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* Tag : 「論創海外ミステリ」の記事
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2010. 04. 11

3月に読んだ本

3月に読んだ本のまとめ~。
個別に感想書いた本は省いてあります。
3月は読了冊数がいつもより少し多めでした。仕事がちょっと忙しかったんだけど、そういうときのほうが、かえって読書にも集中できるのかもしれない。


林檎の庭の秘密 (イソラ文庫)
Garden Spells (2007)
サラ・アディソン・アレン / 早川書房 2010-01

各要素がわりとあっさりと書かれているので、もう少しみっちり書き込んでもいいのでは、とも個人的には思うんだけど、これくらいのバランスがちょうどいい匙加減なのかも。雰囲気がいい。時間のある休日にのんびり楽しむのによい本。


グランダンの怪奇事件簿 (ダーク・ファンタジー・コレクション)
The Phantom-Fighter (1966)
シーバリー・クイン / 論創社 2007-01

オカルト探偵ジュール・ド・ラングダンものの初期(25~35年)の自選短篇集。実は人間がトリック使ってました、なんてのはなくて、超常現象的な真相のものばかり。


とざされた時間のかなた (海外ミステリーBOX)
Locked in Time (1985)
ロイス・ダンカン / 評論社 2010-01

父親の再婚相手の家族に会うため、アメリカ南部へやってきた17歳の少女ノア。一家は「風と共に去りぬ」を思わせるような屋敷で暮らしていたが、美しい継母と義理の兄妹たちには恐ろしい秘密があった……。エドガー賞YA部門ノミネート作だそうだけど、ちょっと超常的要素も混じっているというか、ちょっとホラーチックというか。ヴードゥー。ちなみに、作者は映画「ラストサマー」の原作者なんだそうだ。


ルーフワールド (ハヤカワ文庫 FT)
RoofWorld (1988)
クリストファー・ファウラー / 早川書房 1990-04

あちこちの建物に張り巡らされたワイヤーを伝い、夜のロンドンの屋根の上を自由に飛び回って暮らす集団がいる……というちょっと異色な設定の、幻想的な冒険小説。今度ロンドンへ行く機会があったら、思わず頭上を見上げてしまいそう。しかしそんなことをしていると惨殺死体が降ってくる(!)という、オカルトチックな秘密結社との抗争の話でもある。おもしろかった。
ちなみに「NY進出したい」という会話が出てくるのだが、それって、スパイダーマンとキャラ被りそうじゃない?


陰陽師 天鼓ノ巻
夢枕獏 / 文藝春秋 2010-01

いつの間にか出ていた、陰陽師の最新刊。内容はいつもどおりだけど、博雅は晴明にも作者にも読者にも愛されてるよなあ、としみじみ。


天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫)
アルフレッド・エドガー・コッパード / 光文社 2009-12


記憶をなくして汽車の旅 (創元推理文庫)
Great Black Kanba (1944)
コニス・リトル / 東京創元社 2007-08

オーストラリア出身の姉妹作家による、オーストラリア横断鉄道が舞台のミステリ。女主人公が記憶喪失になっているせいか、なんとなく話がつかみづらかった。そもそも、故人には妻や息子がいるにも関わらず弟が全財産を相続したという前提が、どうしてそういうことになったのかよくわからない話だ。


バートラム・ホテルにて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
At Bertram's Hotel (1965)
アガサ・クリスティー / 早川書房

NHK-BS2で放送されたドラマ「ミス・マープル3」の「バートラム・ホテルにて」を観たあと、「原作はどうだったかな」と思って再読。原作の内容はよく覚えてなかったんだけど、ドラマのあまりの改変ぶりにビックリ。被害者がホテルメイドでもなければ、客室を物色するホテルメイド探偵なんてのも(もちろん)出てこない。しかし、最後に○○起こすのって犯人だったと記憶していたんだけど、別の人だったわ……。


メリリーの痕跡 (論創海外ミステリ)
The Traces of Merrile (1966)
ハーバート・ブリーン / 論創社 2009-04

人気絶頂の映画女優メリリー・ムーアの極秘警護のため、ニューヨークからイギリスへ向かう豪華客船に乗船した新聞記者。しかし殺人が起き……という客船ミステリ。ハーバート・ブリーンを読むのは『ワイルダー一家の失踪』に続いて2冊目だったけど、どうも相性が悪いようだ。
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* Tag : 論創海外ミステリ  アガサ・クリスティ  

2010.04.11 14:51 | Comments(0) | Trackback(0) | その他の話題・雑記

2008. 07. 26

6月に読んだ海外ミステリ3冊

感想書いていない本が溜まりに溜まっているんだけど、いちいち一作品ずつ感想を書く気にもなれないので、まとめて行きます。
まずは6月に読んだ本、ミステリ編。

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ワトスンの選択 (海外ミステリGem Collection 14)
Watson's Choice (1955)
グラディス・ミッチェル / 佐久間野百合 訳 / 長崎出版

「シャーロック・ホームズ生誕百周年記念」に銘打たれた仮装パーティー。ユーモアに溢れたこの余興はせまりくる殺人事件の幕開けにすぎなかった。女性探偵ミセス・ブラッドリーの推理が冴えわたるスプーフ・ミステリの代表作。 (帯より)

