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2011. 05. 24

4月に読んだ本まとめ

4月に読んだ本まとめ。もう5月も終わりだよ、なーんて細かいことは気にしない。


バラとゆびわ (岩波少年文庫)
The Rose and the Ring (1855)
サッカレイ / 岩波書店

それぞれ叔父やクーデターによって身分を奪われた王子ギグリオと隣国の王女ロサルバが主人公のおとぎ話。『虚栄の市』 のサッカレーが子供向けに書いた作品。とはいっても、さすがサッカレー先生、登場人物を誉めてるんだか貶しているんだかよくわからない、キツイ一言がところどころに出てきます。ところで、訳者あとがきに「(この話のロサルバ王女のように)ほんとうの幸せは小さいときから、くるしいくらしのなかできたえられなければなりません」とあるのだけど、でも、サッカレーは、貧乏な子供時代のなかで野心を募らせ、そのあげく自滅してしまう人物も、『虚栄の市』の主人公レベッカとして書いているんだよね……。


エリアナンの魔女4 黒き翼の王 (下)
The Pool of Two Moons (1998)
ケイト・フォーサイス / 徳間書店 (2011/04)

怒涛の展開で、とりあえず話がひと段落。とはいっても、まだ片付いてない問題がたくさんあるし、そう言えばあの人たちはどうなった、というわけで、続く次巻。
この巻は、ある人物にイライラしながら読んでいました。イサボーに対する仕打ちもひどいけど、あー、どうして、そう余計なことばかりするの!
そして、「この人、この先、大丈夫なのか……?」と相変わらず心配になるのがラクラン。今後の不安要素が多すぎる(笑)。この巻ではまさしくヒーローの立場のはずなのに、役に立ってるのか立ってないのかよくわからないし、マヤ関連ではダークサイドに堕ちかかってるし。まあ、その代わり、イズールトがナイスフォローしてますが(リーの寝室での、イズールトの無言でのラクラン回収法が見事すぎて噴いたw)。イズールトが前巻の終盤あたりで、ラクランのことを「成長した」と感心していたけれど、うーん、成長しているのかなあ……(笑)
(ところで、ラクランって、もしかしてリチャード3世がモデルになってるんだろうか。背曲がりで、足をひきずって歩き、兄王の子供の代わりに……ってあたりが)
イサボーは相変わらずの貧乏くじっぷりに泣ける。特にラクラン方面。相手にそのおしゃべりっぷりを思いっ切り拒絶されているのに、密かに夢見続け、再会できて、相手は実は王子さまだったと思ったら、双子の姉との間にすでに赤ちゃんまでいるとか……。


事件当夜は雨 (創元推理文庫)
That Night It Rained (1961)
ヒラリー・ウォー / 東京創元社 (2000/05)

土砂降りの雨の夜、果樹園主を訪れたその男は「おまえには50ドルの貸しがある」と言い放つや、銃を発砲した……。フェローズ署長もの。終盤で、「あれはそういうことだったのか!」と思わず膝を打つ箇所があるけれど、それ以外は、地元の人々にコツコツと聞き込みを続けていく、実に地道な警察小説。


螺鈿の四季 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
The Lacquer Screen (1962)
ロバート・ファン・ヒューリック / 早川書房 (2010/01)

ディー判事シリーズの時系列としては二つ目、『東方の黄金』 の一年後。チャオタイだけを連れた都出張の帰途、お忍びで寄った地での話。終盤のどんでん返しっぷりも、怪奇趣味も、他の作品に比べると、あっさり気味に思えた。


スペードの女王・ベールキン物語 (岩波文庫)
プーシキン / 岩波書店

最近、現代作家が19世紀を舞台にして書いた作品について文句ばっかり言っているので、ないものねだりはやめて、おとなしく、19世紀の作家が書いた作品を読むことにしたのですよ。そしたら、『スペードの女王』(1833)が素晴らしいのなんのって。どうしてこんなにおもしろいのか、考えてみてもよくわからないんですが、無駄な言葉を費やすことなく、的確な言葉で場面を描き出しているからこそ、現実と幻想の交錯する世界があざやかに浮かび上がってくるのかな。登場人物たちも印象的だし。
『ベールキン物語』 のなかの一編「吹雪」は、男性側からしてみれば、ある意味ホラーかも。と言うか、そもそもどうしてあんなことしたんだか。
プーシキンは 『大尉の娘』 もおもしろかったので、もう少し他の作品も読んでみよう。


アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)
Soulless (2009)
ゲイル・キャリガー / ハヤカワ文庫FT (2011/04)

吸血鬼や人狼が共存するヴィクトリア朝が舞台。序盤はなかなかユーモラスでおもしろい、と思いながら読んでいたのだけれど、途中からロマンス面が前面に出てきて、「おいおい、事件の話はどこ行った?」状態に……。後半は、事件方面の話に(ほぼ)戻るが(しかし、そんなピンチの場面でイチャついてる場合じゃないっスよ、お二人さん。屋敷に帰ってからやってくれ)、悪役の設定は安直すぎるし、最後に○○を持ち出してくるに至っては白けてしまった。母親&異父妹ふたりのドタバタ家族劇もオースティンを意識しているんだろうけれど、鬱陶しいだけだった。最初からパラノーマル・ロマンスのつもりで読めば肩透かし感はあまりないかもしれないけど、私は続巻はもういいや。(ちなみにこの本、人狼関連の場面の脳内参考資料は、去年の映画「ウルフマン」でした)



忘れられた花園 (上) 忘れられた花園 (下)
The Forgotten Garden (2009)
ケイト・モートン / 東京創元社 (2011/02)

イギリスとオーストラリアの3世代の女性たちを軸に、19世紀末から現代にかけてのさまざまな時間を行き来するところは巧みだとは思うけれど……私、やっぱりこの著者とは相性が合わないようだ。この手の物語を読むときは、いつもならすごくワクワクするのに、この著者の作品の場合は醒めた気分になっていってしまう。『リヴァトン館』 でもそうだったけど、きっと、この著者の書く登場人物たちに興味が持てないから、彼女たちが辿る物語もどうでもよくなってしまうんだろうなあ。バーネットの 『秘密の花園』 を、我田引水みたいな形で使っているのも、好きになれない理由のひとつかも。
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2011.05.24 23:24 | Comments(0) | Trackback(0) | 未分類

2011. 05. 04

英国時代ミステリ リスト

メモのようなものとして、英国時代ミステリをまとめてみました。
「英国時代ミステリ」の定義としましては、
「英米の現代作家が、19世紀以前のイギリスを舞台に書いた、ミステリー/サスペンス小説」
な感じですが、一部拡大したものも入っています。
だいたい時代順に並んでる……はず。
[最終更新日:2014/11/29]


ピーター・トレメイン 『死をもちて赦されん』 『サクソンの司教冠』 『幼き子らよ、我がもとへ (上)・(下)』 『蛇、もっとも禍し (上)・(下)』 『蜘蛛の巣 (上)・(下)』 『翳深き谷 (上)・(下)』 『修道女フィデルマの叡智』 『修道女フィデルマの洞察』 『修道女フィデルマの探求』
  修道女フィデルマシリーズ。7世紀(660年代)のアイルランド。 (創元推理文庫)

ケン・フォレット 『大聖堂』
  12世紀。大聖堂建設。続編もあり。 (SB文庫 全3巻)

エリス・ピーターズ 「修道士カドフェル・シリーズ」
  12世紀。 (光文社文庫)

アリアナ・フランクリン 『エルサレムから来た悪魔 (上)・(下)』 『ロザムンドの死の迷宮』 『アーサー王の墓所の夢』
  1171年~。女医アデリアシリーズ。 (創元推理文庫)

コニー・ウィリス 『ドゥームズデイ・ブック (上)・(下)』
  14世紀のイングランド。疫病。タイムトラベルもの。 (ハヤカワ文庫SF)

ポール・ドハティ 『教会の悪魔』
  密偵ヒュー・コーベットシリーズ。エドワード1世時代。 (ハヤカワ・ポケットミステリ)

ポール・ドハティー 『毒杯の囀り』 『赤き死の訪れ』 『神の家の災い』
  アセルスタン修道士シリーズ。リチャード2世時代。1377年~。 (創元推理文庫)

ポール・ドハティ 『白薔薇と鎖』
  密偵ロジャー・シャロットシリーズ。ヘンリー8世時代。スコットランド国王ジェームズ4世の死の謎。 (ハヤカワ・ポケットミステリ)

C・J・サンソム 『チューダー王朝弁護士シャードレイク』 『黒き炎 (上)・(下)』 『支配者 (上)・(下)』
  16世紀、ヘンリー8世時代。 (集英社文庫)

カレン・ハーパー 『毒の庭』
  即位前のエリザベス一世が探偵役。 (早川書房 ミステリアス・プレス文庫)

フェイ・ケラーマン 『慈悲のこころ (上)・(下)』
  16世紀末。シェイクスピアが探偵役。 (創元推理文庫)

デイヴィッド・リス 『紙の迷宮 (上)・(下)』
  1719年。 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ローレンス・ノーフォーク 『ジョン・ランプリエールの辞書 (上)・(下)』
  18世紀。 (創元推理文庫)

リリアン・デ・ラ・トーレ 『探偵サミュエル・ジョンソン博士』
  18世紀。 (論創海外ミステリ)

ブルース・アレグザンダー 『グッドホープ邸の殺人』 『グラブ街の殺人』
  18世紀後半。盲目の治安判事サー・ジョン・フィールディング。 (ハヤカワ・ポケットミステリ)

イモジェン・ロバートスン 『闇のしもべ―英国式犯罪解剖学 (上)・(下)』 『亡国の薔薇 (上)・(下)』
  1780年~。解剖学者と提督夫人が探偵役。 (創元推理文庫)

エリザベス・レッドファーン 『天球の調べ』
  1795年。フランス革命。 (新潮社)

P・D・ジェイムズ 『高慢と偏見、そして殺人』
  19世紀初頭。ジェイン・オースティンの続編+ミステリ。 (ハヤカワ・ポケットミステリ)

ジョン・ディクスン・カー 『ニューゲイトの花嫁』
  リージェンシー。 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ケイト・ロス 『ベルガード館の殺人』 『フォークランド館の殺人』 『マルヴェッツィ館の殺人 (上)・(下)』
  1810年代。「社交界の伊達男」ジュリアン・ケストレルシリーズ。 (講談社文庫)

チャールズ・パリサー 『五輪の薔薇』
  19世紀初頭。少年の出生の秘密をめぐる物語。 (ハヤカワ文庫NV 全5巻)

ダフネ・デュ・モーリア 『埋もれた青春(ジャマイカ・イン)』
  1820年代のコーンウォール。若い女性が主人公のサスペンス小説。 (三笠書房)

ダフネ・デュ・モーリア 『レイチェル』
  19世紀中頃のコーンウォール。 (創元推理文庫)

クリスチアナ・ブランド 『領主館の花嫁たち』
  1840年~。ガヴァネスと双子姉妹。 (東京創元社)

マーガレット・アトウッド 『またの名をグレイス (上)・(下)』
  19世紀半ばのカナダ。実際にあった事件を基にしており、雇い主を殺害したとされるメイドが主人公。 (岩波書店)

マイケル・コックス 『夜の真義を (上)・(下)』
  19世紀前半~中頃。 (文春文庫)

コニー・ウィリス 『犬は勘定に入れません―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (上)・(下)』
  ヴィクトリア朝。タイムトラベルもの。 (ハヤカワ文庫SF)

サラ・ウォーターズ 『荊の城 (上)・(下)』
  ヴィクトリア朝。掏摸の少女が令嬢の財産を騙し取るため、メイドのふりをして城館に潜り込む。 (創元推理文庫)

ロバート・ゴダード 『闇に浮かぶ絵 (上)・(下)』
  19世紀。(文春文庫)

ウィリアム・J・パーマー 『文豪ディケンズと倒錯の館』
  1851年。ディケンズが探偵役、ウィルキー・コリンズが語り手。 (新潮文庫)

ケイト・サマースケイル 『最初の刑事―ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』
  1860年。『月長石』のモデルとなった事件と、スコットランド・ヤード刑事部創設時についてのノンフィクション。 (早川書房)

ピーター・キング 『辻馬車探偵ネッドの事件簿―ロンドン幽霊列車の謎』
  1869年。辻馬車の御者ネッドが探偵役。 (創元推理文庫)

アランナ・ナイト 『修道院の第二の殺人』 『エジンバラの古い柩』 『蒸気機関車と血染めの外套』
  1870年代。エジンバラが舞台。刑事ファロ・シリーズ。 (創元推理文庫)

