* Category : 「 ミステリ&サスペンス 」の記事
- 2008-07-26 6月に読んだ海外ミステリ3冊
- 2008-06-11 『カスに向かって撃て!』 ジャネット・イヴァノヴィッチ
- 2008-06-03 エリザベス・デイリイ
- 2008-06-01 『ある貴婦人の肖像』 ペトラ・エルカー
- 2008-05-10 『紳士たちの遊戯』 ジョアン・ハリス
- 2008-04-30 『教会の悪魔』 P・ドハティ
- 2008-04-05 『東方の黄金』 ロバート・ファン・ヒューリック
- 2008-03-16 『黄色の間』 M・R・ラインハート
- 2008-03-09 『漆黒の鳥』 ジョエル・ローズ
- 2008-03-06 ポール・ドハティ
2008. 07. 26
6月に読んだ海外ミステリ3冊
感想書いていない本が溜まりに溜まっているんだけど、いちいち一作品ずつ感想を書く気にもなれないので、まとめて行きます。
まずは6月に読んだ本、ミステリ編。
***********************************************
ワトスンの選択 (海外ミステリGem Collection 14)
Watson's Choice (1955)
グラディス・ミッチェル / 佐久間野百合 訳 / 長崎出版
枝葉の部分が多い上に、真相は肩透かしなのだけど、それがG・ミッチェル特有のオフビートのせいなのか、それとも単に作品の出来が良くないだけなのか、よくわからない。
でも、ホームズ関連という取っ付きやすさはあるし、ミセス・ブラッドリーも比較的大人しめなので、G・ミッチェルの作品としては読みやすいんじゃないかと思う。
ついでに、今月の論創海外ミステリの新刊はミッチェルの 『タナスグ湖の怪物』。最近、ミッチェルも次々と翻訳されていますね。
***********************************************
論理は右手に
Un Peu plus loin Sur la Droite (1996)
フレッド・ヴァルガス / 藤田真利子 訳 / 創元推理文庫
シリーズ1作目 『死者を起こせ』 が面白かったので、6年ぶりの翻訳となるこの2作目を楽しみにしていたんだけど、どうもイマイチだった。本格ミステリ的にもキャラクター的にも。
でも、訳者あとがきを見ると、3作目も翻訳されるっぽいので、それに期待。できれば、次作はあまり間が空かないうちに翻訳してもらいたいなあ。
***********************************************
ノヴェンバー・ジョーの事件簿 (論創海外ミステリ 71)
November Joe: The Detective of the Woods
ヘスキス・プリチャード / 安岡恵子 訳 / 論創社
ノヴェンバー・ジョーが大自然のなかに残された痕跡を追って犯人に辿りつくというのが基本で、ややワンパターン気味。
ところで、先日、ドロシー・L・セイヤーズの「探偵小説論」(創元推理文庫 『顔のない男』 収録)を読み返していたら、こんな記述があった。
まずは6月に読んだ本、ミステリ編。
***********************************************
ワトスンの選択 (海外ミステリGem Collection 14)Watson's Choice (1955)
グラディス・ミッチェル / 佐久間野百合 訳 / 長崎出版
「シャーロック・ホームズ生誕百周年記念」に銘打たれた仮装パーティー。ユーモアに溢れたこの余興はせまりくる殺人事件の幕開けにすぎなかった。女性探偵ミセス・ブラッドリーの推理が冴えわたるスプーフ・ミステリの代表作。 (帯より)
枝葉の部分が多い上に、真相は肩透かしなのだけど、それがG・ミッチェル特有のオフビートのせいなのか、それとも単に作品の出来が良くないだけなのか、よくわからない。
でも、ホームズ関連という取っ付きやすさはあるし、ミセス・ブラッドリーも比較的大人しめなので、G・ミッチェルの作品としては読みやすいんじゃないかと思う。
ついでに、今月の論創海外ミステリの新刊はミッチェルの 『タナスグ湖の怪物』。最近、ミッチェルも次々と翻訳されていますね。
***********************************************
論理は右手にUn Peu plus loin Sur la Droite (1996)