枝葉の部分が多い上に、真相は肩透かしなのだけど、それがG・ミッチェル特有のオフビートのせいなのか、それとも単に作品の出来が良くないだけなのか、よくわからない。
でも、ホームズ関連という取っ付きやすさはあるし、ミセス・ブラッドリーも比較的大人しめなので、G・ミッチェルの作品としては読みやすいんじゃないかと思う。
ついでに、今月の論創海外ミステリの新刊はミッチェルの 『タナスグ湖の怪物』。最近、ミッチェルも次々と翻訳されていますね。

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論理は右手に (創元推理文庫 M ウ 12-3)
Un Peu plus loin Sur la Droite (1996)
フレッド・ヴァルガス / 藤田真利子 訳 / 東京創元社

パリの街路樹の根もとに落ちていた犬の糞から出た人骨。元内務省調査員の変わり者・ケルヴェレールは、独自の調査を開始する。若い歴史学者マルク=通称聖マルコを助手に、彼はブルターニュの村の犬を探り当てる。そこでは最近老女が海辺で事故死していた。骨は彼女のものなのか?ケルヴェレールが、聖マルコ、聖マタイとともに老女の死の真相に迫る。“三聖人シリーズ”第二弾。 (裏表紙より)

シリーズ1作目 『死者を起こせ』 が面白かったので、6年ぶりの翻訳となるこの2作目を楽しみにしていたんだけど、どうもイマイチだった。本格ミステリ的にもキャラクター的にも。
でも、訳者あとがきを見ると、3作目も翻訳されるっぽいので、それに期待。できれば、次作はあまり間が空かないうちに翻訳してもらいたいなあ。

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ノヴェンバー・ジョーの事件簿 (論創海外ミステリ 71)
November Joe: The Detective of the Woods
ヘスキス・プリチャード / 安岡恵子 訳 / 論創社

カナダの森林地帯で鹿狩りのガイドをつとめる青年ノヴェンバー・ジョー。森が生んだ申し子と言われるほど狩猟に長けた彼は、地方警察に協力する名探偵でもあった。大自然のなかで起こる九つの事件にジョーが挑む。「カナダの森のシャーロック・ホームズ」の異名をとる名探偵の事件簿。『クイーンの定員』にも選ばれた本書を「ホームズのライヴァルたち」第三弾として刊行する。 (カバー折込より)

ノヴェンバー・ジョーが大自然のなかに残された痕跡を追って犯人に辿りつくというのが基本で、ややワンパターン気味。
ところで、先日、ドロシー・L・セイヤーズの「探偵小説論」(創元推理文庫 『顔のない男』 収録)を読み返していたら、こんな記述があった。
一八二〇年から一八五〇年にかけて、フィルモア・クーパーの小説は大人気を博するようになった。(中略)クーパーは、『開拓者』や『鹿殺し』や『モヒカン族の最後』など一連の作品で、足跡をたどったり、折れた小枝、木の幹に生えた苔、落ち葉の様子を観察したりして、インディアンが獲物を追い詰める手堅い方法を紹介し、欧米の青少年を熱狂させた。(中略)クーパーに追随し、そのまねをするのをよしとしなかった作家たちはもっといい方法を考え、森林地の狩人たちのロマンスを自国の環境に移し変えることにした。一八六〇年代になると、少年時代にフィルモア・クーパーを読んだ世代が、作家や読者として、自分たちの国の荒野で犯罪者の臭跡を追うようになった。 (p330)
ということは、「カナダの森のシャーロック・ホームズ」なんてキャッチフレーズを付けられているけれど、この作品は、ホームズの系譜というよりも、フィルモア・クーパーの子孫なのでは?

* Tag : 論創海外ミステリ  

2008.07.26 19:10 | Comments(2) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2008. 04. 17

『灰色の女』 A・M・ウィリアムスン

Amazon.co.jp で詳細を見るA Woman in Grey (1898)
アリス・ミュリエル・ウィリアムスン / 中島賢二 訳 / 論創社
論創海外ミステリ73
[ Amazon ]

アモリー家に伝わる由緒ある屋敷、ローン・アベイ館。二十年前に元女中頭によって買い取られたが、七年前にその老女は時計塔の中にある自分の部屋で殺され、それ以後、館は荒れるがままで、老女殺しの犯人として逮捕され獄中死した若い娘の幽霊が出るという噂が囁かれていた。館を買い取ることになった叔父アモリー卿のために下見にやって来た青年テレンス・ダークモアは、誰もいないはずの時計塔で、灰色の服を着た謎めいた美女・コンスエロと出会う……。