ミッシェル・フェイバー 『天使の渇き』
  1870年代。小説を書く娼婦と、香水会社の跡取り息子。 (アーティストハウスパブリッシャーズ)

フィリップ・プルマン 『マハラジャのルビー』 『仮面の大富豪 (上)・(下)』 『井戸の中の虎 (上)・(下)』
  1872年~。「サリー・ロックハートの冒険」シリーズ。 (東京創元社)

サラ・ウォーターズ 『半身』
  1874年。孤独な令嬢と謎めいた霊媒の交流。 (創元推理文庫)

ギリアン・リンスコット 『推定殺人』
  1874年。アフリカ探検。 (現代教養文庫)

ロバータ・ロゴウ 『マーベリー嬢失踪事件―名探偵ドジソン氏』 『降霊会殺人事件―名探偵ドジソン氏』
  1885年~。チャールズ・ドジソン(ルイス・キャロル)が探偵役、ドイルが助手役。 (扶桑社文庫)

ナンシー・スプリンガー 『エノーラ・ホームズの事件簿―消えた公爵家の子息』 『エノーラ・ホームズの事件簿―ふたつの顔を持つ令嬢』 『エノーラ・ホームズの事件簿―ワトスン博士と奇妙な花束』 『エノーラ・ホームズの事件簿―令嬢の結婚』 『エノーラ・ホームズの事件簿―届かなかった暗号』
  1888年~。ホームズの妹が主人公。 (小学館ルルル文庫)

キャロル・ネルソン・ダグラス 『おやすみなさい、ホームズさん (上)・(下)』 『おめざめですか、アイリーン』
  19世紀末。「アイリーン・アドラーの冒険」シリーズ。 (創元推理文庫)

デイヴィッド・ピリー 『患者の眼 コナン・ドイルの事件簿』
  19世紀末。ホームズのモデルと言われるベル博士が探偵役、若き日のコナン・ドイルが助手役。イギリスドラマ「コナン・ドイルの事件簿」の小説化。 (文春文庫)

ベロック・ローンズ 『下宿人』
  切り裂きジャック事件(1888年)がモデル。 (ハヤカワ・ポケットミステリ)

アレックス・グレシアン 『刑事たちの三日間 (上)・(下)』 『刑事たちの四十八時間』
  1889年~。スコットランド・ヤード殺人捜査課。 (創元推理文庫)

レイ・ハリスン 『ジョン・ブルの誇り』 『下院議員の死』 『デスウォッチ』
  1890年~。ロンドン市警察の刑事ふたりの警察小説。 (創元推理文庫)

ジーン・スタッブス 『わが愛しのローラ』
  1890年。 (ハヤカワ・ポケットミステリ)

ジャイルズ・ブランドレス 『オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件』
  19世紀末。オスカー・ワイルドが探偵役。 (国書刊行会)

アン・ペリー 『十六歳の闇』 『娼婦殺し』
  19世紀。ピット警部シリーズ。 (集英社文庫)

アン・ペリー 『見知らぬ顔』 『災いの黒衣』 『護りと裏切り (上)・(下)』
  19世紀。ウィリアム・モンクシリーズ。 (創元推理文庫)

ピーター・ラヴゼイ 『殿下と騎手』 『殿下と七つの死体』 『殿下とパリの美女』
  19世紀末。殿下シリーズ。皇太子バーティ(のちのエドワード7世)が主人公。 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ピーター・ラヴゼイ 「クリッブ部長刑事&サッカレイ巡査シリーズ」
  ヴィクトリア朝。 (早川書房)

ダイアン・セッターフィールド 『13番目の物語 (上)・(下)』
  19世紀末~20世紀初頭。女性作家の回想。 (NHK出版)

ケイト・モートン 『リヴァトン館 (上)・(下)』
  20世紀初頭。メイドの回想。 (武田ランダムハウスジャパン RHブックス・プラス)

リース・ボウエン 『貧乏お嬢さま、メイドになる』 『貧乏お嬢さま、古書店へ行く』 『貧乏お嬢さま、空を舞う』
  1930年代。英国王妃の事件ファイルシリーズ。ヴィクトリア女王の曾孫の公爵令嬢ジョージーが主人公。 (原書房 コージー・ブックス)

コニー・ウィリス 『ブラックアウト』 『オール・クリア (1)・(2)』
  第二次世界大戦時。タイムトラベルもの。 (新ハヤカワ・SF・シリーズ)

サラ・ウォーターズ 『エアーズ家の没落 (上)・(下)』
  第二次世界大戦直後。 (創元推理文庫)

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2011.05.04 15:41 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2010. 03. 06

2月に読んだ本

今月も、2月に読んだ本のまとめでお茶を濁すことにしておきましょう……。
ひとこと感想は、Twitterから引っ張ってきて補足したものです。


黒いチューリップ (創元推理文庫)
La Tulipe noire (1850)
アレクサンドル・デュマ / 東京創元社

17世紀のオランダで、黒いチューリップの栽培に心血をそそぐ青年が政治のゴタゴタに巻き込まれ、投獄されてしまう話。語り口はさすがにうまいが、ストーリーはあまりおもしろくなかった。何より主人公がチューリップ馬鹿すぎて、処刑でもなんでもされて、熱愛するチューリップの肥やしにでもなってしまえ!と思ってしまう。
そういえば、かなーり前にアラン・ドロン主演の「黒いチューリップ」という映画を観たことがあるが、こちらはフランス革命直前の覆面の怪盗(義賊)の話で、デュマの小説とはまったく関係ない。今となってはうろ覚えだけど、終盤あたりの展開に「それでいいのか?」と唖然とした覚えがあります。


抱擁
辻原登 / 新潮社 2009-12

二・二六事件の直後、前田侯爵家の豪奢な洋館に、幼いお嬢様の小間使いとして奉公に上がった18歳の「わたし」が、幽霊にまつわる不思議な体験を語る。初めて読む作家さんだけど、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を意識して書かれた作品だと聞いて、興味を持って読んでみた。話の進め方はほぼ同じなのだけど、終盤あたりになると、ガラリと温度が違ってくる。個人的には『ねじの回転』の結末の冷たさが印象的だったので、そういう方向へ行ってしまったのはちょっと残念だった。


鉛を呑まされた男 ニコラ警視の事件2 (ランダムハウス講談社文庫)
L'homme au ventre de plomb (2000)
ジャン=フランソワ・パロ著 / ランダムハウス講談社 2009-08

ミステリー部分は正直言ってあまりおもしろいと思えないのだが、ルイ15世の時代のパリの風俗描写が楽しくて読んでいるシリーズの2作目。


目は嘘をつく (ミステリアス・プレス文庫)
Trick of the Eye (1992)
ジェイン・スタントン・ヒッチコック / 早川書房 1994-06

騙し絵装飾家の女主人公は、美術品収集家として名高い大富豪の老婦人から、豪邸の舞踏室の改装を頼まれる。その舞踏室で社交界デビューしたという老婦人の一人娘は、15年前の夜、屋敷内で何者かによって殺されていた……。ゴシック・サスペンスのキモはしっかりと押さえながらも、どこかズレたまま話が進んでいき、終盤あたりは思わず笑ってしまった。何気なく手にとってみた本だけど、いい拾い物したって感じで、おもしろかった。


ブレイスブリッジ邸 (岩波文庫)
Bracebridge Hall (1822, 1877)
ワシントン・アーヴィング / 岩波文庫 2009-11

19世紀初期あたりのイギリスの田園地方。地主の屋敷・ブレイスブリッジ邸での結婚式に招かれた語り手が、地主の家族や周囲の人々、招待客、屋敷での暮らしや出来事、それに近隣の村の人々の様子を描く。挿絵が随所にあるので、情景がわかりやすかった。


グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)
オノレ・ド・バルザック / 光文社 2009-09

短篇集。人妻と年下の男の恋愛が軸となっている話ばかりで、そういうのが苦手だから、19世紀フランス文学は読まなくなっちゃったんだよな……。そんな私には表題作がいちばん理解しやすい、というのは、(話の内容を考えると)なんだかちょっと妙なことではある。


ソードハンド―闇の血族 (YA Dark)
My Sword Hand is Singing (2006)
マーカス・セジウィック / あかね書房 2009-3

17世紀初頭のルーマニアが舞台。吸血鬼もの(と言ってもゾンビ系統だけど)のホラー小説。

* Tag : 歴史/時代もの  

2010.03.06 18:41 | Comments(2) | Trackback(0) | その他の話題・雑記

2009. 04. 25

最近読んだ海外ミステリ2冊

来月、徳間書店から、ダイアナ・ウィン・ジョーンズのクレストマンシーシリーズ最新作が出るようですね。やっと翻訳されるのかー、楽しみだー。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refBook=978-4-19-862742-3&Sza_id=MM
[5/20訂正] 『魔法の館にやとわれて』 やっと本屋で購入できて、訳者あとがきだけチラッと見たんですが(本編は週末にゆっくり楽しむ予定)、これはシリーズ最新作ではなかったですね……すみません(でも、徳間のサイトに「最新作」って書いてあるんだよね…)。ほんとの最新作 『キャットと魔法の卵』 は今年8月に翻訳が出る予定だそうです。そっちも嬉しいけれど、ハウルの続編は~?

それから、来月の光文社古典新訳文庫は、ジーン・ポーターの 『そばかすの少年』。以前、角川のマイディア・ストーリー文庫から出ていた作品なんですが、なんとなく意外なチョイスだ。私はこれの続編の 『リンバロストの乙女』 が好きなので(主に前半部分)、そっちも出してくれないかなぁ。

以下は、先々週に読んだランダムハウス講談社文庫のミステリー小説2冊の読了メモ。
最近、読書時間が細切れにしかとれないせいか、話の内容がなかなか頭の中に入ってこない。感想もそんな感じ……。


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ブラン・マントー通りの謎 (ニコラ警視の事件 1)
L’énigme des Blancs‐Manteaux (2000)
ジャン=フランソワ・パロ / 吉田恒雄 訳 / ランダムハウス講談社文庫
2008-11

イギリスとの戦に明け暮れていたルイ15世治下のフランス。ブルターニュから上京し、パリ警察総監の下で見習い警視を務める若きニコラ青年は、ある警視の失踪事件の担当を命ぜられ困惑していた。なぜ経験もない自分が任命されたのか? 悩みつつも捜査を開始したニコラだが、失踪事件はやがて陰惨な殺人事件へ、そして王宮をもおびやかす一大事へと発展する……。18世紀のパリを鮮やかに描いたフランスの人気シリーズ登場! (裏表紙より)

真相の意外性などはあまりないのだれど、読みやすいし、料理の描写がとってもおいしそう~。2・3作目も邦訳が決定しているそうで、出たら読みます。
でも、シリーズものとしては、主人公のニコラにもうちょっとキャラ立ちがほしいな……。見習いという割には頭が切れすぎなような気がするし、それでいて料理人のおばちゃんたちに好かれるような人の良さがある好青年という設定なんだけど、読んでいてもいまいち伝わってこないんだよな……。


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ダブリンで死んだ娘 (ランダムハウス講談社文庫)
Christine Falls (2006)
ベンジャミン・ブラック / 松本剛史 訳 / ランダムハウス講談社
2009-04

<聖家族病院>の病理医クワークは死体安置室の遺体にふと目を止めた。救急車で運び込まれたクリスティーンという名の美しい女性で、死因は肺塞栓。明らかに出産直後と見える若い女性が肺塞栓とは? 死亡診断書を書いた義兄の産婦人科マルの行動に不審を抱いたクワークは再び安置室を訪れる。だが、遺体はすでに運びだされていた! 1950年代のダブリンを舞台に、ブッカー賞作家が別名義でミステリに初挑戦した話題作。 (裏表紙より)

2005年のブッカー賞受賞作家ジョン・バンヴィルが、別名義で書いた作品。
孤児のクワークは、ギャレット判事に引き取られ、その息子のマラカイ(マル)と兄弟のように育った。マルの妻サラは、クワークの亡き妻デリアの姉で、昔愛した女性でもある。サラとデリアの父親であるアメリカの実業家クロフォードも絡んできて、謎解きというよりは、クワークの家族の話といった趣きが強い。
以前読んだバンヴィル名義の 『バーチウッド』(→感想) が素晴らしかったので、この作品も期待して読んでみたんだけど……。よく書けたミステリー小説ではあるんだろうけれど、「ブッカー賞作家が別名義でミステリに初挑戦した話題作」というほどの「違い」は、正直、私にはわからなかった。人物設定と人間関係(すれ違いの結婚をしてしまった夫婦、両親に結婚を反対される若い娘など)がかなり類型的に思えたのが、大きな原因かもしれない。