フレッド・ヴァルガス / 藤田真利子 訳 / 創元推理文庫
パリの街路樹の根もとに落ちていた犬の糞から出た人骨。元内務省調査員の変わり者・ケルヴェレールは、独自の調査を開始する。若い歴史学者マルク=通称聖マルコを助手に、彼はブルターニュの村の犬を探り当てる。そこでは最近老女が海辺で事故死していた。骨は彼女のものなのか?ケルヴェレールが、聖マルコ、聖マタイとともに老女の死の真相に迫る。“三聖人シリーズ”第二弾。 (裏表紙より)
シリーズ1作目 『死者を起こせ』 が面白かったので、6年ぶりの翻訳となるこの2作目を楽しみにしていたんだけど、どうもイマイチだった。本格ミステリ的にもキャラクター的にも。
でも、訳者あとがきを見ると、3作目も翻訳されるっぽいので、それに期待。できれば、次作はあまり間が空かないうちに翻訳してもらいたいなあ。
***********************************************
ノヴェンバー・ジョーの事件簿 (論創海外ミステリ 71)November Joe: The Detective of the Woods
ヘスキス・プリチャード / 安岡恵子 訳 / 論創社
カナダの森林地帯で鹿狩りのガイドをつとめる青年ノヴェンバー・ジョー。森が生んだ申し子と言われるほど狩猟に長けた彼は、地方警察に協力する名探偵でもあった。大自然のなかで起こる九つの事件にジョーが挑む。「カナダの森のシャーロック・ホームズ」の異名をとる名探偵の事件簿。『クイーンの定員』にも選ばれた本書を「ホームズのライヴァルたち」第三弾として刊行する。 (カバー折込より)
ノヴェンバー・ジョーが大自然のなかに残された痕跡を追って犯人に辿りつくというのが基本で、ややワンパターン気味。
ところで、先日、ドロシー・L・セイヤーズの「探偵小説論」(創元推理文庫 『顔のない男』 収録)を読み返していたら、こんな記述があった。
一八二〇年から一八五〇年にかけて、フィルモア・クーパーの小説は大人気を博するようになった。(中略)クーパーは、『開拓者』や『鹿殺し』や『モヒカン族の最後』など一連の作品で、足跡をたどったり、折れた小枝、木の幹に生えた苔、落ち葉の様子を観察したりして、インディアンが獲物を追い詰める手堅い方法を紹介し、欧米の青少年を熱狂させた。(中略)クーパーに追随し、そのまねをするのをよしとしなかった作家たちはもっといい方法を考え、森林地の狩人たちのロマンスを自国の環境に移し変えることにした。一八六〇年代になると、少年時代にフィルモア・クーパーを読んだ世代が、作家や読者として、自分たちの国の荒野で犯罪者の臭跡を追うようになった。 (p330)
ということは、「カナダの森のシャーロック・ホームズ」なんてキャッチフレーズを付けられているけれど、この作品は、ホームズの系譜というよりも、フィルモア・クーパーの子孫なのでは?* Tag : 論創海外ミステリ
2008. 06. 11
『カスに向かって撃て!』 ジャネット・イヴァノヴィッチ
Ten Big Ones (1994)ジャネット・イヴァノヴィッチ / 細美遥子 訳 / 集英社文庫
[ Amazon ]
あたしはステファニー・プラム。裁判と保釈金をぶっちぎる不届き者を捕まえる、バウンティ・ハンターをしている。たまたま強盗の顔を目撃してしまったばかりに、少年ギャング団に命を狙われるハメになったあたしは、謎多き同業者、レンジャーの留守宅に隠れることになって……。危険も謎もイイ男も、何故かこの女を放っておけない、大人気・大爆笑のシリーズが、集英社文庫で登場。 (裏表紙より)
ステファニー・プラムシリーズ10作目。これまで扶桑社文庫で出ていたのが、今作から集英社文庫にお引越し。
初っ端でステフの車が爆発炎上するところから始まり、今回もゲラゲラ笑いながら読めておもしろかったんだけど、ここのところずっと、事件がステフひとりの手に負えず、絶体絶命のピンチのところで誰かに助けてもらうという状況が何作も続いているのが、やっぱり気になるなあ。ステフ自身の手で事件にケリをつけるところが見たいよ。
ところで、解説をニュースキャスターの安藤優子が書いているんだけど、何が言いたいのかよくわからんかった。
7月の文庫新刊情報に
「集英社文庫 バスルームより気合をこめて ジャネット・イヴァノビッチ 細美遙子」
というのがありました。
集英社文庫で訳者が細美さんというところからして、プラムシリーズの11作目かな?