黒岩涙香が翻案し、さらに江戸川乱歩がリライトした 『幽霊塔』 の原作――だそうなんだけど、両方とも読んでいない私にとってはそれにはあまり関心がなくて、この本を手に取ったのも、単にヴィクトリア朝に書かれたゴシック・スリラーに飢えていたからなのよ。
題名からしてウィルキー・コリンズの 『白衣の女(The Woman in White)』 を意識しているらしいことが見て取れますが、コリンズやレ・ファニュのスリラーの亜流と言うべきか、さらに通俗的にして、おどろおどろしさを強調し、けばけばしくしたような感じ。けばけばしいと言うのは、謎めいた美女・老婆殺し・幽霊・暗号・首なし死体・密室からの人間消失・監禁・毒薬・目の光る肖像画・壁を這いずりまわる手・仕掛けのあるベッド・偽の電報etc.……と、よくもまあここまで次から次へと詰め込んだもんだと感心してしまうくらい、ゴシック・スリラーの定番アイテムの大バーゲン状態だから。この手の小説は当時「センセーション・ノベル(扇情小説)」と呼ばれていたようだけど、納得のいく呼び名ですね。
あと、この物語を素直に楽しめなかったのは、主人公テレンス(とコンスエロにも)に好感を持てなかったのも大きいと思います。美しい女性に惚れ込んで周囲や物事を冷静に見ることができなくなり、彼女の言うことを盲目的に信じ込むことを騎士道精神だと勘違いする若い男ほど、物語の語り手として鬱陶しく、始末に負えないものはない。しかも、こいつ、婚約者のポーラをコンスエロと比較して、眉に個性が感じられないだとか、耳たぶが厚すぎるだとか、延々と一ページにも渡ってポーラの容姿に細か~くケチをつけ続けるんですよ、もうドン引きですよ。自己中で腕力に物を言わせるようなところもあるし、なんでこんな男をポーラもコンスエロも好きになるのか理解できんわ。顔かよ。
ただ、○○○○ネタには結構ビックリだったなあ。謎解き的な驚きではなく、この時代にもうこれがあったのか、という驚きで。
[追記: その後、セイヤーズの「探偵小説論」を読み返していたら書いてあったんだけど、○○○○ネタは、レ・ファニュが "Checkmate (1871)" という未訳の作品で使っているそうだ]

* Tag : 論創海外ミステリ  

2008.04.17 23:38 | Comments(0) | Trackback(0) | 海外文学-19世紀

2008. 02. 18

『ビーコン街の殺人』 ロジャー・スカーレット

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Beacon Hill Murders (1930)
ロジャー・スカーレット / 板垣節子 訳 / 論創社
論創海外ミステリ72
[ Amazon ]

ビーコン街に住む株成金の男サットンの屋敷に招待された弁護士アンダーウッド。夕食の席には、サットンの家族の他に、ボストン社交界の花であるミセス・アーンセニイの姿もあった。夜も更けてアンダーウッドが帰宅しようとしたとき、屋敷に銃声と女性の悲鳴が響き渡る。皆が二階の一室に駆けつけると、サットンが心臓を撃ち抜かれて死んでいた。部屋の中にはミセス・アーンセニイがおり、傍らのテーブルの上にピストルが。他に部屋に出入りした者は誰もおらず、ミセス・アーンセニイに容疑がかけられるが……。

ロジャー・スカーレットのデビュー作。連続して起きた二つの不可能犯罪に、西太后由来の非常に高価な翡翠のペンダントの消失が絡んできます。探偵役は他の作品と同じくボストン警察のノートン・ケイン警視、助手役は語り手アンダーウッドとモートン巡査部長。
「陰気な屋敷で嫌われ者の当主が殺される」というスタイルは、第一作から既に確立されていたんですねー。屋敷の人々(主に被害者の親族)の不気味さというスカーレット特有の雰囲気もしっかり出ています。
トリックはあまりパッとしない&かなり無理があるような気がするけれど、伏線やミスリーディングなどはなかなかよく出来ているんじゃないかと思います。多少強引なところも気になるものの、全体としては楽しく読むことができました。

これで、スカーレットの全5作品のなかで新訳(完訳)がないのは2作目 "The Back Bay Murders" だけになりましたねー。それの刊行も期待しております>論創社さま。

* Tag : ロジャー・スカーレット  論創海外ミステリ  

2008.02.18 23:52 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2007. 10. 25

『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』 ウィリアム・ブリテン

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Man Who Read John Dickson Carr and other stories (1965-1978)
ウィリアム・ブリテン / 森英俊 訳 / 論創海外ミステリ68
[ Amazon ]

J・D・カーに捧げる密室殺人 傑作パロディ全14編
ホームズ、ポワロ、フェル博士、クイーン、ブラウン神父、ネロ・ウルフ、サム・スペード、メグレ……名探偵、揃い踏み! (帯より)

ミステリ・マニアたちがそれぞれお気に入りの作家・名探偵に関する知識をフル活用して事件を解決する(もしくは犯罪を企てる)、「…を読んだ~」シリーズ全11篇を含む短篇集。
うーん、楽しいことは楽しいんだけど、一作一作は小粒というか、ちょっと物足りなく思えました。でも、表題作の「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」だけは、文句なくケッサクだ(笑)

「ジョルジュ・シムノンを読んだ男」のメグレ警視が懐かしかったです。高校の図書室に河出文庫版が並んでいて、何作か読みました。あれ、全部で50冊も出てたのか……。

* Tag : 論創海外ミステリ  

2007.10.25 23:19 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2007. 06. 05