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2009.04.25 17:09 | Comments(2) | Trackback(1) | ミステリ&サスペンス

2009. 04. 12

時代ミステリ×2

今日はとても天気が良くて、暑かった。
これから来る暑い夏のことを思うと、うんざりします……。


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ニューゲイトの花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
The Bride of Newgate (1950)
ジョン・ディクスン・カー / 工藤政司 訳 / 早川書房

ニューゲイト監獄に、美貌の令嬢キャロラインが死刑囚ディックを訪ねてきた。祖父の遺産を継ぐため、遺言どおり二十五歳前に結婚しようと死刑を控えた彼を相手に選んだのだ。が、結婚式の後、事態は急変した。ナポレオン敗北に伴う情勢の変化で、ディックが釈放されたのだ。実は彼は身に覚えのない殺人罪で投獄されていた。復讐に燃える彼は、真犯人を見つけられるのか? 著者の時代本格の嚆矢となった傑作。改訳決定版。 (裏表紙より)

リージェンシー(摂政時代)が舞台。本格推理というより、決闘とか出てきて、冒険活劇っぽい。事件の真犯人については、伏線はちゃんと張られているものの、どんでん返しのための真犯人、って感じだ。
これ、恋愛関連の部分がものすごーく納得いかない。彼女はどうしてあんなに気の毒な目に会わなきゃいけないのだ? もう一人の女より、彼女のほうがよっぽど良いと思うのに。


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彩られた顔 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
The Painted Face (1974)
ジーン・スタッブス / 北見麻里 訳 / 早川書房

(表紙写真とリンク先は洋書)

19世紀末のロンドン。少年時代のニコラス・カラディーンは、ワイン商を営む父、若く美しいフランス人の継母ガブリエル、異母妹オデットにかこまれて、申し分なく幸せだった。特にガブリエルとオデットを熱愛したニコラスだったが、パリから届いたオデットの悲報によってその幸福な日々は突然終わった。それから20年経った1901年、画家として名の売れたニコラスは、偶然見つけたガブリエルの日記を読んで愕然とする。そこには、オデットがパリからスイス国境に向かう列車の事故で悲惨な最期を遂げたことが記されていた。父からはオデットは熱病のために死んだのだと聞かされていたニコラスは、妹の死の真相を確かめるため、元スコットランドヤード警部リントットの助力を得て、パリへと向かう……。

『わが愛しのローラ』(→感想) のリントット警部が再登場。
ポケミスに入っているものの、ミステリ要素は薄くて、かなりメロドラマ調。しかし、ヴィクトリア朝末期とエドワード朝初期のロンドンとパリに生きる女性たち(ガブリエルだけでなく、その忠実な乳母やカラディーン家の家政婦、ニコラスがパリで出会うナタリーとクレール姉妹、それにリントットの妻や娘など)を細やかに描いていて、その点では読み応えがある。(イギリス人とフランス人を対照的に描いていて、フランス人賛美の部分がちょっと鼻についたのだけど)

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2009.04.12 23:57 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2009. 01. 15

読了メモ 『山猫』

Il Gattopardo (1958)
トマージ・ディ・ランペドゥーサ / 小林惺 訳 / 岩波文庫
2008-03
[ Amazon ]

1860年春、ガリバルディ上陸に動揺するシチリア。祖国統一戦争のさなか改革派の甥と新興階級の娘の結婚に滅びを予感する貴族。ストレーガ賞に輝く長篇、ヴィスコンティ映画の原作を、初めてイタリア語原典から翻訳。 (カバー折込より)

19世紀後半のシチリア島を舞台に、名門貴族サリーナ公爵家の当主ドン・ファブリーツィオの後半生を描いた小説。題名の「山猫」はサリーナ公爵家の紋章。
イタリア統一運動とともに衰退していく貴族社会。ドン・ファブリーツィオは、過去の栄光にしがみつくようなことはせず、むしろイタリア統一に対する国民投票に賛成票を投じるくらいなのだが、積極的に何かをするということはなく、貴族社会の斜陽を諦観の境地でもって眺めている。
著者本人がシチリア貴族の末裔だったそうで、「美」を崇拝しているようなところだとか、特に何もせずに静観しているようなところなど、文中から垣間見られる価値観が、なるほど「貴族」らしいなあと思った(偏見?)。私には、そのあたりが読んでいていまいち居心地が悪かったんだけど。
あと、食事のシーンがやたら活気に満ちているのがなんかシチリアらしい。(これも偏見?)
機会があったら、ヴィスコンティの映画版も観てみたい。

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2009.01.15 23:40 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2009. 01. 11

『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』 スザンナ・クラーク



Jonathan Strange & Mr. Norrell (2004)
スザンナ・クラーク / 中村浩美 訳 / ヴィレッジブックス 2008-11
[ Amazon:I巻 ] [ Amazon:II巻 ] [ Amazon:III巻 ]

「ふたりの魔術師、イングランドにあらわれん。ひとりはわれを恐れ、いまひとりはわれを求める」――かつて、英国では魔術が栄え、伝説の大魔術師・大鴉の王(またの名をジョン・アスクグラス)が北イングランドを統治していた。いつしか魔術は失われ、それから300年余り経った19世紀初頭。ヨークシャーの田舎に長年ひきこもって魔術書の研究を続けていた有閑紳士ギルバート・ノレルは、英国魔術を復活させるため、ロンドンにやって来る。ミスター・ノレルは弟子に迎え入れた青年紳士ジョナサン・ストレンジとともに、魔術を駆使し、対ナポレオン戦争でのイギリスの勝利に貢献するが……。

人間を異界に攫っていく気まぐれで残酷な妖精、19世紀の作家たちを思わせる文章など、「英国の伝統」的なものがふんだんに織り込まれた幻想文学。

2004年に原書が刊行されて話題になっていた(ヒューゴー賞・世界幻想文学大賞・ローカス新人賞を受賞、その他さまざまな賞にノミネート)ときから4年、翻訳が出るのをずっと待ち続けていたのだけど、その甲斐はあった。
何と言っても、文章のおもしろさ。オースティンやディケンズ、サッカレーなどの作家を思わせる、ユーモアと皮肉と風刺のきいたキャラクター造形と人物描写(その筆頭が狭量な小男のミスター・ノレル。またジョナサン・ストレンジも矛先を免れてはいない)、ゆるやかな物語展開で、19世紀英文学が好きな私には直球ストライク。これだけでご飯三杯はいける……いや、この場合は厚いハードカバー3冊いける(笑)。他にも、アン・ラドクリフへの言及があったり、バイロンが登場して、諧謔のネタにされていたりもする。(錯乱状態のストレンジをバイロンが嬉々として観察している場面に大ウケ/笑)

薄暗い雰囲気に覆われた「幻想」の部分も、負けてはいない。第一部(I巻)ではノレルが英国魔術を復活させてイギリス中に知らしめ、第ニ部(II巻)ではその弟子となったストレンジが魔法を使って、ナポレオン軍相手の戦場で活躍する。しかし、第三部(III巻)を読み始めると、それらは前座であったことがわかる。ノレルが復活させた魔術はほんの序の口に過ぎず、真の魔術がイギリスによみがえるあたりの描写は圧巻。イギリスのあちらこちらに妖精界につながる道ができるというところが好きだなあ。あと、物語の序盤、ヨークの大聖堂でノレルが人前で初めて魔術を実践してみせる場面が印象的で、ここでぐっと物語に引き込まれた。

それから特筆すべきは、章ごとにつけられた膨大な量の脚注。最初はこれも古典文学のパロディのように思えたけれど、ここで語られる古今の魔術師のエピソード、民間伝承、書物の引用などによって、英国魔術の世界とその歴史が見えてくるという仕掛け。
さまざまな趣向が凝らされた力作で、堪能しました。

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2009.01.11 23:45 | Comments(0) | Trackback(0) | SF&ファンタジー

2008. 12. 30

まとめて手抜き感想 その2

やっつけ感想後編、その他の海外文学編。

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ゾロ 伝説の始まり(上) ゾロ 伝説の始まり(下)
El Zorro : Comienza La Leyenda (2005)
イサベル・アジェンデ / 中川紀子 訳 / 扶桑社ミステリー 2008-03

18世紀末の南カリフォルニア。後にゾロと呼ばれることになる男の子が産声を上げた。名前はディエゴ・デ・ラ・ベガ。父はスペインの元軍人、母は北米先住民族の戦士だった。ディエゴは父からフェンシングを習い、母方の祖母からは先住民族としての生き方を教え込まれた。ある日、お告げ探しの旅に出た彼は、一匹のキツネに出遭った。そして、そのキツネが彼の魂の師であると祖母から知らされたのだった。スペイン語圏で絶大な人気を誇るI・アジェンデが創り上げた波瀾万丈の歴史冒険物語。 (裏表紙より)

アジェンデによる、『快傑ゾロ』(ジョンストン・マッカレー)の前日譚。
元のゾロの話を知らなくても(私も何年か前に読んだんだけど細部は忘れちゃってたし)、19世紀初頭のカリフォルニアやスペインを舞台にした少年の成長物語&冒険娯楽小説として楽しめます。
原作のドン・ディエゴののらくら軟弱御曹司っぷりが楽しかったので、そういう描写がたくさん出てくるといいなあと期待していたのですが、ほとんど無しで残念。まあ、そういうフリをしなければならない場面が少ないので仕方ないけど。

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ガラスの宮殿 (新潮クレスト・ブックス)
The Glass Palace (2000)
アミタヴ・ゴーシュ / 小沢自然・小野正嗣 訳 / 新潮社
2007-10

ビルマ最後の王都陥落――英軍が侵攻する古都の混乱のなか、幼き孤児と侍女は偶然出会った。そして、彼らの生と交錯するインド人エリート官僚の美しき妻。世界屈指のストーリーテラーが魔法のように紡ぎだす運命の恋のゆくえ、遍在する死の悲劇と20世紀の激動。 (出版社の内容紹介より)

イギリスによるビルマ最後の王朝の崩壊・植民地化から始まり、アウンサンスーチーの登場する現代に至るまで、19世紀末から20世紀末までのビルマ・ミャンマーの歴史を背景に描かれた、四代に渡る家族の物語。ビルマの近現代史なんてほとんど知りませんでしたが、この本を読めばよくわかります。ビルマだけでなく周辺のインドやマレー半島も舞台となっており、インドの独立運動が高まるなかでのイギリス軍のインド人兵士の葛藤に深く考えさせられたり……。それだけでなく、歴史に翻弄されながら懸命に生きる人々の物語としても、感慨深い作品でした。

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リトル・ガールズ
The Little Girls (1964)
エリザベス・ボウエン / 太田良子 訳 / 国書刊行会
2008-08

セント・アガサ女学校に通う、ダイアナ、シーラ、クレア。大戦によって引き裂かれ、女学校という不思議の国を出た3人が、オールド・ガールズとなって再会した、その目的とは――。20世紀を代表する女性作家ボウエンが描きだす、少女たちの無垢と棘。

あいかわらず、訳文が読みづらい(婉曲表現)「ボウエン・コレクション」第二弾。
初老の女性たちが取り留めのないおしゃべりを繰り広げている話、って印象なんだけど(女学校時代のパートよりも現代のパートのほうが多い)、ときどきすごくハッとさせられる描写があるんだよなー。

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2008.12.30 12:22 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 12. 02

『神の家の災い』 ポール・ドハティー

Murder Most Holy (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫
2008-11
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1379年6月。かつてアセルスタンが修行時代を過ごしたドミニコ会の修道院で、院内総会が行なわれている最中に、修道士たちが次々と殺されるという事件が起きる。修道院長はクランストンとアセルスタンに調査を依頼するが、クランストンは摂政ジョン・オブ・ゴーントの差し金でイタリア人貴族から出題された「緋色の部屋」の謎――その部屋に泊まった者は必ず怪死を遂げ、四人の死者が出ていた――を解かねばならず、アセルスタンは改修中の教会から見つかった身元不明の白骨死体――その遺骨に触れると怪我や病気が治ると評判になって大騒ぎに――と、それぞれ抱える問題に頭を悩ませていた。

アセルスタン(托鉢)修道士シリーズ3作目。
創元のこのシリーズは順調に翻訳が続いていて喜ばしい。(ポケミスの2シリーズはちゃんと続き出してくれるんでしょうか……)