だとすると、この 『カスに〜』 が2月に出たばかりで、かなり早い刊行ペースだよね。(半年に一作ペース?)
[追記: 題名は 『バスルームから気合いを込めて』 になったらしい。それにプラムシリーズの11作目ということで合っていたみたい]
2008. 06. 03
エリザベス・デイリイ
藤原編集室さんのサイトの「注目の新刊」を見て知ったんですけど、長崎出版Gem Collectionの6月刊行分は、エリザベス・デイリー 『殺人への扉』 なんですね〜!
このクラシック・ミステリ翻訳ブームのなか、どこかの出版社がデイリー訳してくれないかなあと思っていたんだけど、やっと叶った(笑)。
ハヤカワのポケミスからは、「エリザベス・デイリイ」として2作翻訳されています。
デビュー作 『予期せぬ夜』 の簡単すぎる感想はこちら。
3作目 『二巻の殺人』 はメモを取っただけで感想書いてないんですけど、ビブリオミステリです。(出来はいまいちだったような……)
『二巻〜』 には、『予期〜』 では登場しなかったヘンリー・ガーマジ(シリーズ探偵)の助手ハロルドが出てきて、彼のガーマジ大好きっぷりがすごかった。いや、「大好き」を通り越して、ガーマジしか見えてなかった。そのせいで客がいることにも気づかずに足を踏んでしまったりするんだから。ガーマジとの間で作った暗号を後生大事にしているという場面もあって(ガーマジ&友人Aとハロルドの二手に分かれて捜査することになるんですが、ハロルドが「自分がガーマジと一緒に行きたい」とゴネるんです。ガーマジが「だったら、秘密の連絡を取るためにAに我々の暗号を教えなきゃいけなくなるけど、それでもいいの?」と諭すと、ハロルドは渋々諦めるといった顛末)、エリザベス・デイリイって腐女子さんだったのか!とか思いました。まあ、そこまで細かく覚えている私もどうよ、って感じなんですが、それだけインパクトが強かったってことで。
他にもハロルドは、着ている服の趣味がすごいだとか、ジャンクフードを一人孤独に食べるのが好きとか、なかなか強烈なキャラクター付けをされていて、まあ結局何が言いたいのかと言いますと、『殺人への扉』 でもハロルドくんは活躍するのでしょうか?
次は、どこかの出版社がマクロイの未訳作品を出してくれるように祈っておこう。
このクラシック・ミステリ翻訳ブームのなか、どこかの出版社がデイリー訳してくれないかなあと思っていたんだけど、やっと叶った(笑)。
ハヤカワのポケミスからは、「エリザベス・デイリイ」として2作翻訳されています。
デビュー作 『予期せぬ夜』 の簡単すぎる感想はこちら。
3作目 『二巻の殺人』 はメモを取っただけで感想書いてないんですけど、ビブリオミステリです。(出来はいまいちだったような……)
『二巻〜』 には、『予期〜』 では登場しなかったヘンリー・ガーマジ(シリーズ探偵)の助手ハロルドが出てきて、彼のガーマジ大好きっぷりがすごかった。いや、「大好き」を通り越して、ガーマジしか見えてなかった。そのせいで客がいることにも気づかずに足を踏んでしまったりするんだから。ガーマジとの間で作った暗号を後生大事にしているという場面もあって(ガーマジ&友人Aとハロルドの二手に分かれて捜査することになるんですが、ハロルドが「自分がガーマジと一緒に行きたい」とゴネるんです。ガーマジが「だったら、秘密の連絡を取るためにAに我々の暗号を教えなきゃいけなくなるけど、それでもいいの?」と諭すと、ハロルドは渋々諦めるといった顛末)、エリザベス・デイリイって腐女子さんだったのか!とか思いました。まあ、そこまで細かく覚えている私もどうよ、って感じなんですが、それだけインパクトが強かったってことで。
他にもハロルドは、着ている服の趣味がすごいだとか、ジャンクフードを一人孤独に食べるのが好きとか、なかなか強烈なキャラクター付けをされていて、まあ結局何が言いたいのかと言いますと、『殺人への扉』 でもハロルドくんは活躍するのでしょうか?