『停まった足音』 A・フィールディング

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Footsteps That Stopped (1926)
A・フィールディング / 岩佐薫子 訳 / 論創社
論創海外ミステリ52
[ Amazon ]

タンジ夫人という三十五歳の女性が、自宅の一室で心臓を銃弾で撃ち抜かれて死んでいるのが発見された。傍らには彼女の指紋のついたリボルバーが落ちており、争った形跡はない。自殺か事故か、それとも殺人か。屋敷のメイドは、事件直前に庭を歩いていたタンジ夫人の背後で不審な足音がしたと言う。金に困っている夫のタンジ、コンパニオンのミス・ソーンダーズ、前夫の従兄弟ヴァードンなど、怪しげな行動を取る周囲の人々。スコットランド・ヤードのポインター主任警部、地元の警察署長のハヴィランド警視、保険会社から依頼を受けた有名新聞記者ウィルモットの三人が事件の調査に当たるが…。

イギリスの女性作家の作品。
あまり期待せずに読んだのだけど、これはびっくりした。犯人の意外性がすごい。実は「この人が犯人だったらおもしろいのになあ」と思いつつ読んでいたものの、まさかその通りだったとはね。(犯人の動機に関しては、もっと早い時点で提示することができたし、また、そうしたほうがよかったんじゃないかと思う)
しかし、物語処理があまりうまくないように思えます。話を作りすぎているせいでごちゃごちゃしているし、事件関係者たちがなぜ不審な行動を取ったのかという理由の数々も無理にこじつけたように感じられる。あと、「偶然」の要素も多用しすぎ。
探偵役のポインター警部は、基本的には地道な捜査をこなす地味な存在ですが、事件解決のためには不法侵入や詐欺まがいの行為などどんな手でも使ったり(登場人物のひとりに「やつが証拠をつかむためにとる手段ときたら、どんな犯罪者よりも悪辣だ」とまで言われている)、北アフリカの長老から大変高価な「グル・ナッツ」を彼の助力のささやかな礼としてもらったという妙な過去があったりと、一風変わった人物でもあります。で、「グル・ナッツ」って何?

* Tag : 論創海外ミステリ  

2007.06.05 23:51 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 12. 08

『六つの奇妙なもの』 クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ

Amazon.co.jp で詳細を見るThe Six Queer Things (1937)
クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ / 水野恵 訳 / 論創社
論創海外ミステリ57
[ Amazon ]

冷酷な伯父と暮らす若い娘マージョリーは、喫茶店で知り合ったマイケル・クリスピンと妹ベラからマイケルの助手として働かないかと誘われる。伯父のもとから逃げ出したくて申し出を受けたマージョリーだったが、実はクリスピンは霊媒で、屋敷で夜な夜な降霊会を開いていた。やがてマージョリーは降霊会の妖しい魅力に絡めとられ、自らも霊媒として能力を発揮するようになるが、度重なる幻覚や意識の喪失に悩まされ、精神の安定を欠いていく。一方、マージョリーを救い出そうと元婚約者のテッドは降霊会に潜りこむが、テッドが手渡したコップの水を飲んだクリスピンが急に苦しみだして息絶えてしまう…。

不可能犯罪(テッド以外にコップの水に毒を混入できた人物はいない)のフーダニット&ハウダニットものかと読む前は思っていたのだけど、ちょっと違っていた。なんて言ったらいいんだろう…心理スリラー?
ヒッチコックの映画にありそうな感じの話、というのがいちばんの印象。精神的に追い詰めていくところとか、黒幕の正体とか、意外な裏切り者とか、逃亡劇とか。モノクロの映像が目に浮かぶようだ。

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2006.12.08 23:26 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 10. 28

『絞首人の一ダース』 デイヴィッド・アリグザンダー

Amazon.co.jp で詳細を見るHangman's Dozen (1961)
デイヴィッド・アリグザンダー / 定木大介 訳 / 論創社
論創海外ミステリ55
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EQMMコンテストで第二席を獲得した、著者の短編代表作「タルタヴァルに行った男」、自殺した妹の復讐を誓う青年を描き、読後に深い感慨を誘う「優しい修道士」、最後の一行で見事に謎が解ける「悪の顔」など、名手アリグザンダーの短編を十三編収録。人間の本質を突く視線、多彩なアイデア、見事な構成、余韻の残る結末。スタンリー・エリンが絶賛した珠玉の短編群をここに刊行。エリンによる序文つき。

これはよかったなー、粒揃いの名短篇集。バラエティに富んだ内容・ユニークな設定の数々・ラスト一文で明らかになる意外な結末・しんみりとさせる人物描写で、早川の異色作家短篇集や(今はなくなってしまったけど)晶文社ミステリに入っていてもおかしくない感じ。
特に印象的だったのは、なんともやるせない「優しい修道士」、思いもかけぬ展開にびっくりの「空気にひそむ何か」、歴史的犯罪者たちが登場する設定がおもしろい「向こうのやつら」(切り裂きジャックネタがウケました)。

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2006.10.28 23:38 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 08. 02

