書かれたのは映画「エクソシスト」の大ヒットの直後だというから。でも、今読んでみると、いまいちピンとこない(特に「地獄の軍勢」というものが)のでした…。
ジェフリイ・コンヴィッツ / 高橋豊 訳 / ハヤカワ文庫NV (モダンホラー・セレクション)
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ニューヨーク西89丁目――閑静なブラウンストンのアパートに移り住んだファッションモデルのアリソンは、その日から些細だが奇妙な現象に悩まされる。そのうえアパートには、盲目の老神父、レズビアンのカップル、不気味な猫を飼う老紳士など異様な人物ばかりが住んでいた。アパートの周旋業者の女性のところへ隣人の苦情を言いにいったアリソンは、しかし、逆に彼女から信じがたい事実を知らされるのだった…。
原題は単に「見張り」という意味なんだけど、この邦題はネタバレだよねえ…。
キリスト教的な要素がかなり大きかったのが、ちょっと予想外でした。とは言っても、信心深いとかそういうのではなく、巻末の解説で指摘されているように、ホラーを語るための手段として「キリスト教の聖職者 vs. 悪魔」という図式を利用しているだけなんだけど。なにしろ、この作品が書かれたのは映画「エクソシスト」の大ヒットの直後だというから。でも、今読んでみると、いまいちピンとこない(特に「地獄の軍勢」というものが)のでした…。
2005. 06. 22
『ヴァンパイア・コレクション』
The Vampire Omnibus (1995)ピーター・へイニング 編集 / 角川文庫
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「吸血鬼ヴァーニー」(ジェームズ・マルコム・ライマー「吸血鬼の物語」)などの古典的吸血鬼譚から、スティーヴン・キングやアン・ライスなどの映画化された作品、そしてブラッドベリやスタージョンなどの現代のヴァンパイア・ストーリーまで、全21篇を収録した吸血鬼もののアンソロジー。
私はもともとモダン・ホラーよりも古い怪奇小説のほうが好きなので、このアンソロジーも、時代の新しい作品よりも古典作品のほうが楽しめた。
なかでも特に気に入ったのが、ゴシック・ロマン風の「蒼白の貴婦人」(アレクサンドル・デュマ&ポール・ボカージ)。戦火を逃れてカルパティア山脈にある修道院へ向かう令嬢は、途中で若い男が率いる山賊に襲われる。そこへ現れたもうひとりの若い男に助けられ、山奥にある彼の古城に連れて行かれるが、山賊の首領は彼の異父弟だった。城に滞在することになった令嬢は、貴族的で寡黙な兄・グレゴリスカ、野性的で荒々しい弟・コスタキ、憎しみあう兄弟双方から激しく愛されるようになるが、やがて悲劇が起こり……という話なのだけど、とにかく雰囲気が良くて素敵。
吸血鬼もののアンソロジーでは、他に 『死の姉妹』 (扶桑社ミステリー)というのもおもしろそう。
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2005. 04. 20
『たたり』 シャーリイ・ジャクスン
The Haunting of Hill House (1959)シャーリイ・ジャクスン / 渡辺庸子 訳 / 創元推理文庫
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八十年の歳月を、闇を抱いてひっそりと建ち続ける<丘の屋敷>。心霊学研究者モンタギュー博士は調査のため、そこに協力者を呼び集めた。ポルターガイスト現象の経験者エレーナ、透視能力を持つセオドラ、そして<屋敷>の持ち主の甥ルーク。迷宮のように入り組んだ<屋敷>は、まるで意志を持つかのように四人の眼前に怪異を繰り広げる……。
2005. 02. 11
『恐怖の愉しみ (上)』
Madam Crowl's Ghost and other ghost storiesレ・ファニュ 他 / 平井呈一 編訳 / 創元推理文庫 (1985)
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平井呈一氏が選んだ英米の怪奇小説短篇、全12編が収録されています。
オーソドックスな幽霊譚が大半なのですが、独特な平井訳と相まって、味のある語り口を楽しむことができます。
特に私の印象に残ったのは、メイ・シンクレア「希望荘」、H・R・ウェイクフィールド「防人」、エルクマン=シャトリアン「見えない眼」、ソープ・マックラスキー「慎重な夫婦」、オリヴァー・オニオンズの中篇「手招く美女」。
レ・ファニュの「クロウル奥方の幽霊」は、イギリス北部の方言を日本語の方言を使って訳しているのは、力訳なのかもしれないけど…。いささかやりすぎのような気がしないでもない。内容よりも訳文のインパクトのほうが強く印象に残ってしまっています(笑)
* Tag : 短編集