次は、どこかの出版社がマクロイの未訳作品を出してくれるように祈っておこう。
2008. 06. 01
『ある貴婦人の肖像』 ペトラ・エルカー
Das Bild der alten Dame (1999)ペトラ・エルカー / 小津薫 訳 / 扶桑社ミステリー
[ Amazon ]
英仏海峡の風光明媚な島に住む貴婦人のもとから、印象派の絵画が盗まれた。それから33年、突然その絵が彼女のもとへもどってきた――女性記者レオは、気が進まないまま、この奇妙な事件の取材をはじめた。だが、事態は異様な展開を見せる。なんとドイツの富豪が、同じ絵画を所有していたのだ。やがて、背後に国際的な犯罪が姿を見せはじめ、ついに死者が出る! 果敢に危地に飛びこむレオが、命がけでつかんだ驚くべき真相とは? 傑作美術ミステリー。 (裏表紙より)
同名のヘンリー・ジェイムズの小説の映画化作品とはなんの関係もなし。
ドイツ人女性が書いた絵画ミステリーなんですが、物語の半分はイギリスのチャンネル諸島のジャージー島、もう半分はドイツのハンブルクが舞台となっています。
主人公レオにとって、実に都合よく展開されていく話である。彼女が出歩くたびに、事件の手がかりが向こうから寄ってきてくれる。そして、レオが立ち聞きできる状況にいるときに、悪党一味が絶妙のタイミングで密談をしてくれる。しかも、最初から事件のあらましをおさらいする説明口調で。なんて親切なのかしら。さらに、それが元でレオが危機に陥っても、これまたタイミングよく警察が助けに来てくれるのだ。そのパターンが一度ならず二度までも。
他にも、AとBの間には接点がないはず……というのが謎の一部になっていたのに、実はAがBのことをド忘れしていただけでした〜、とかさ何なんだよ、それはー!
老婦人の思い出の印象派の絵画が33年ぶりに何者かから送り返されてきた……という導入部はなかなか良かったのに、主人公も作者もよく考えずに行き当たりばったりで、なんとも脱力感を誘われる作品でした。
ついでに、どーでもいいことなんですが、翻訳で気になったのが一箇所。ジャージー島にやってきたレオが、「レストランでクリーム紅茶を飲もう」と計画を立てる場面があります。これって、多分、「Cream Tea」のことだよね。イギリスでは、クロテッドクリーム付きのスコーンと紅茶のセットのことを「クリームティー」と呼ぶんですよね。
2008. 05. 10
『紳士たちの遊戯』 ジョアン・ハリス
Gentlemen & Players (2005)ジョアン・ハリス / 古賀弥生 訳 / ハヤカワ・ミステリ文庫
伝統あるグラマースクールのセント=オズワルド男子校。この学園に激しい憎悪を抱く人物がいた。新任教師のひとりとなってセント=オズワルド校へやって来たその人物は、15年前の事件の復讐を水面下で開始し、学園を危機へ陥れていく。そして真の敵として、セント=オズワルド校を象徴する人物である勤続33年のラテン語教師ロイ・ストレートリーに戦いを挑むのだった。
学園サスペンスって、どうしてこんなにおもしろいんだろ。閉鎖的な空間、学園外では通用しないが学園内では絶対的なルール。そこだけで完結した世界に、思春期の生徒たちの無邪気な残酷さ、教師も巻き込んだ歪な人間関係がぎゅっと濃縮されているからだろうか。この作品は、そんなセント=オズワルド校という一つの閉じた世界に、外部から侵入して自分の居場所を切り開こうとする主人公、というか犯人の話です。
この犯人、セント=オズワルド校に愛憎入り交じった過剰な執着心を抱くところにはついていけないけれど、終盤になるとだんだん魅力的に感じられてくるのが不思議。
また、教師の目線から書かれた現在進行形の事件の話と並行して、15年前の事件の話が生徒側の目線から書かれているので、複雑な青春ものとしても読めるところも良かった。