中世英国を舞台にしたシリーズものとしては、安定したおもしろさ。
今回、アセルスタンは、かつて生活していた修道院で事件の調査をすることを通して、それに遺骨騒動を通して、自分の担当する下町の教会や教会区民たちへの愛着を改めて実感することとなります(最後の場面が特に良い)。また、ベネディクタに寄せる想いにも、ある転機が訪れます。
クランストンとアセルスタンの足並みもかなり揃ってきて、名コンビぶりを発揮しつつあるところも、読んでいて楽しい。

しかし、謎解きという面では、かなーり期待はずれでした。トリックがチャチだというのならまだマシなのですが、そうではなく、真相に至るまでの過程が何の捻りもなくて平板であっけなさすぎるうえに、その真相というのが最初から見え透いてしまっているのです。それに、遺骨の謎の件では【(ネタばれ→)治療までしておきながら、ニセの傷跡であることを医師が見抜けない】というのはかなり無理があるように思える。
ドハティーに大掛かりなトリックや大どんでん返しなどを期待してはいけないことはうすうす気づいてはいたけれど、翻訳されている3シリーズのなかでは本シリーズがもっとも本格ミステリ寄りであるだけに、残念。

* Tag : ポール・ドハティ(ドハティー)  歴史/時代もの  

2008.12.02 22:50 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 11. 01

『ハウス・オブ・マジシャン』 メアリー・フーパー

At the House of the Magician (2007)
メアリー・フーパー / 中村浩美 訳 / 小学館ルルル文庫
2008-10
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明るく健気なルーシーは、酔っぱらいの父親から逃れるため田舎の村を出た。ロンドンを目指す途中、ひょんなことからエリザベス女王に仕える魔術師・ディー博士の館で子守りをすることに。不気味で不思議なものだらけの館も、好奇心旺盛なルーシーには刺激的! ある日、館にやってきた敬愛する女王をひと目見たくて秘密の部屋に隠れていると……。次第にルーシーは、女王を巡る陰謀に巻き込まれていく。 (裏表紙より)

ディー博士の屋敷でメイド兼子守りとして雇われた主人公ルーシーが「私ってば好奇心が強すぎて困りものよね」などといちいち言い訳しながらあちこち覗いてまわり、それを友人に全部話して聞かせ、また女王に対する関心もかなりミーハーなので、「エリザベス朝版 少女メイドは見た!」とかしょうもないことが頭に浮かんできちゃう……。
全体的にあっさりしていて、なーんか物足りない話でした。あくまでローティーン向けの範疇を出ていないというか。エリザベス女王をめぐる陰謀も単純なものだし、それに対するルーシーの関わり方もさほど深くないし(陰謀が表面に出てくるのは物語も終わり近くになってからだ)、ルーシーを始めとする登場人物たちもキャラがあまり立っていないし、何よりジョン・ディー博士の出番がロクにないうえにボンクラな人物として書かれているのがガッカリだ。あと、魔術師の屋敷が舞台の割には、ファンタジー要素がかなり薄い。
「エリザベス女王を巡る陰謀」とか「宮廷魔術師の屋敷」というフレーズに期待しすぎると肩透かしを喰らうけれど、でもまあ、ルーシーがラヴェンダースティックを作って市場で売るのとか、女王の謁見に行く場面とか、日常描写の部分は結構楽しめました。あと、万聖節の前夜(つまりハロウィン)の話が出てきてタイムリーだった。

いかにも続きがありそうな終わり方だなあ……と思って調べてみると、やはり続編(↓)が出ていました。(作者のサイトを見てみたら、シリーズ最後の3作目が来年出る予定らしい)

By Royal Command
Mary Hooper

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.11.01 15:40 | Comments(0) | Trackback(0) | YA&児童書

2008. 10. 25

「女王フアナ」

先日借りたDVDを返しにいったら、また旧作100円キャンペーン中だったので、またまた借りてきてしまいました……。そのうちの一本がこれ。

女王フアナ
(2001年 スペイン)

スペインを統一したイサベル女王の娘として生まれ、ハプスブルク家に嫁いでのちの神聖ローマ皇帝カール5世を産み、母の死後にはカスティーリャ女王に即位しながら、「狂女」と呼ばれて半世紀近くも幽閉されていたフアナの話。
気が狂っていたと言われていますが、近年では、大国の政治権力を掌握したい者たちが邪魔なフアナを閉じ込めておくための口実だったという説も強いようです。(ただし、「狂っている」とまではいかないまでも、かなり気性の激しい女性だったというのは史実のようだ)
その「狂女伝説」のひとつとなったのが、若くして亡くなった最愛の夫・フェリペ(フィリップ美公)の棺を馬車に乗せ、カスティーリャの荒野を放浪し続けたというエピソード。プラド美術館にある「Doña Juana 'la Loca'(狂女王フアナ)」という絵が有名です。

 (画像出典:ウィキペディア)

映画では、フアナと夫フェリペの愛憎(フアナの狂気のほとんどは、美青年で浮気性だったフェリペへの激しい愛情と嫉妬に起因している)をメインにしたのか、夫の死後のことは大雑把にしか触れられていませんでした。

フアナについて書かれた本は何冊かありますが、私が読んだことがあるのはこの2冊。

女王フアナ
ホセ・ルイス・オライソラ / 角川文庫

映画公開にあわせて翻訳された伝記(巻末にのっている桐生操の解説がメチャクチャひどかった…)

狂女王フアナ―スペイン王家の伝説を訪ねて
西川和子 / 彩流社

ちなみに、イギリス王家とのつながりで言うと、ヘンリー8世の最初の妃キャサリン・オブ・アラゴン(スペイン名はカタリーナ。メアリー1世の母)は、フアナの妹にあたります。姉妹そろって、夫には苦悩させられたのねえ……。

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2008.10.25 22:29 | Comments(0) | Trackback(0) | 映画&ミュージカル

2008. 10. 05

『雷鳴の夜』

夕食作ったり食べたり片付けたりしながら、BShiでやっていた「あなたが選ぶイタリア絶景50」を観てました。
「どうせ1位は青の洞窟でしょ」と思っていたら、7位に「カプリ島」が出てきて外れた。
しかしイタリアは美しい絶景だらけですね!
大きな都市(ローマ・フィレンツェ・ミラノ・ヴェネチア)は行ったことがあるんだけど、それ以外の都市や地方にも素晴らしい場所がたくさんたくさーんあるのねえ。あちこち「行ってみたい!」と思うところだらけでした。

イタリアとはまったく違う方面ですが、読み終わった本の感想。


雷鳴の夜
The Haunted Monastery (1961)
ロバート・ファン・ヒューリック / 和爾桃子 訳 / ハヤカワ・ポケミス
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旅の帰途、嵐にあったディー判事一行はやむなく山中の寺院に一夜の宿を求める。そこは、相次いで三人の若い女が変死するという事件が勃発した場所だった。到着早々、判事は窓越しに異様な光景を目撃する。昔の兜を被った大男と裸で抱き合う片腕の娘――しかし、そこは無人の物置のはずで、しかも窓すら無い部屋だったのだ。怪奇現象か? 幽霊か? 何者かの悪戯なのか? ディー判事の悩みをよそに、夜が更けるにつれ次々と怪事件が襲いかかってきた! 古代中国に実在した名判事を主人公に、巧妙なトリックと大胆な推理を展開する人気シリーズ。 (裏表紙より)

ディー判事シリーズ、本当は時系列順に読みたかったのですが、『東方の黄金』 のあとの 『四季屏風殺人事件』 『中国湖水殺人事件』 のポケミス版新訳がまだ出ていないので、飛ばしてこれ。ディー判事が漢陽県知事のときの話。
『東方の黄金』(→感想) に比べると本格推理小説としては小粒だけれど(場所と人物が限られているのでどんでん返しの予想もつきやすいし)、登場人物の旅芸人一座のキャラクターがよかったりして、話はおもしろかった。しかし猫の件は、猫飼ってる人間としては「なるほど~」と言うか、「ウカツだった~」って感じ。まさかアレが伏線だったとはにゃあ……。

朝雲観という大きくて古い道観(道教の寺院)が舞台なんだけど、道教の書かれかたがあまり印象の良くないもので、そのあたりが読んでいるあいだ気になっていた。そしたら著者あとがきに「中国人の信仰する三宗は儒教、道教、仏教であり、(中略)公案ものと呼ばれる中国の探偵小説は主として書生、つまり儒教の学者の手になるものであるから、はっきりと儒教寄りの立場をとっており、そういった特色もこの狄判事ものに取り入れた」とあって、合点がいった。細かいところまでこだわって書かれてるんだなー。

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2008.10.05 23:37 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 09. 28

『ジャック・マッグズ』 ピーター・ケアリー

Jack Maggs (1997)
ピーター・ケアリー / 宮木陽子 訳 / DHC
2000-11
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1837年、流刑囚としてオーストラリアに流されていたジャック・マッグズは、露見すれば死刑となる危険をおかし、密かにロンドンに舞い戻ってきた。ところが到着を知らせてあった屋敷には当主はおろか使用人の姿もない。誤解をさいわい隣家の従僕におさまったマッグズは、「息子」である当主の帰りを待つことにした。マッグズに関心をもった新進作家のオーツは、マッグズの息子の捜索への協力と引き換えに、催眠実験の被験者となるよう取り引きを申し出る。持病の治療のためと説得されしぶしぶ承諾したマッグズだが、オーツは催眠実験でマッグズの正体をつかんでいた。 (カバー折込より)

ディケンズの 『大いなる遺産』 を下敷きにして書かれた作品。ちなみに 『大いなる遺産』 は十年くらい前に読みましたが、ミス・ハヴィシャムの印象だけ強く残っていて、他はあまりよく覚えていない状態。
訳者あとがきでは本作はかなり高く評価されているけれど、私にはどこがどう良いのかさっぱり……。著者は一体、この小説を通して何を語りたかったのか? どうにもピンとこなかった。
副主人公格の作家トゥバイアス・オーツは、若き日のディケンズを元にしているらしい。けれど両者が同じなのは経歴や環境だけで、ディケンズ本人がオーツのような、情けない男であるうえに人でなし(催眠術をかけてマッグズが秘密にしておきたかったことを暴いてしまったり、その様子をマッグズ本人の許可を得ずに他人に見せたり、オーツが蒔いた種が原因で二人も人間が死んでしまったり)だったとは到底思えない。オーツをディケンズとはかけ離れた人物にしたところに何か意味はあったのだろうか?
『大いなる遺産』 をちゃんと読み直してみようかな、という気になったことが唯一の収穫。


【原書】
Jack Maggs
by Peter Carey

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2008.09.28 23:32 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 09. 15

最近読んだ本2冊

ちょっと気になってたんですが、東京創元社の来月の新刊予定に入っている、ダイアン・デュエイン 『駆け出し魔法使いとはじまりの本』 って、以前に富士見文庫から出ていた 『魔法使いになる方法』(ダイアン・デュアン) と同じ作品だよね?
創元ってなんか最近、他社作品の復刊・新訳というのが多い?

最近読んだ日本人作家の本、2冊まとめて。

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肉屏風の密室
森福都 / 光文社 (2008/07)

蔡知事は寒い季節になると、“肉屏風”と称して、暖房代わりの侍女たちに隙間なく囲ませ、その中で酒を飲んだり寝たりと破廉恥の限りをつくしていた。ある朝、腹に短剣を突き立てられ、息絶えているのが発見された。容疑者としてあげられた侍女たちは、手を鎖でつながれた上、徹底的に身体検分が行われていた。果たして犯人は? (出版社の内容紹介より)

『十八面の骰子(さいころ)』 に続く、巡按御史が主人公の中国時代ミステリー連作短篇集2作目。
表題作など、不可能犯罪状態を作り出すための設定が強引すぎるとか、ご当地ミステリー的ノリなために殺人トリックバレバレとかいう難はあるけれど、お話としてはおもしろかったです。主人公・希舜のくわしい過去話なども出てくるし。

ところで、なかなか色っぽい表紙絵なんですが、『十八面の骰子』 のハードカバー版とも、文庫版とも、まったく雰囲気が違う。シリーズものなんだから統一したりとかしないのか?