『陶人形の幻影』 マージェリー・アリンガム

Amazon.co.jp で詳細を見るThe China Governess (1963)
マージェリー・アリンガム / 佐々木愛 訳 / 論創社
論創海外ミステリ25
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名門キニット家の跡取りである青年ティモシーは、最愛の女性ジュリアと婚約間近だったが、自分がキニット家とはまったく血のつながりがないことを知らされて衝撃を受ける。自分の出自を突き止めようと行動を始めたティモシーだが、行く先々で不可解な出来事が起こり…。

毎回「地味だ」「地味だ」と言いながら、なぜかついつい読んでしまうアリンガム。
でも今回、意外な展開を見せる終盤まで読んで、やっとアリンガムの魅力の一端がつかめたような気がした(もっとも「探偵小説」としてではなく「小説」として、だけど)。原題の "The China Governess (家庭教師の陶人形)" が予想外な意味を持って再登場し、またそれまでの登場人物たちの性格描写が伏線となっていたことがわかる、そのあざやかさにはハッとさせられました。
ただ、それまではティモシーが自分の出自を突き止めようとする普通小説の趣が強く、1963年に書かれた作品にしては時代錯誤な話だな、と思ってしまう(いくらイギリスが現在も階級社会だとはいえ…。ついでに、明らかになるティモシーの出自についてもなんともヴィクトリア朝小説風)。また、特権階級意識に凝り固まったキニット家の人々、押し付けがましくて騒々しいティモシーの元ナニーのブルーム夫人など、登場人物はうっとうしい人たちばかりで、唯一まともなジュリアの存在が清々しく感じられる。
ついでに、この作品、一応アルバート・キャンピオンものなんですが、例によって、キャンピオンはあっちへ行ったりこっちへ行ったりしているだけ。


刊行がのびのびになっていた国書刊行会の 『屍衣の流行』 は、9月に発売が決まったみたいですね。藤原編集室さんのところで表紙画像も見られるようになってる。またついつい読んでしまうことになるんだろうけど(笑)、「世界探偵小説全集」「代表傑作」ということでちょっと期待。

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2006.08.02 23:57 | Comments(4) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 07. 17

『死の舞踏』 ヘレン・マクロイ

Amazon.co.jp で詳細を見るDance of Death (1938)
ヘレン・マクロイ / 板垣節子 訳 / 論創海外ミステリ51
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12月、雪のニューヨーク。その夜、一体の異様な死体が発見された。雪のなかに埋まっていた若い女性の死体は、なんと熱かったのである! 精神科医ベイジル・ウィリング博士が捜査に乗り出し、娘のお披露目パーティにすべてをかける義母や軍需品会社の経営者、ゴシップ記者といった人物による無意識の行動をつぶさに検証する。その先に浮かぶ恐るべき意図とは? サスペンスや短編にも長けたマクロイのデビュー作にして、傑作本格。ベイジル・ウィリング初登場作品、ここに刊行。

マクロイって、デビュー作からなかなか高レベルの作品を書いていたんだなあ。
冒頭から、雪の中の熱を帯びた死体という奇妙な謎、さらにそれに追い被せるように被害者の正体をめぐる陰謀話を連続技で繰り出して、読者の興味をがっちりと掴んでしまう。それに比べると容疑者ひとりひとりを順番に取り調べていくその後の展開はやや平板だし、ちょっと強引な部分もあるけど、犯人の正体とその動機は意外性十分(でも、ちゃんと細かな伏線は張られているんだよね)。
しかし、これは原書で読まないといけない作品ですね。

ところで、論創社さんはこの後のマクロイの未訳作品も訳してくれる予定はあるのでしょうか? ベイジル先生とギゼラが出会う事件の話とか読んでみたいよー。

* Tag : 論創海外ミステリ  

2006.07.17 23:51 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 05. 01

『死のバースデイ』 ラング・ルイス

Amazon.co.jp で詳しく見るThe Birthday Murder (1945)
ラング・ルイス / 青柳伸子 訳 / 論創海外ミステリ44
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脚本家ヴィクトリアの再婚相手は、映画プロデューサー。二人の共同作業となる映画の企画も着々と進行し、順風満帆と思われていたのだが…。ヴィクトリアの誕生日当日の朝、夫は客間で死んでいた。死因は毒殺。同じく毒殺死を題材とする新作を書いた彼女に疑惑の目が向けられた。事件は、悲劇と呼ぶにふさわしい結末を迎える。古典五十傑にも選ばれた、本邦初紹介作家の傑作本格ミステリ。