【 ネタバレにつき以下反転 】
ところで、これは叙述ミステリですよね……? 犯人の性別をはっきりさせずに書いて、ジュリアンという名前で男子校の生徒として振舞っているのだから、犯人は男だろうと読者に思い込ませておいて、実は女だったんですよー、という。(ここで男子校という設定がさらに活きてくるわけだ。そのうえ、犯人は社会格差のみならず、性別の点でもセント=オズワルド校に拒まれたということになる)
作者が叙述トリックを使っているのなら、なぜ早川はそれをだいなしにするような表紙にしたんだろう?
2008. 04. 30
『教会の悪魔』 P・ドハティ
Satan in St Mary's (1986)ポール・ドハティ / 和爾桃子 訳 / ハヤカワ・ポケットミステリ
[ Amazon ]
13世紀のロンドン。殺人を犯して司直の手が及ばぬ聖メアリ・ル・ボウ教会へと逃げこんだ男ダケットが、密室状態の教会内で首を吊って死んでいるのが発見された。罪の意識に苛まれての自殺かと思われたが、国王エドワード1世は自分に対して叛逆を企む者たちの仕業だと考え、事件の調査を命じる。その密偵役として白羽の矢が立ったのは、王座裁判所書記のヒュー・コーベット。すぐにダケットの死が殺人だと突き止めたのだが……。
ドハティの代表作とも言われる密偵ヒュー・コーベットシリーズ第1作。
コーベットはウェールズ征服時にエドワード1世を庇って戦ったことがあり、国王の覚えもめでたく頭の切れる人物です。しかし、暗い。数年前にペストの流行で妻子を失ってからずっと失望状態で、暗い。そんな主人公の性格と話の展開が相まって、いささかシリアスな印象。もっとも、中盤で元窃盗犯の少年レイナルフが従者となって加わるとちょっと活気が出てくるし、訳者あとがきによるとコーベットは以後の作品では「公私ともに右肩上がりの人生」になるそうですが。
自殺に見せかけた密室状態での殺人という不可能犯罪を扱ってはいるけれど、その真相は正直言ってしょぼい。殺人の謎解きよりも、刺客に狙われつつ国王に対する陰謀を追いかけるというほうが主体になっています。
エドワード1世の時代の史実を物語の背景としているのはもちろんとして、「著者あとがき」によれば、聖メアリ・ル・ボウ教会での殺人も、その経緯や被害者加害者などの関係者の名前にいたるまで実際にあった事件に基づいているんだそうで、それにはビックリ。
ポケミスは、ロジャー・シャロットシリーズが1作目 『白薔薇と鎖』 が2年前に出たきりになってるけれど、こちらのヒュー・コーベットシリーズは訳者あとがきを見ると、2作目以降も翻訳が予定されてるっぽい? 無事に続いてほしいなあ。
* Tag : ポール・ドハティ(ドハティー)
2008. 04. 05
『東方の黄金』 ロバート・ファン・ヒューリック
The Chinese Gold Murders (1959)ロバート・ファン・ヒューリック / 和爾桃子 訳 / ハヤカワ・ポケットミステリ
[ Amazon ]
西暦663年、若い官吏・狄仁傑(ディーレンチェ)が海沿いの僻地の町・平来に向かって唐の都を旅立った。何者かに毒殺された知事の後任として赴くのだ。旅の途中で新たに二人の信頼できる部下を得て任地へと乗りこんだディー判事だったが、そこで彼らを待ち受けていたのは、跋扈する人食い虎、密輸事件や新妻失踪、さらに役所に現れる前知事の幽霊という怪事件の数々だった……。
唐の時代の中国を舞台にしたディー判事シリーズ。刊行順と作中の時系列順が違うようなんですが、これは時系列順で最初の作品です。