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おそろし 三島屋変調百物語事始
宮部みゆき / 角川書店 (2008/07)

ある事件を境に心を閉ざした17歳のおちかは、神田三島町の叔父夫婦に預けられた。おちかを案じた叔父は、人々から「変わり百物語」を聞くよう言い付ける。不思議な話は心を溶かし、やがて事件も明らかになっていく。 (出版社の内容紹介より)

作中で語られる怪談話はなかなかおもしろかったんだけど、おちか本人の事件の話となるとどうにも安易な展開に思えてしまう。単なる怪談短篇集だったほうが好みなんだけど、そういうわけにもいかないんだろうなあ……。
いちばん納得がいかない点は、良助のDQNぷりがスルーされていることだ。子供の頃から弱いものいじめをしてはばからないような男で、だいたい凶器を持ち出したのは良助のほうで、それを取り上げられなければ彼のほうが殺人者になっていただろうに(返り討ちにあっても自業自得だよなー)、そんな最低男を結婚相手に選び、今でも愛しく思い出すおちかが主人公という時点でまず白け、他の登場人物がおちかのことを「優しい」「優しい」と言い続ける時点でさらに白けてしまう。そもそも松太郎というのが都合の良すぎる存在だし、茶番劇……とまで言うとさすがに言い過ぎか……。

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2008.09.15 23:04 | Comments(0) | Trackback(0) | 国内作品

2008. 09. 10

『ラークライズ』 フローラ・トンプソン

Lark Rise (1939)
フローラ・トンプソン / 石田英子 訳 / 朔北社
2008-08
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1880年代イギリスの農村。オクスフォード州の寒村で営まれている、豊かではないが、我が身の働きによって暮らす人々の満ち足りた生活を、少女の溢れる詩情と好奇心を通して描く。イギリスで高校生の必読書とされ、長く読み継がれてきた古典的作品。 (帯より)

主人公の少女ローラや舞台となる小さな村ラークライズは架空の存在だけど、著者の幼少期をもとにして書かれた三部作の一作目。
ストーリーみたいなものはほとんどなくて、自伝というか回想というか、「ヴィクトリア朝後期(1880年代)のイギリスの農村の暮らし」の資料集の文学版って感じ。衣食住を始め、村や住人の様子、農作業、学校、教会、結婚妊娠出産子育て、日々の娯楽やお祭り行事などなど、テーマ分けされて、とにかく詳細に描写されている。住人のほとんどは小作農で、少年は12くらいで学校を卒業すると農場で働き始め、少女はメイドとして働きに出て結婚したら家事とひっきりなしの子育てに追われる、というのが定番だったようで、それについてもとても詳しく説明されている。
著者が実際に体験したことや見聞きしたことに基づいて書かれており、ローラ(=少女時代の著者)が周囲の人々を冷静に観察しているところがおもしろい。村の人々のほとんどは貧しく、それを示すエピソードも多く含まれているのだけど、私が勝手に想像していたよりものどかな暮らしぶりが伝わってくる。
しかし、著者がここまで事細かに書き残したということは、このような農村生活は執筆当時(1930年代)にはもう見られなくなっていたんだろう。「人々は今より貧しく、楽しみや娯楽も、知識も少なかった。でも彼らは今の人よりも幸せだったのだろう。(p79)」という懐古趣味めいた文章がそこかしこに顔を出す作品でもある。(私自身は、どの時代の人間が幸せだったかなんて話はナンセンスだと思っている。どの時代にだって、その時代なりの幸せもあれば不幸もあるのだから)

『赤毛のアン』 とほぼ同じ時代の話なので(アン1作目の物語背景は1870~80年代)、イギリスの田舎とカナダの田舎の生活を比べてみたりできるのもおもしろかった。まあ、自作農と小作農の違いもあってか、アヴォンリーの人々のほうがよっぽど裕福な生活を送っているんだけど。(訳者あとがきによれば「アメリカの開拓時代の生活を描いたローラ・インガルス・ワイルダーのアメリカのローラの物語に対し、イギリスのローラの物語とも呼ばれているそうです」ということだけど、「大草原の小さな家」シリーズは読んでいないので、そっちとは比べられないや)

この 『ラークライズ』 から始まる三部作は、今年初めにBBCで連続ドラマ化されています。
BBC - Drama - Lark Rise to Candleford
http://www.bbc.co.uk/drama/larkrise/

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2008.09.10 18:30 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-20世紀前半

2008. 08. 28

7月に読んだ本その2

右サイドバーの「読みたい新刊」に、一気に8冊分追加しました。
ここ一週間のうちにドバッと出たよ……。
8月に入ってからまだたった2冊しか読み終えていないし、その遅れを取り戻すためにも頑張って読まなきゃ。
早速お待ちかねのマキリップの新刊に手を出したいところですが、今は短篇集はちょっと辛いので(ひとつ読んだらそこで止まってしまってなかなか進まない)、今週末にはルルル文庫のほうを入手できると思うので、そっちを先に読もうかと。

Yahooのトップページからリンクしてあった記事。
【英「タイムズ」誌が選ぶ最も偉大なミステリ作家ベスト10】
http://xbrand.yahoo.co.jp/magazine/courrierjapon/146/1.html
ベスト50まで載ってる。「聞き慣れない作家も多いが、あなたはどれだけ知ってます?」ってさー、名前だけなら80~90%は知ってるよ。「聞き慣れない」とか言うなよー。
いろいろ文句をつけたいところはあるけど、とにかく日本人の選ぶランキングとはかなり違いますね。

今更だけど7月に読んだ本、その2。

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木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
The Man Who was Thursday : A Nightmare (1908)
G・K・チェスタトン / 南條竹則 訳 / 光文社
2008-06

この世の終わりが来たようなある奇妙な夕焼けの晩、十九世紀ロンドンの一画サフラン・パークに、一人の詩人が姿をあらわした。それは、幾重にも張りめぐらされた陰謀、壮大な冒険活劇の始まりだった。日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社とは。 (裏表紙より)

いやー、これは大変おもしろい本を読んだわ。体の中から裏返って、内側が外側に、外側が内側になってしまう、そんなような感覚がすごい。まさに悪夢的。
スコットランド・ヤードのスパイが無政府主義者たちの秘密結社に潜り込む冒険小説なんだけど、それだけじゃない……と言うより、それはほんの一部なのね。これが刊行されたときチェスタトンはまだブラウン神父シリーズを書く前だったけれど、「探偵とはどうあるべきか」を思索した小説でもある。

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またの名をグレイス(上) またの名をグレイス(下)
Alias Grace (1996)
マーガレット・アトウッド / 佐藤アヤ子 訳 / 岩波書店 2008-03

現代カナダ文学を代表する作家アトウッドの最高傑作(ギラー賞受賞)。一八四三年にカナダで実際に起きた殺人事件に題材を求め、入念な資料調査をもとに仕上げられた作品。若くて類まれな美貌の主人公グレイスは女悪魔・妖婦だったのか、それとも汚名を着せられた時代の犠牲者だったのか。十六歳で事件に関わり約三〇年間服役した、同国犯罪史上最も悪名高いと言われている女性犯グレイス・マークスの物語である。記憶の信頼性とアイデンティティの揺らぎ、人格の分裂、夢、性と暴力をはじめとする人間存在の根源に関わるテーマを、多彩な小説手法を駆使しながら、大きな物語に描き上げた力作。

裕福な独身地主キニアと彼の愛人でもあった女中頭ナンシーが、その屋敷の女中グレイス・マークスと使用人マクダーモットによって惨殺される。マクダーモットは絞首刑に処されるが、当時16歳だったグレイスは終身刑に減刑され、その後三十年を牢獄で過ごした……という、1843年にカナダで実際に起こった殺人事件を題材にした小説。
服役中のグレイスが精神科医に自分のことを話すという形式で話が進んでいくんだけど、これ、グレイスが本当のことを話しているとは限らないんだよな……。
殺人の話ではあるものの、生活描写がかなりみっちり書き込まれていて(グレイスの大きなお屋敷での新人メイドとしての様子、小規模なキニア家を切り回すメイドとしての様子、自分の家庭を主婦として切り回す様子、そしてカナダの女性たちが作り続けるキルトの数々)、そのためか、穏やかな話にも感じられる。19世紀半ばのカナダの女性たちの生活ぶりを描いている、という側面も大きいかも。
(キニアとナンシーはちょっと気の毒だなー。周囲に白い目で見られつつも、内縁の夫婦状態でそれなりにうまくやっていたのに、逆恨みもしくは強盗目的で殺されちゃって……)

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哀れなるものたち (ハヤカワepi ブック・プラネット)
Poor things (1992)
アラスター・グレイ / 高橋和久 訳 / 早川書房
2008-01

作家アラスター・グレイは、グロテスクな装飾の施された一冊の書を手に入れた。『スコットランドの一公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話』と題されたその本は、19世紀後半のとある医師による自伝だった。それは、実に驚くべき物語を伝えていた。著者の親友である醜い天才医師が、身投げした美女の「肉体」を救うべく、現代の医学では及びもつかない神業的手術を成功させたというのだ。しかも、蘇生した美女は世界をめぐる冒険と大胆な性愛の遍歴を経て、著者の妻に収まったという。厖大な資料を検証した後、作家としての直感からグレイはこの書に記されたことすべてが真実であるとの確信に到る。そして自らが編者となってこの「傑作」を翻刻し、事の真相を世に問うことを決意するが……。虚か実か? ポストモダン的技法を駆使したゴシック奇譚。 (裏表紙より)

最初の話が、後から出てくる話によって次々とひっくり返され、さらにその話が……という形式はおもしろかったんだけど、メインの話が「ヴィクトリア朝の人々が“女性”をどう扱ったか」の見本市みたいで、ちょっと食傷気味に。あまり楽しめなかった。

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2008.08.28 23:50 | Comments(2) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 08. 17

7月に読んだ海外ミステリ3冊

8月に入ってから、ほとんどと言っていいほど本を読めていません。
暑さでグータラしていたり、オリンピックを観ていたり……。
まあ、今月末は私的注目新刊ラッシュだから、それまで読書はちょっと休んでいてもいいかなー、って。
なんて思っていたら、9月もハヤカワの新刊ラインナップがすごいな。コニー・ウィリスの短編集とか、うれし~。

風邪はもうほとんどよくなったんだけど……なぜか、咳だけ治らない。一度咳き込むと止まらなくなって、ちょっとつらい。
一体どうしてー?

今更だけど、7月に読んだ本、ミステリ編。

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殺人への扉 (海外ミステリGem Collection 15)
The House without the Door (1942)
エリザベス・デイリー / 葉戸ひろみ 訳 / 長崎出版

夫を毒殺した容疑をかけられたものの、裁判で無罪となったグレッグソン夫人。人目を避けてひっそりと暮らしていたが、匿名の手紙が届き、彼女の命を狙ったかのような出来事が相次いで起きる。彼女に頼まれて、調査を始めたヘンリー・ガーメッジだったが、殺人事件が起き……。

『予期せぬ夜』 『二巻の殺人』 に続く、米作家デイリー(デイリイ)の邦訳3作目。古書研究家ヘンリー・ガーメッジ(ガーマジ)シリーズとしては4作目。
派手さとかトリッキーさなんかはないけれど、手堅く作られ、しっかり楽しめるクラシックな本格探偵小説。
デイリーはもっと翻訳されてほしい。今まで初期作品ばかりなので、後期の作品なども。

助手ハロルドの活躍を期待していたんだけど、『二巻の殺人』 ほどの変人ぶりは発揮していなくてちょっと残念。ただまあ、ガーマジが結婚しちゃったので、奥さんのほうに活躍の場を持っていかれてしまうのは仕方ないかなー。

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ケンブリッジ大学の殺人 (扶桑社ミステリー タ 9-1)
The Cambridge Murders (1945)
グリン・ダニエル / 小林晋 訳 / 扶桑社

ケンブリッジ大学が明日から長期休暇に入るという夜、フィッシャー・カレッジ内で門衛が射殺された。副学寮長のサー・リチャードは、一見単純に見える事件に複雑な背景があることに気づき独自の調査に乗り出すが、やがて帰省した学生のトランクから第二の死体が発見され……。めくるめく推理合戦、仮説の構築と崩壊、綿密きわまる論理的検証、そして単越したユーモア。考古学教授を本職とする著者がものした、本格ファンの魂を揺さぶる幻の40年代クラシック・パズラー、ついに本邦初訳なる。 (裏表紙より)

サー・リチャードと警察の推理合戦といった部分もあって、途中経過はとてもおもしろかったんだけど、後味が悪い……(サー・リチャードの部分が)。

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推定殺人 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)
Murder, I Presume (1990)
ギリアン・リンスコット / 野中千恵子 訳 / 社会思想社