訳のせいで、話の内容に集中できなかった……。訳が下手、というくらいなら読んでいるうちに慣れてくるけど、翻訳者の自己主張が激しすぎる訳文で、最後まで気になって気になって仕方がありませんでした。
何の脈絡もなくオネエ言葉や大阪弁をしゃべらされる登場人物が出てくるのはまだ序の口。「てにをは」が省略され、句読点でぶつ切りにされた会話文(特に主人公ヴィクトリアを始めとする女性陣)。自然な会話文を目指したつもりなのかもしれないけど、「~なんだけどな」「~じゃないかな」多用もあいまって、34歳のやり手の脚本家のはずのヴィクトリアが、まるで舌っ足らずの女子高生みたい。他にも「むかついた」などの若者言葉が使われている一方で、「会ってびっくり玉手箱」「よろめき」など、いつの時代だよ、と思ってしまうような言葉が出てくる。
とにかく、「軽快で読みやすい、いまどきの訳文に」と張り切った挙句やりすぎてしまった、という印象。現代のコージーミステリーとかならともかく、60年も前の作品なのだから別に「今っぽく」訳す必要なんてないのに。そもそも、論創海外ミステリを手に取る人たちというのは、カビの生えたような古めかしい訳文にも慣れきっているような人ばかりだろうしね……。

作品自体についての感想は書かないでおきます。他の翻訳者の訳で読んでいたら、作品のイメージ(特に登場人物たちのイメージ)が大きく異なっていたのではないか、と思えて仕方がないので。
この作品は、ロサンゼルス市警のリチャード・タック警部補を探偵役としたシリーズのなかのひとつで、他の作品も翻訳の予定があるらしいけど、その際には訳をどうにかしてください……。

* Tag : 論創海外ミステリ  

2006.05.01 23:54 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 04. 25

『レディ・モリーの事件簿』 バロネス・オルツィ

Amazon.co.jp で詳しく見るLady Molly of Scotland Yard (1910)
バロネス・オルツィ / 鬼頭玲子 訳 / 論創海外ミステリ45
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私の大好きな歴史冒険活劇 『紅はこべ』 の作者、海外ミステリ好きには 『隅の老人の事件簿』 で有名なバロネス・オルツィの、ミステリ史上初の女性警察官探偵レディ・モリーの活躍を描いた全12編の連作短篇集。(ちなみに、現実の世界で女性が警察に採用されるようになったのは、この作品が発表された4年後。犯罪捜査に加われるようになったのは1920年のことだそう)

「ホームズのライヴァルたち 第一弾」という副題がついているのですが、その名の通り、シャーロック・ホームズタイプの探偵小説。つまり、探偵が一足飛びに謎を解いてしまい、読者には真相に辿り着けるだけのヒントが与えられていない、というやつ。まあ、途中でなんとなく見当がついてしまう話が多いんだけど。レディ・モリーの助手である記述者メアリーの立ち位置もワトソンによく似ています。(しかし、このメアリーのレディ・モリーに対する賞賛っぷりがやたら大げさだったりする)
探偵役が女性であるためか、女性が中心的役割を果たす(被害者であったり犯人であったり姉妹で遺産争いしたり)事件の話がほとんどです(さらに、最後の二編はレディ・モリー自身が深く関わっている事件で、彼女の素性やなぜどのようにスコットランド・ヤード婦人捜査課(これは架空の部署)の捜査官となったのかもそこで明かされている)。紅はこべシリーズを読んでいると、オルツィは女性のちょっとした欠点だとか弱い部分を誇張したり取り繕ったりせずに率直に描写する作家だなーと感じさせられるのですが、その冷静な視点はこの連作短篇でも窺えるように思えます。
「レディ・モリーがはったりをかけて犯人に自白させる」というのが多くて、ちょっとワンパターンではあるけれど、『隅の老人』 よりは好きだな、このシリーズ。


ところで、警察官・私立探偵・素人探偵問わず、ミステリ史上初の女性探偵が登場する作品って何なんだろう? 私が知る限りでいちばん古いのは、昔の事件を調べ直す若い女性が主人公のウィルキー・コリンズの 『法と淑女』 (1875年)なんだけど。

* Tag : バロネス・オルツィ  論創海外ミステリ  

2006.04.25 23:21 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 03. 15

『つきまとう死』 アントニー・ギルバート

Amazon.co.jp で詳しく見るAnd Death Come Too (1958)
アントニー・ギルバート / 佐竹寿美子 訳 / 論創社
論創海外ミステリ39
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弁護士アーサー・クルックは、疑惑の渦中の人物としてルース・アップルヤードの名を三度聞いた。一度目は実父から毒殺未遂で訴えられた被告として、二度目は不審な事故死を遂げた男の未亡人として。そして今度は嫌われ者の大金持ちの老女の話し相手に雇われ、老女が親族を差し置いてルースに多額の遺産を残そうとしたとき、再び事件が起こった。果たしてルースは殺人者なのか、それとも限りなくクロに近いシロなのか…?