このシリーズは初めて読んだんだけど、おもしろかったー。関係があるかと思えば無関係、まったく別の事件かと思えば意外な繋がりがある……といった具合にもつれあった数々の事件の糸を、ディー判事があざやかにときほぐしていく。中国の昔の怪談を思わせる怪奇趣味めいた部分があるところも好み。
読んでいて連想したのが、去年読んだ古龍の「陸小鳳シリーズ」です。意外な真犯人、どんでん返しが連続するスピーディーな展開、人が次々にあっけなく殺されていくところ、料理屋で飲み食いしながら情報交換をするところ、艶事にあっけらかんとしているところ……など、いくつか共通点が。古龍作品は武侠小説だという違いはあるけれど、ファン・ヒューリックは中国の古典の研究をしていたそうだし(本業は日本にも赴任したことがある外交官)、中国の小説の型のひとつと言えばいいのか、源流が同じなのかなあ。
ところで、ファン・ヒューリックとはまったく関係ないけれど。陸小鳳シリーズの4巻以降ってまだ出ていないよなあと思ってAmazonで検索してみたら、こんなの見つけた。
マーベラス・ツインズ(1) 謎の宝の地図 [GAMECITY文庫] : 古龍
アニメ調の表紙にもビックリだけど、ドラマCDまで出てるらしいぞ……。
2008. 03. 16
『黄色の間』 M・R・ラインハート
The Yellow Room (1945)メアリ・ロバーツ・ラインハート / 阿部里美 訳 / ハヤカワ・ポケット・ミステリ
[ Amazon ]
太平洋戦争から一時休暇で戻ってくる兄グレッグの避暑のため、メーン州にある別荘を開けにいったキャロル・スペンサー。しかし迎えてくれるはずの管理人はおらず、さらにリネン収容室で身元不明の若い女性の死体とそれを焼こうとして火をつけた形跡を見つける。その女性は「黄色の間」と呼ばれる部屋で寝泊りしていたらしい。いったい何者でここで何をしていたのか? 戦地で負った怪我の療養のため別荘地に滞在しているデイン少佐とともにキャロルは調査を開始するが……。
えー、何これ。同じラインハートのある作品と話がそっくりじゃないの。
没落しかけた名家の末っ子お嬢さまが別荘で殺人事件に遭遇、兄や姉が不審な行動を取っていたせいで事件に巻き込まれる……という話の発端からして、まず同じ。別荘地の他の住人たちの配置もよく似ているし、その後も事件の真相の一部や終盤の犯人側の展開に至るまでとにかく共通点だらけ。
というわけで、既視感ありまくりだわ、そのせいで先の展開が推測できてしまうからには話が長すぎるわで、あまり楽しめませんでした(あっちよりこっちを先に読んでいたら違っていただろうけど。「こっち→あっち」の順で読んだほうが共通点がわかりにくいかも)。登場人物の誰も彼もが「これは事件には関係ないことだから言う必要はないわ」と(実は事件に関係大アリ)重要な情報を隠そうとするというラインハート作品の欠点も、相変わらず大炸裂してるし……。
2008. 03. 09
『漆黒の鳥』 ジョエル・ローズ
The Blackest Bird: A Novel of History and Murder (2007)ジョエル・ローズ / 松下祥子 訳 / 早川書房
[ Amazon ]
1841年のニューヨーク。煙草屋の看板娘として人気があったメアリ・ロジャーズがむごたらしい死体となってハドソン川に浮いているのが発見され、街中にセンセーションを巻き起こした。治安長官のヘイズ親方が調査に乗り出すが、事件は迷宮入りの様相を呈してくる。一方、作家のエドガー・アラン・ポーはこの事件をモデルに、その謎を解き明かそうとした推理小説 『マリー・ロジェの謎』 を雑誌に発表。ポーがメアリと親しかったことを知ったヘイズ親方は、ポーこそがこの事件の犯人なのではないかと疑い始める……。