1874年、人命よりも名誉が重んじられていたヴィクトリア朝のロンドン。友人である二人のアフリカ探検家の名誉を汚そうとしていた隊付画家が、講演会の壇上で床に崩れ落ちた。探検に同行したわたしは彼の講演を阻止しようとしてはいたが、いったい誰が? 友人の妻たち――一人は勇敢で有能、もう一人は若く美しい――、古くからの知人、それとも若い夫人に熱を上げていた若者か? (裏表紙より)

1870年代のロンドンが舞台、アフリカ探検が背景のミステリー。何というか、紋切り型。

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2008.08.17 23:52 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 07. 11

『スコットランド・ヤード物語』

Amazon.co.jp で詳細を見る内藤弘 / 晶文社 1996
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市民の10人に1人が犯罪者だといわれていた19世紀初頭のロンドン。世界最初の近代警察、ロンドン警視庁(通称スコットランド・ヤード)は誕生した。パトロール中、巡査たちはなぜ街路灯によじのぼったのか? 警察の「早朝めざましサービス」とは何か? 幕末の江戸にやってきたロンドンの警官たちの仕事とは? 膨大な資料を駆使して、運営の実際からシャーロック・ホームズ物語に隠されたエピソードまで、スコットランド・ヤードの知られざる歴史を浮き彫りにした、渾身書き下ろし。 (カバー折込より)

英国ミステリ好きにはおなじみ、スコットランド・ヤード。私なんか、当たり前のように「スコットランド・ヤード」「スコットランド・ヤード」と連呼しているけど、「スコットランド・ヤード=イギリスの首都警察の本部(ロンドン警視庁)」だと知らない人からしてみれば(そっちのほうが多数派だろうね)、「何それ?」状態だよな……と先日、ふと思いました。昔、スコットランド王家の在ロンドン邸があった場所が「スコットランド・ヤード」と呼ばれており、その場所に1829年にロンドン警視庁が置かれたことからこの名で呼ばれるようになったらしい。(その後、2回移転しています。私も初めてロンドンに行ったときには現在の建物を見に行ってきました(笑)。「New Scotland Yard」と書かれた看板がくるくる回ってるんだよね~、勿論中に入る用事なんてないので前を通っただけだったけど。しかし、本書によると、建物内に「首都圏警察歴史博物館」があるらしい。一般客でも見学できるのかな?)

で、本の内容について。
ヴィクトリア朝におけるスコットランド・ヤードの説明が中心で、それについてはとにかく詳しく書かれています。ロンドン警視庁の組織体系や仕事の内容などから、警官の一日の細かいスケジュールや給与事情にいたるまで。他の資料本からの引用なんてのもなくて、当時の内部記録に直接当たっているし。
もっとも、私は20世紀に入ってから――探偵小説黄金期当時の警察の様子も知りたかったのに、そのあたりはほとんど触れられていなくて、それはちょっと残念だったな。特に、バロネス・オルツィの 『レディ・モリーの事件簿』 に関連して、女性が警官や刑事として働き始めた経緯を知りたかったんだけど……。

あと、英国ミステリではスコットランド・ヤードの刑事が地方で起きた事件の捜査に派遣されてくるという話が多く、その点では日本の警視庁とは仕組が違っていて、ちょっと不思議に思っていたんですよね。それで、その説明があるといいなと思っていたのだけど、「ヤード刑事はまた、地方の警察から捜査の依頼がくるたびごとに地方へ出張した。(p192)」の一文で済まされていました……(苦笑)。
しかし、その次の行に気になる一文を発見。「一八二七年ごろから、本庁の刑事は総監命令で上流社会のひとびとが外出するとき、または海外旅行をするとき、ボディ・ガードとしてかれらのおともをするようになった。この慣行はそののちもずっとつづいた」。個人的なボディ・ガードも仕事に含まれていたのか。このようなシチュエーションが出てくる小説があったら、読んでみたいなあ。

ついでに。イギリスの警察というと、この映画が観たい。とっても楽しそう……。
映画『HOT FUZZ ホットファズ-俺たちスーパーポリスメン!-』
http://hotfuzz.gyao.jp

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2008.07.11 00:36 | Comments(0) | Trackback(0) | その他の話題・雑記

2008. 05. 15

『ケニルワースの城』 サー・ウォルター・スコット

Amazon.co.jp で詳細を見るKenilworth (1821)
ウォルター・スコット / 朱牟田夏雄 訳 / 集英社 世界文学全集
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(左の表紙写真は原書版のもの)

1575年のイングランド。コーンウォールの老騎士の娘エミー・ロブサートは、父親の元を黙って抜け出し、レスター伯爵ロバート・ダドリーと駆け落ち同然に結婚した。しかし、女王エリザベスの寵をライバルのサセックス伯爵と競っている野心家のレスター伯は、女王の寵愛を失うことを恐れてこの結婚を秘密にし、腹心の臣下リチャード・ヴァーニーに命じてエミーをカムナー屋敷に閉じ込めさせておく。エミーの居場所を突き止めた元婚約者の騎士トレシリアンは、彼女を連れ出したのはヴァーニーだと勘違いし、彼の非道を女王に訴え出たことから、レスター伯とヴァーニーは窮地に陥る。その後、女王エリザベスは国内巡回の途中で、レスター伯の居城ケニルワースに滞在。そこへ、ヴァーニーのもとから逃げ出したエミーが夫の庇護を求めてやってくるのだが……。

サー・ウォルター・スコットが、女王エリザベスと寵臣レスター伯爵、謎の転落死を遂げたその妻エミー(エイミー)の話を基に描いた歴史小説。他にもサー・ウォルター・ローリー(見せ場あり)やシェイクスピア(こちらは出番ほとんどなし)など実在の人物が多数登場しますが、史実どおりというわけではなくて、実際にレスター伯とエミーが結婚したのは1550年(エリザベスの即位前)で秘密でもなんでもなく、エミーが亡くなったのは1560年であるなど(女王と結婚したいレスター伯がエミーを邪魔に思って殺したという説があるのは実話)、物語をおもしろくするためにかなりの改変が加えられているそうです。

後半になって主要登場人物がケニルワースに集合するあたりからおもしろくなってくるんですが、前半はなかなか話が進まず。それに、トレシリアンやその配下の人々が、やらないほうがいいようなことばかりやるんだよなー。エミーの名誉を重んじての行動とは言え、逆にエミーをどんどん苦境へと追い込んでいくばかりで、「もう余計なことするからーっ」ってイライラする。「エミー自身が助けを望まないなら、介入しないほうがいい」とアドバイスする人物もいるのに。エミー本人も、レスター伯爵夫人として宮廷で注目されたいという思いもあって、ちょっと分別が足りない若い女性だし。
そんなヒロイン側と比べると、「悪党」のヴァーニーは策略に長けていて(この人の行動も割合行き当たりばったりだけど)、自己の出世や保身のためには手段を選ばない冷徹さで、こちらのほうが強く印象に残ります。
レスター伯はね……まあどうしようもない人ですね。

サー・ウォルター・スコットって、日本では名前ばかり有名で作品はあまり読まれていないという印象があるんだけど、スコットランドの国民的詩人&作家で、当時の人には非常に愛読されていたんですよね。
今回、初めてスコットを読んでみて、当時の人々が熱中したのもわかる気がしました。
エリザベス女王がサセックスとレスターを対峙させる宮廷のシーンとか、エリザベスがケニルワースに入場するシーンとか、本当に華々しくって素晴らしいんだもん。
他にも、ヴァーニーとトレシリアンそれぞれに従う錬金術師(医師)や、エミーに忠実に仕える田舎娘ジャネットなど、エンターテイメント的な人物配置も巧いし。

ちなみに、物語とは直接関係ないけれど、レスター伯ロバート・ダドリーは、ノーサンバランド公爵ジョン・ダドリーの息子。つまり「九日間の女王」レディ・ジェイン・グレイと政略結婚したギルフォードのお兄さんだったんですねー。(検索してみると弟という記述も散見されるけれど、生年月日からするとロバートのほうが兄みたい)


イングリッシュ・ヘリテージのサイトのケニルワース城のページ
http://www.english-heritage.org.uk/server.php?show=nav.16873

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2008.05.15 23:54 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-19世紀

2008. 04. 30

『教会の悪魔』 P・ドハティ

Amazon.co.jp で詳細を見るSatan in St Mary's (1986)
ポール・ドハティ / 和爾桃子 訳 / ハヤカワ・ポケットミステリ
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13世紀のロンドン。殺人を犯して司直の手が及ばぬ聖メアリ・ル・ボウ教会へと逃げこんだ男ダケットが、密室状態の教会内で首を吊って死んでいるのが発見された。罪の意識に苛まれての自殺かと思われたが、国王エドワード1世は自分に対して叛逆を企む者たちの仕業だと考え、事件の調査を命じる。その密偵役として白羽の矢が立ったのは、王座裁判所書記のヒュー・コーベット。すぐにダケットの死が殺人だと突き止めたのだが……。

ドハティの代表作とも言われる密偵ヒュー・コーベットシリーズ第1作。
コーベットはウェールズ征服時にエドワード1世を庇って戦ったことがあり、国王の覚えもめでたく頭の切れる人物です。しかし、暗い。数年前にペストの流行で妻子を失ってからずっと失望状態で、暗い。そんな主人公の性格と話の展開が相まって、いささかシリアスな印象。もっとも、中盤で元窃盗犯の少年レイナルフが従者となって加わるとちょっと活気が出てくるし、訳者あとがきによるとコーベットは以後の作品では「公私ともに右肩上がりの人生」になるそうですが。
自殺に見せかけた密室状態での殺人という不可能犯罪を扱ってはいるけれど、その真相は正直言ってしょぼい。殺人の謎解きよりも、刺客に狙われつつ国王に対する陰謀を追いかけるというほうが主体になっています。
エドワード1世の時代の史実を物語の背景としているのはもちろんとして、「著者あとがき」によれば、聖メアリ・ル・ボウ教会での殺人も、その経緯や被害者加害者などの関係者の名前にいたるまで実際にあった事件に基づいているんだそうで、それにはビックリ。

ポケミスは、ロジャー・シャロットシリーズが1作目 『白薔薇と鎖』 が2年前に出たきりになってるけれど、こちらのヒュー・コーベットシリーズは訳者あとがきを見ると、2作目以降も翻訳が予定されてるっぽい? 無事に続いてほしいなあ。

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2008.04.30 22:40 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 04. 05

『東方の黄金』 ロバート・ファン・ヒューリック

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Chinese Gold Murders (1959)
ロバート・ファン・ヒューリック / 和爾桃子 訳 / ハヤカワ・ポケットミステリ
[ Amazon ]

西暦663年、若い官吏・狄仁傑(ディーレンチェ)が海沿いの僻地の町・平来に向かって唐の都を旅立った。何者かに毒殺された知事の後任として赴くのだ。旅の途中で新たに二人の信頼できる部下を得て任地へと乗りこんだディー判事だったが、そこで彼らを待ち受けていたのは、跋扈する人食い虎、密輸事件や新妻失踪、さらに役所に現れる前知事の幽霊という怪事件の数々だった……。

唐の時代の中国を舞台にしたディー判事シリーズ。刊行順と作中の時系列順が違うようなんですが、これは時系列順で最初の作品です。
このシリーズは初めて読んだんだけど、おもしろかったー。関係があるかと思えば無関係、まったく別の事件かと思えば意外な繋がりがある……といった具合にもつれあった数々の事件の糸を、ディー判事があざやかにときほぐしていく。中国の昔の怪談を思わせる怪奇趣味めいた部分があるところも好み。
読んでいて連想したのが、去年読んだ古龍の「陸小鳳シリーズ」です。意外な真犯人、どんでん返しが連続するスピーディーな展開、人が次々にあっけなく殺されていくところ、料理屋で飲み食いしながら情報交換をするところ、艶事にあっけらかんとしているところ……など、いくつか共通点が。古龍作品は武侠小説だという違いはあるけれど、ファン・ヒューリックは中国の古典の研究をしていたそうだし(本業は日本にも赴任したことがある外交官)、中国の小説の型のひとつと言えばいいのか、源流が同じなのかなあ。


ところで、ファン・ヒューリックとはまったく関係ないけれど。陸小鳳シリーズの4巻以降ってまだ出ていないよなあと思ってAmazonで検索してみたら、こんなの見つけた。
マーベラス・ツインズ(1) 謎の宝の地図 [GAMECITY文庫] : 古龍
アニメ調の表紙にもビックリだけど、ドラマCDまで出てるらしいぞ……。