アントニー・ギルバート(男性名だけど女性作家)の弁護士探偵アーサー・クルックもの。
世界探偵小説全集の 『薪小屋の秘密』 がなかなかおもしろかったので、これも読んでみようと思ったんですが……あーあ、私の嫌いな方向へ行っちゃった…。要は「ルースはクロか、それともシロか」という話で、ギリギリまでその尻尾を掴ませないところはさすがなんだけど…。
【以下、ネタバレにつき反転】 「限りなくクロに思える怪しい美女、しかし実は無実の薄幸の女性でした」だなんて、おもしろくないんだようー。私は最初から最後まで真っ黒な悪女の話を読みたいんだよ! …って、結局、個人的好みの問題に過ぎないんだけど。
全体的に、『薪小屋の秘密』 とよく似た印象を持ちました。事件が起こるまでの人間関係の描写に物語の約半分を費やしているあたりとか、一つの言葉に二重の意味を持たせているところとか、中年独身女性に対してはキッツイところとか…。

とりあえず、ここまで「殺されても自業自得だ」と思える被害者というのは、最近読んだ推理小説のなかでも珍しい。

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2006.03.15 23:54 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 02. 24

『看護婦への墓碑銘』 アン・ホッキング

Amazon.co.jp で詳しく見るEpitaph for a Nurse (1958)
アン・ホッキング / 鬼頭玲子 訳 / 論創社
論創海外ミステリ35
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セント・ヒラリー病院の主任看護婦ジェシカ・ビッグズ。非常に優秀ではあるが、もうすぐ四十歳になる彼女は将来の生活に対する不安から結婚をあせっていた。やっとおとずれた結婚のチャンスをものにするために資金が必要となったビッグズが思いついたのは、病院で見聞きした情報を利用して患者たちを恐喝し、大金を巻き上げることだった…。

比較的短くて、どちらかといえば地味な話なのに、もやもやと妙に嫌な読後感の残る作品でした。著者が結婚をあせるビッグズ看護婦に向ける情け容赦のない冷ややかな視線と、若いカップルたちに対するぬるさとの温度差が、いちばんの原因かな。
前半は将来への不安から恐喝に手を染めていく看護婦の姿を描いたクライム・ノベル風、そして中盤でビッグズが何者かに撲殺され、後半はスコットランドヤードのオーステン警視による犯人探し。しかし、事件の真相・犯人を示す伏線がほとんど張られておらず、「本格推理」という印象は薄いです。

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2006.02.24 23:54 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2006. 02. 11

『ローリング邸の殺人』 ロジャー・スカーレット

Amazon.co.jp で詳しく見るIn the First Degree (1933)
ロジャー・スカーレット / 板垣節子 訳 / 論創社
論創海外ミステリ34
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病気休養中のケイン警視のところへ一人の男が訪ねてきた。ファラデーと名乗ったその男は、友人のアーロン・ローリングに対し周囲の人々が陰謀を企んでいるので助けてやってほしいという。ケインは話を信用せずにファラデーを追い返すが、「HELP ME」とメッセージが書き込まれたアーロンの蔵書が小包で届いた。関心を抱いたケインは、陰気な古い屋敷ローリング邸に下宿人として潜り込む。病気で臥せっているアーロンを取り囲むのは、彼の若く美しい妻、その姉、主治医、不気味な老執事と、怪しげな人物ばかりだった…。

ロジャー・スカーレットのこれまで未訳だった最後の作品。ボストン警察のノートン・ケイン警視もの。
以前読んだ 『エンジェル家の殺人』→感想)よりおもしろかったし、本格ミステリとしての出来もこちらのほうが上なんじゃないかなあ。容疑者の数が少ないうえに使われているトリックはよく見かけるものなんですが、私はケインが犯人を指摘するまでわからなかった。屋敷のなかという狭く閉鎖的な空間、そしてごく限られた登場人物と、ややもすれば弱点となってしまいがちなこの手のお屋敷ものの特徴を、逆に巧く利用しています。また、ローリング邸の不気味さというゴシック的なサスペンスを盛り上げる数々のエピソードが、後で事件の真相の伏線として利いてくるところも見事(その理由がよくわからないままで終わってしまう部分もいくつかありますが…)。
『エンジェル家の殺人』 と並べてみると、ロジャー・スカーレットって、古いお屋敷の不穏な雰囲気を作り出すことに命懸けてます!って感じがするなあ。これでもかこれでもかとばかりに畳み掛けてくる。そして、そのためならば多少不自然な部分が生じてもかまわないという潔さ(?)みたいなものがあるというか…。

最後の二階堂氏の解説は……御自分のサイトにでも書いててください。

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2006.02.11 23:36 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 11. 04

『ヴィンテージ・マーダー』 ナイオ・マーシュ

Amazon.co.jp で詳しく見るVintage Murder (1937)
ナイオ・マーシュ / 岩佐薫子 訳 / 論創海外ミステリ28
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休暇でニュージーランドへやってきたアレン警部は、旅公演中のイギリスの劇団一行と夜行列車で一緒になる。その夜、主演女優キャロリンの夫で劇団オーナーのマイヤーが揺れる列車から突き落とされそうになり、また、新人女優の所持していた大金が盗まれていたことが発覚する。そして翌日、初日公演終了後にキャロリンの誕生日を祝うパーティーが開かれた舞台の上で、天井から吊るされていたヴィンテージ・シャンパンの巨大なボトルが頭上に落下、マイヤーが即死するという事件が起きた。アレンは、キャロリンを驚かせるためにマイヤーが仕掛けた装置に、誰かが細工を加えたことに気付く…。