エドガー・アラン・ポーの 『マリー・ロジェの謎』 のモデルとなったメアリ・ロジャーズ事件、それに巻き込まれた男たちのドラマを描いた物語。ポーや連続拳銃の発明者サミュエル・コルトなど、実在した人物が多数登場しますが、著者のフィクションである部分も多いようです。
映画やドラマを観ているかのように一場面一場面が短く、視点や場所が次から次へと切り替わるのでブツ切れ感があり、それに話の成り行きを淡々と描写している感じで、どうも話に入り込みづらかったです。また、常にメアリ・ロジャーズ事件の謎が物語の底を流れているわけですが、かなりの部分でチョロチョロ流れになってしまったり、はたまた地下に潜ってしまったり(特にポー本人に焦点が当てられる後半部分)といった感じで、どうにも弱い。
でも、ポーの人生や19世紀半ばのアメリカの出版業やジャーナリズムの様子はよく知らなかったので、ちょっと参考になりました。
2008. 03. 06
ポール・ドハティ
来月のポケミス新刊に、ポール・ドハティが来た〜!(ハヤカワ・オンライン情報)
でも、ずっと待ってたロジャー・シャロットシリーズの続きじゃなくて、密偵ヒュー・コーベットものなのかよ!
でもでも、ドハティの代表作だというヒュー・コーベットシリーズが読めるのもかなり嬉しいな〜
ついでに、『赤き死の訪れ』の読了メモをずっと書きそびれていたので、ここで書いておこっと。
『赤き死の訪れ』
The House of the Red Slayer (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫
アセルスタン修道士シリーズ2作目。
とっても面白かった。前作も悪くなかったけれど、ミステリ部分も物語の盛り上げ方も格段に良くなってるんじゃないかなあ。連続殺人事件のそれぞれのトリックは派手さはないものの、アセルスタンが抱えている教区の墓荒しの問題の真相も含めた合わせ技で結構満足感があるし、「死んだはずの人間が復讐しに舞い戻ってきたのか」という時代背景にマッチした展開も好みでした。
アセルスタンもクランストンも犯人に対して手厳しかったけれど、私は犯人に大いに同情しちゃうなー。
でも、ずっと待ってたロジャー・シャロットシリーズの続きじゃなくて、密偵ヒュー・コーベットものなのかよ!
でもでも、ドハティの代表作だというヒュー・コーベットシリーズが読めるのもかなり嬉しいな〜
ついでに、『赤き死の訪れ』の読了メモをずっと書きそびれていたので、ここで書いておこっと。
『赤き死の訪れ』The House of the Red Slayer (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫
ロンドン塔の城守、ラルフ・ホイットン卿が塔内の居室で殺された。卿は数日前に届いた手紙に、異常なほどおびえていたという。その後も、同様に手紙を受けとった者たちのもとを、死が相次いで訪れる。それぞれ悩みを抱えながらも、姿なき殺人者を追うアセルスタン修道士とクランストン検死官…。クリスマスを控えた極寒のロンドンに展開する、中世謎解きシリーズの傑作第二弾。 (裏表紙より)
アセルスタン修道士シリーズ2作目。
とっても面白かった。前作も悪くなかったけれど、ミステリ部分も物語の盛り上げ方も格段に良くなってるんじゃないかなあ。連続殺人事件のそれぞれのトリックは派手さはないものの、アセルスタンが抱えている教区の墓荒しの問題の真相も含めた合わせ技で結構満足感があるし、「死んだはずの人間が復讐しに舞い戻ってきたのか」という時代背景にマッチした展開も好みでした。
アセルスタンもクランストンも犯人に対して手厳しかったけれど、私は犯人に大いに同情しちゃうなー。
* Tag : ポール・ドハティ(ドハティー)