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2008.04.05 16:14 | Comments(0) | Trackback(1) | ミステリ&サスペンス

2008. 03. 09

『漆黒の鳥』 ジョエル・ローズ

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Blackest Bird: A Novel of History and Murder (2007)
ジョエル・ローズ / 松下祥子 訳 / 早川書房
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1841年のニューヨーク。煙草屋の看板娘として人気があったメアリ・ロジャーズがむごたらしい死体となってハドソン川に浮いているのが発見され、街中にセンセーションを巻き起こした。治安長官のヘイズ親方が調査に乗り出すが、事件は迷宮入りの様相を呈してくる。一方、作家のエドガー・アラン・ポーはこの事件をモデルに、その謎を解き明かそうとした推理小説 『マリー・ロジェの謎』 を雑誌に発表。ポーがメアリと親しかったことを知ったヘイズ親方は、ポーこそがこの事件の犯人なのではないかと疑い始める……。

エドガー・アラン・ポーの 『マリー・ロジェの謎』 のモデルとなったメアリ・ロジャーズ事件、それに巻き込まれた男たちのドラマを描いた物語。ポーや連続拳銃の発明者サミュエル・コルトなど、実在した人物が多数登場しますが、著者のフィクションである部分も多いようです。
映画やドラマを観ているかのように一場面一場面が短く、視点や場所が次から次へと切り替わるのでブツ切れ感があり、それに話の成り行きを淡々と描写している感じで、どうも話に入り込みづらかったです。また、常にメアリ・ロジャーズ事件の謎が物語の底を流れているわけですが、かなりの部分でチョロチョロ流れになってしまったり、はたまた地下に潜ってしまったり(特にポー本人に焦点が当てられる後半部分)といった感じで、どうにも弱い。
でも、ポーの人生や19世紀半ばのアメリカの出版業やジャーナリズムの様子はよく知らなかったので、ちょっと参考になりました。

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2008.03.09 23:52 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 03. 06

ポール・ドハティ

来月のポケミス新刊に、ポール・ドハティが来た~!(ハヤカワ・オンライン情報)
でも、ずっと待ってたロジャー・シャロットシリーズの続きじゃなくて、密偵ヒュー・コーベットものなのかよ!
でもでも、ドハティの代表作だというヒュー・コーベットシリーズが読めるのもかなり嬉しいな~
ついでに、『赤き死の訪れ』の読了メモをずっと書きそびれていたので、ここで書いておこっと。


Amazon.co.jp で詳細を見る『赤き死の訪れ』
The House of the Red Slayer (1992)
ポール・ドハティー / 古賀弥生 訳 / 創元推理文庫

ロンドン塔の城守、ラルフ・ホイットン卿が塔内の居室で殺された。卿は数日前に届いた手紙に、異常なほどおびえていたという。その後も、同様に手紙を受けとった者たちのもとを、死が相次いで訪れる。それぞれ悩みを抱えながらも、姿なき殺人者を追うアセルスタン修道士とクランストン検死官…。クリスマスを控えた極寒のロンドンに展開する、中世謎解きシリーズの傑作第二弾。 (裏表紙より)

アセルスタン修道士シリーズ2作目。
とっても面白かった。前作も悪くなかったけれど、ミステリ部分も物語の盛り上げ方も格段に良くなってるんじゃないかなあ。連続殺人事件のそれぞれのトリックは派手さはないものの、アセルスタンが抱えている教区の墓荒しの問題の真相も含めた合わせ技で結構満足感があるし、「死んだはずの人間が復讐しに舞い戻ってきたのか」という時代背景にマッチした展開も好みでした。
アセルスタンもクランストンも犯人に対して手厳しかったけれど、私は犯人に大いに同情しちゃうなー。

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2008.03.06 23:46 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 02. 23

『リチャード三世を愛した女』 ジーン・プレイディー

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Reluctant Queen: The Story of Anne of York (1990)
ジーン・プレイディー / 友清理士 訳 / バベル・プレス
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キングメーカー・ウォリック伯を父にもつ少女アン・ネヴィルはグロスター公リチャードとの間に淡い思いを通わせていた。だが、父と国王の不和をきっかけに、アンも激動の乱世の渦中に投げ込まれる――。同盟関係がめまぐるしく変転するばら戦争の進行を、敵味方に引き裂かされながらもリチャード三世と添い遂げ、イングランド王妃にまでなったアンの視点を通して描き出す。 (帯より)

『プリンセス・オヴ・ウェールズ―英国皇太子妃列伝』 の感想記事で触れた本です。
子供の頃、ウォリック伯の娘アン・ネヴィルと、ウォリック伯の庇護下にあるエドワード四世の弟・リチャードは同じミドラム城で暮らしていました。しかし、ウォリック伯がエドワード四世(ヨーク家)と不仲になり、寝返ってヘンリー六世(ランカスター家)側についたため、アンとリチャードはお互い敵の立場に。さらに、アンはヘンリー六世の王太子エドワードと結婚させられます。それから間もなく、ヨーク家との戦いにおいてウォリック伯と王太子エドワードは敗れて戦死。父と夫を亡くしたアンは翌年、再会したリチャードと結婚し、思い出の地ミドラムで結婚生活を送ります。そして11年後、リチャード三世として国王に即位した夫にともない、アンは王妃になったのでした。
この作品は、そのアンを主人公にして回想記風に書かれた歴史小説ですが、王太子エドワードとは婚約しただけで、法的にも実質的にも結婚していなかったことにされてます。それと、「夫を亡くしたアンがロンドンでメイドとして働いているところを、リチャードが見つけて救い出した」というなんだかすごい伝説があるそうなんですが、その話もうまくアレンジして作中に組み込んであります(そのアレンジがプレイディーのオリジナルかどうかはわからないけど)。

幼なじみ設定は大好物なので、そのあたりのツボっぷりには萌え悶えながら読んでました(笑)。子供時代、4歳年上のリチャードに懐くアン、普段は人を寄せ付けない少年リチャードもアンにだけは心を許し、舞踏会ではいつも二人で踊るところなど堪りません。
しかし、話が進むにつれて顕著になっていく心情描写が大味なのがなあ……。父と婚約者を殺したヨーク家の一員であるリチャードに再会したときのアンの心情が嬉しさ一辺倒で、「エドワードが死んでくれてラッキー☆ これでリチャードと結婚できるわ♪」だなんて、情緒もへったくれもねーよ! その後も登場人物の情感は繊細さ・機微を欠き、また、人物描写もどこか一面的です。あと、「エドワード四世は素晴らしい王様」「クラレンス公いやな奴、信用できない」など、同じことを何度も繰り返し強調して書いてるのがしつこく感じられてくる。
史実自体が興味深いので話はおもしろく読めるんですが、小説としての出来はちょっと微妙なところだなー……という気がします。

作中でも書かれていますが、王妃になってからのアンの生活はあまり明るいものではなかったようです。病弱だった一人息子の死、アン自身の健康状態の悪化、リチャードが離婚して姪のエリザベスと結婚したがっているという嫌な噂。結局2年足らずで、28歳の若さで病死してしまうのですが、その数ヵ月後にリチャードがヘンリー・チューダーとの戦いで戦死することになるのを考えると、それを見ずにすんだのはせめてもの幸運だったのかなあ……。


この作品の著者の「ジーン・プレイディー」というのは、ヴィクトリア・ホルトの別ペンネーム。プレイディー名義で歴史小説を何十冊も書いており、イギリス本国では好評価を受けているようです。



Amazon.co.jp で詳細を見る訳者あとがきで紹介されていた、アン・ネヴィル関連の他作品。

The Sunne in Splendour: A Novel of Richard III
Sharon Kay Penman

シャロン・ケイ・ペンマンによる1982年出版の小説。
「原書で900ページを超える大作だけあって主要登場人物みなが丁寧に扱われており、つとに評価が高い」だそうで、ぜひ読んでみたいぞ。でも、翻訳出なさそうだしなあ、原書は到底無理だし……。
それより、『時の娘』 の内容をすっかり忘れてしまっているので、そっちを再読するか……。

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2008.02.23 18:54 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 02. 14

『テメレア戦記Ⅰ 気高き王家の翼』

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Temeraire Series: His Majesty's Dragon (2006)
ナオミ・ノヴィク / 那波かおり 訳 / ソニー・マガジンズ
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19世紀初頭、ナポレオン戦争のさなか。当時、空中戦にはドラゴンが使われていた。英国海軍リライアント号の艦長ウィル・ローレンスは、拿捕したフランス艦のなかで孵化寸前のドラゴンの卵を発見。海の上で卵から孵ったドラゴンの男の子はローレンスを生涯のパートナー「担い手」として選び、彼よりテメレアという名を与えられる。海軍から空軍へ異動となったローレンスは、テメレアとともにスコットランドの空軍基地へと赴き、イギリス海峡の守りを固めるドラゴン戦隊に加わるべく厳しい訓練をはじめるのだが……。

ドラゴン+空中戦+海洋冒険小説の歴史ファンタジーということで、かなりおもしろそうだったんだけど……うーむ、私には合わなかったわ。作品の出来不出来とは別に、登場人物の描写になんとなーく嫌らしさを感じてしまって。
テメレアは中国産のとても貴重なドラゴンなんだけど、その生まれつきの優秀さが次々と明らかになって、それが他の一般種のドラゴンと比較されればされるほど、作者の主人公びいきみたいなのを感じて白けてしまった。もう一人の主人公ローレンスに関しても、対立する人物たちが結局は彼の引き立て役みたいにされてるし、彼の「潔癖さ」が周囲との間に引き起こす軋轢にうんざりしてくる。それにローレンスって、他人にも「ドラゴンへの気配り」を強制するわりに、ドラゴンたちを人間のために過酷な戦場で命を懸けて戦わせることについてはなんとも思わないのかなー……。(第一、人間に劣らぬ知性を持った巨大なドラゴンが、簡単にひねりつぶせるほどちっぽけな人間に、生まれたときから忠実に付き従うという設定からしてよくわからん)
で、私は細かい部分が気になり始めると、素直に物語を楽しむことが出来なくなってしまうのでした。
でも、ローカス賞の新人賞などを取った作品でもあるし、つまらないわけでもないので、ドラゴン・ファンタジーが好きな人は読んでみるといいかも?

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2008.02.14 23:38 | Comments(0) | Trackback(0) | SF&ファンタジー

2008. 02. 06

『英国紳士、エデンへ行く』 マシュー・ニール

Amazon.co.jp で詳細を見るEnglish Passengers (2000)
マシュー・ニール / 宮脇孝雄 訳 / 早川書房
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1857年、ヴィクトリア朝英国。科学的な地質研究によって、信仰のよりどころの危機にさらされた牧師ウィルソンは独学で地質学を修得し、「エデンの園はタスマニアにあった」という新説を発表。支持者の援助を得たウィルソンは、医師ポッターや植物学者の青年レンショーとともに、タスマニアに実証の旅に向かうことになる。だが、一行がチャーターした“シンセリティ”号は、キューリ船長をはじめとして乗組員全員が英国人を目の敵にするマン島人で、さらにワケアリの船だった。かくして、トラブル続きの旅が始まったのだが……。

「語りの超絶技巧+ユーモアで描く奇想大作」という内容紹介文から想像していたのとはずいぶん違う話だったけど、読み応えがあってとても良かった~。
総勢20人ほどの人物の語りや手記などによって物語が形作られ、前半では、ウィルソンら一行の船旅の様子と平行して、英国の植民地化されたタスマニアで、アボリジニの母親と白人の父親のあいだに生まれた少年ピーヴェイがアボリジニ迫害のなか成長していく様子が描かれています。前者の英国人たちの珍道中の描写は 『ボートの三人男』 を連想させるようなイギリスの伝統的なユーモア小説のノリでとても楽しいんですが、後者の大英帝国による先住民迫害の様子は読むほどにひどく胸が悪くなる。やがては純血のタスマニア・アボリジニを全滅にまで追いやった大量虐殺、さらに先住の地から追い出して「保護区域」へ強制移住させた彼らに対する「教化」――「文明人」たる自分たちが「未開人」たちを文明化してあげようという独善的な思い上がり。白人たちはアボリジニを「野蛮人」と見なしますが、「文明人」面した白人たちのほうがよほど野蛮に見えてくる。英国本国が絶頂期と言われるヴィクトリア朝を謳歌する一方で、地球の反対側ではこんなことをしていたわけね。ウィルソン一行がそんなタスマニアへ「エデンの園」を探しに行くというのは強烈な皮肉です。
しかし、これらの出来事は複数の語り手たちによって様々な視点から語られるので、客観性が生まれ、陰湿ではなくドライな感じになっています。また、中盤すぎでウィルソン一行とピーヴェイの物語が交錯してからは密林+海洋冒険小説みたいになって、とてもおもしろかった。(ピーヴェイに対しては気の毒でならないと同時に、某人物には激しい嫌悪感を覚えずにはいられませんでしたが……)

ところで、どうして、この作品が「プラチナ・ファンタジイ」のラインナップに入っているのかな? 非現実的な要素は皆無だし、幻想的なところもほとんどないと思うのですが……。

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2008.02.06 23:06 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2008. 01. 28

『オーランドー』 ヴァージニア・ウルフ

Orlando: A Biography (1928)
ヴァージニア・ウルフ / 杉山洋子 訳 / 国書刊行会
世界幻想文学大系39
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(左の表紙画像とリンク先はちくま文庫版)

オーランドーとは何者? 36歳の女性にして360歳の両性具有者、エリザベス1世お気に入りの美少年、やり手の大使、ロンドン社交界のレディ、文学賞を受賞した詩人、そしてつまりは…何者? 性を超え時代を超え、恋愛遍歴を重ね、変化する時代精神を乗りこなしながら彼/彼女が守ってきたもの。奇想天外で笑いにみちた、再評価著しいウルフのメタ伝記。 (ちくま文庫版の内容紹介より)

読んでいる最中はあまりページが進まなかったのですが、読み終えて振り返ってみると、おもしろかったなあ、と。
少しずつ年を取りながらエリザベス1世の時代からずっと生きてきて、さらに途中(30歳のとき)まで男性だったのにある日目覚めてみたら女性になっていたオーランドー。伝記風に書かれたオーランドーの人生を通して、エリザベス朝から1928年(作品が発表された年)までの360年間のイギリスの歴史と時代が移り変わりゆく様を眺めるような感じで、そのなかに各時代の文化・社会批評や文学批評などが盛り込まれています。さらにオーランドーが男であること・女であることの両方を経験し、双方の感情を理解できる立場になったことから、男女論のようなものも繰り広げられます。まあとにかく様々な事柄についてのウルフの見解が詰め込まれていて、それらがウルフのおしゃべりのごとく少々饒舌にユーモラスに語られるのが楽しかったです。それに、オーランドーが超越したような存在ではなく、その時その時の風潮に影響を受けがちである(書いている詩の文体・内容も変化していく)ところも、なかなかおもしろかったな。
(ところで、社会風刺のなかでも特にヴィクトリア朝が槍玉に挙げられていたのは、モダニズムの作家であったウルフにとっては、やはり好きになれない時代だったのかな~)

この作品は、ウルフの恋人だったヴィタ・サックヴィル=ウェスト(有名な庭―シシングハースト庭園を造った人ですね。私にとってはそっちの印象のほうが大きいや)に捧げられていて、オーランドーはこのヴィタがモデルなんだそうです。さらに、エリザベス1世の親戚かつお気に入りの臣下であったり、大使となって異国へ出向いたり、というオーランドーの経歴は、ヴィタの生家で英国貴族だったサックヴィル家の先祖たちのものの組み合わせなのだとか。(オーランドーの住む館もサックヴィル家の大邸宅ノールがモデル)

このように、イギリスの文学史でもあり、社会史でもあり、ジェンダー文学でもあり、ヴィタの伝記でもあり、サックヴィル家の伝記でもあり、それ以外にも様々な要素が重ねあわされていて、奇想天外でにぎやかな物語でした。

* Tag : 歴史/時代もの  

2008.01.28 19:44 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-20世紀前半

2007. 11. 29

『プリンセス・オヴ・ウェールズ―英国皇太子妃列伝』

Amazon.co.jp で詳細を見るデボラ・フィッシャー / 藤沢邦子 訳 / 創元社
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表紙ではダイアナさんが目立ってますが、別に彼女メインの本ではありません。歴代の9人の「プリンセス・オヴ・ウェールズ」を紹介した本。ウェールズ生まれの著者にとって「プリンセス・オヴ・ウェールズ」は「英国皇太子妃」という以上の意味があるみたいだけど、それは横に置いておいて。

シェイクスピアの 『リチャード三世』 を読んで以来、その妻だったアン・ネヴィルに興味が出てきて、この本を手にとったのも彼女のことが載っていたからです。アンは夫のグロスター公リチャードが王に即位したために王妃になりましたが、皇太子妃だったのは、最初の夫がヘンリー六世の皇太子エドワードだったからでした。そのエドワードは宿敵ヨーク家との戦いで敗死、アンは翌年、ヨーク家の重要人物であるグロスター公リチャードと再婚します。どうして前の夫の仇とも言える男などと結婚したのか詳しいことはよく分からないようなんですが、この二人、実は子供の頃は同じお城で暮らしていたんですねー(リチャードがアンの父・ウォリック伯の庇護下にあったため)。おお、なんと幼馴染みだったとな! 幼い頃を近くで過ごした二人が、やがて夫を殺された女とその夫を倒した男として再会、のちに結婚するわけです。歴史的考察なんぞどっかへブッ飛ばして妄想の翼を広げてみれば、そこらへんのロマンス小説や少女マンガも裸足で逃げ出すような、ドラマチック設定ではありませんか。いや、本国イギリスでは、これをネタにロマンチック歴史小説を書いちゃった人(それも複数)がいるに違いない。



と、鼻息を荒くしながら、昨日ここまで書いたのですが、今日寄った本屋でそのものドンピシャリな本を発見!

Amazon.co.jp で詳細を見るリチャード三世を愛した女
ジーン・プレイディー / バベルプレス

「キングメーカー・ウォリック伯を父にもつ少女アン・ネヴィルはグロスター公リチャードとの間に淡い思いを通わせていた。だが、父と国王の不和をきっかけに、アンも激動の乱世の渦中に投げ込まれる――。同盟関係がめまぐるしく変転するばら戦争の進行を、敵味方に引き裂かされながらもリチャード三世と添い遂げ、イングランド王妃にまでなったアンの視点を通して描き出す」

このジーン・プレイディーというのは、あのヴィクトリア・ホルトの別ペンネームだそうです。そういえば、『プリンセス~』の巻末の参考文献のところに、歴史小説の中のお薦めとして「ジーン・プレイディー」の名が挙げられていたなー。(「ヴィクトリア・ホールの筆名のひとつ」と訳されていたけど、ホルトのことだったのね)



えーと、元の本のことに戻って。
他に興味を持って読んだのは、夫のジョージ四世に超絶嫌われた妃キャロライン・オヴ・ブランズウィック。同時代のジェイン・オースティンが摂政皇太子時代の夫妻の諍いについて私信で触れていて(岩波文庫 『ジェイン・オースティンの手紙』 参照)、ジョージをけちょんけちょんに貶す一方で、キャロラインに対しては同情的に書いています。しかしそのオースティンに嫌われていたジョージ本人はオースティン作品の大ファンで、彼女に会いたいと招待するほどだったのは、なんという皮肉(笑)。

* Tag : 歴史/時代もの  

2007.11.29 23:40 | Comments(0) | Trackback(0) | その他の話題・雑記

2007. 11. 20

『怪人エルキュールの数奇な愛の物語』 カール=ヨーハン・ヴァルグレン

Amazon.co.jp で詳細を見るDEN VIDUNDERLIGA KÄRLEKENS HISTORIA (2002)
カール=ヨーハン・ヴァルグレン / 立石光子 訳 / ランダムハウス講談社
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十九世紀初頭のドイツ。同じ吹雪の晩に同じ娼館で二人の子どもが生まれた。一人は愛らしい女の子ヘンリエッテ。もう一人は、世にも醜い怪物エルキュール。肌は奇妙な鱗に覆われ、耳も聞こえず、口も利けない。その代わり、彼には類稀なる力があった――人の心を読むという特別な力が。だが、特異な容姿と能力ゆえに少年は人々から畏れられた。見世物小屋、病棟監禁、悪魔裁判……。数々の受難が襲いかかるなか、彼の生きる希望はただ一つ、「生き別れになった最愛の人、ヘンリエッテにもう一度逢いたい」。愛と憎悪のなかで生きていく心優しき怪物の生涯を描いたスウェーデンの大ベストセラー。 (カバー折込より)

脇役の来歴など本筋とたいして関係ないところは細かく書き込んであるのに、肝心の主人公の描写が物足りず、あまりおもしろくなかった。
エルキュールとヘンリエッテの強い結びつきと深い愛情が物語の核であるはずなのに、その礎となっている共に過ごした子供時代の二人の絆は「説明」されるだけで「描写」されていないので、離れ離れになってしまったヘンリエッテを激しく追い求めるエルキュールの心情が、読んでいる側に実感として伝わってきません。それは、エルキュールがある事件をきっかけに自分に害なしてきた者たちに復讐していく後半部分も同じ。その復讐の様子は細々と書き込まれている反面、エルキュールの憎悪と悲しみが伝わってくる場面がほとんどないもんだから……。そもそも、その主人公のエルキュールにしたって、外面の醜さは細かく描写されているのに対して性格の描写が少ないので、どういう人物なのかいまいち把握しづらい。ヘンリエッテもそう。
19世紀ヨーロッパの文化・風俗・宗教・社会情勢などは結構詰め込んでありますが、それも結局ただの羅列に終わっているので、たいしておもしろいものではありませんでした。

* Tag : 歴史/時代もの  

2007.11.20 23:37 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学

2007. 10. 03

『エノーラ・ホームズの事件簿 ~消えた公爵家の子息~』 ナンシー・スプリンガー

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Case of the Missing Marquess: An Enola Holmes Mystery (2006)
ナンシー・スプリンガー / 杉田七重 訳 / 小学館ルルル文庫
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1888年。14歳の誕生日、エノーラはがく然としていた。母親が突然姿を消したのだ。ロンドンに住む兄マイクロフトとシャーロックに助けを求めるが、マイクロフトはエノーラを寄宿学校へ入れることに決めてしまう。反発したエノーラは、母親が残していった暗号を解き、それをもとにロンドンへ向けてこっそりと旅立つ。途中、バジルウェザー公爵の跡取り息子・テュークスベリー侯爵が誘拐されたという話を聞きつけ、自分がこの事件を解決してやろうと意気込んだエノーラはバジルウェザー邸を訪ねていくが……。

シャーロック・ホームズの年の離れた妹・エノーラが主人公のヴィクトリア朝冒険物語。
私は作者以外の書いた派生作品にはさほど興味がないので、ホームズのパスティーシュやパロディもあまり読まないのだけど、これはファンタジーのベテラン作家スプリンガーが書いたということで興味を持って読んでみたんですが……。

こんな始末におえない身内(奇矯な母親・はねっ返りの妹)がいたら、ホームズ兄弟が女嫌いになるのも無理はない……と納得できるお話(笑)。もっともマイクロフトはガチガチの石頭、シャーロックは少女マンガのキャラクターみたいで、ドイルが書いたのとは程遠い二人になっちゃってますが。
ミステリー部分は、いい意味でも悪い意味でも「ローティーン向け」っぽい。題名になっている侯爵(といってもまだ12歳の少年)誘拐事件は後半になってから出てきて(前半はエノーラ母の失踪と暗号解読関連)、成り行き上でたまたま解決したようなもので、エノーラの素晴らしい推理力で見事解決!って感じじゃありません。なのに、人捜しが自分の天職だと(事件が解決してもいないときから)確信し、結末部分では事務所まで開いてしまうエノーラは電波無茶だとしか思えない。他にも、飛躍的で突飛な考え方をすることの多いエノーラにはついていけないや……。あと、随所に挟まれるヴィクトリア朝社会に対する批判が、言いたいことはわからなくもないけれど表面的すぎるし、ちょっと鬱陶しい。(というわけで、シリーズが続くような終わり方をしているんだけど、続編 の翻訳が出ても読まないと思う)

ところで、裏表紙のあらすじ紹介に「気の詰る貴族教育から抜け出した彼女が…」(彼女=エノーラ)とあったので、「あれ、ホームズさん家って貴族じゃなかったよな……」と不安を抱きつつ読み始めたのですが、本文中ではホームズ家は「地主」ということになってました。(母親が「レディ・ユードリア・ヴァーネット・ホームズ」と呼ばれているので、亡くなった父親はナイトだったという設定なのかな?)

* Tag : 歴史/時代もの  

2007.10.03 19:23 | Comments(0) | Trackback(0) | YA&児童書

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