ナイオ・マーシュの長編4作目、ロデリック・アレン警部もの。
マーシュの作品を読んでいると、「事情聴取シーンが長いのがちょっとタルいなあ…」と思うことがあるのですが(探偵役のアレンが職業警察官だというせいもあるかも ※1)、この作品の場合、あまりにも長すぎる。事件が起きた後のほとんどのページが、事情聴取もしくは現場検証のシーンなんだもの(途中でアレン警部がピクニックに行ったり、マオリ人医師の家に食事に招かれたりもするのだけど、そこでも事情聴取の会話が大半を占める)。その割りに、最後に明らかになる殺人のトリックなどは小粒だし。
ニュージーランド人で演劇の分野でも活躍していたマーシュの「ニュージーランドを舞台にした、劇場で殺人が起きる演劇ミステリ」…という点では、興味深い箇所(イギリス人に対するニュージーランド人の視線だとか)もいくつかあるけれども、事情聴取の場面が延々と続く退屈さを補うまでには至っていないように思えます。
※1 のちの作品になると、事件関係者のひとりが主人公&アレン警部は第三者的立場に、という形式が多いのは、アレン視点では物語に動きが出にくいとマーシュ自身も思うようになったのかもしれないなあ…

でも、マーシュの作品の持つ雰囲気そのものは、やっぱり好きだな。ポンポンと飛び交う軽妙な会話の応酬には、演劇に例えるなら、軽いコメディのような楽しさがあります。
ところで、本作品中でアレン警部たちが何度もある事件のことを話題にしているのですが、訳者あとがきによると、それは長編2作目 『殺人者登場』 の事件のことらしい。なんか、犯人の名前らしきものとかも出てきて、ド派手にネタばれされちゃったっぽいんですけど…。まあいいか、『殺人者登場』 は原書にでも当たらない限り、読めそうもないし…。

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2005.11.04 23:55 | Comments(4) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 09. 15

『醜聞の館―ゴア大佐第三の事件』 リン・ブロック

undefinedColonel Gore's Third Case : The Kink (1925)
リン・ブロック / 田中孜 訳 / 論創海外ミステリ22
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元首相ハビランド卿の屋敷ダイクス・コートから、私信とフィルムが盗み出された。調査を依頼されたゴア大佐は、人格者であるはずの依頼人とその一族に、決して公にはされないもうひとつの顔を垣間見る…。

一見「カントリーハウスで殺人」もの、しかし、その穏やかなイメージとはかけ離れた作品。私、黄金期の推理小説で、乱交パーティーだとかポルノ映画だとか倒錯行為だとかをここまであからさまに描いている作品って、初めて読んだよ……。ちょっとびっくりでした。
巻頭の作品紹介文にも書かれているように、1925年に書かれた作品でありながら現代イギリスミステリにかなり近い感じ。上記の性的描写のはっきりさや内容といい、犯人の動機といい……。文体など、ところどころ「やはり1920年代に書かれた作品だな」と思わせる部分もあるけれど。
ハビラント卿周辺の人々の男女関係が乱れまくっているせいで、ある一組の男女のプラトニックな恋愛が際立ち、とても美しく見えてきます。よく考えてみると、その二人の関係もちょっと歪んでいるんだけどね。

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2005.09.15 23:45 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 09. 12

『ドアをあける女』 メイベル・シーリー

Amazon.co.jp で詳しく見るThe Beckoning Door (1950)
メイベル・シーリー / 板垣節子 訳 / 論創海外ミステリ24
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小さな町ロングメドーで、亡き父の治療費の借金を返すために必死に働くキャシー。ある日彼女の家に、お金持ちで華やかな従姉のシルヴィアが突然訪ねてきた。何か言いたいことがあるようだったが、結局何も言わずに帰ってしまうシルヴィア。数日後、「一緒に解決したい問題がある」と言うシルヴィアに呼び出されて彼女の家に行ったキャシーは、シルヴィアが殺されているのを発見する…。

私好みの作品。
本書の著者紹介には「ラインハート、エバハートの流れを汲む<HIBK>派の作家として活躍した」と書かれていますが、私が連想したのはシーリーとほぼ同世代のシャーロット・アームストロングでした。作品の雰囲気はかなり異なるものの(シーリーのほうがドラマチックでやや感傷的、アームストロングはもう少しサラリとした感じ)、手の届かない人物にかなわぬ想いを寄せる登場人物の切ない気持ちを巧みに描き出しているところがよく似ているように思えます。
主人公のキャシーが証拠品のひとつをとっさに隠してしまったり、ある考えを頑なに信じ込むなど、ちょっとイライラさせられる箇所もあるのですが、キャシーの揺れ動く心を丹念に細やかに描き出すシーリーの筆致は、そんな短所も帳消しにしてくれます。そして、あとがきで訳者も述べているように女性の登場人物がとても生き生きと描かれており、なかでも優れた洞察力と逆境にへこたれない強さを持つキャシーの母親が特に魅力的。また物語の最後で、新しい世界へのドアを開けてくれる「だれか」を待つのではなく、自分の手でドアを開けなければいけないことにキャシーが気付く場面が、よくある話ではありながらも、とても清々しい。

シーリーの作品、他にも読んでみたいなあ。デビュー作 『耳をすます家』 の邦訳が1962年の「別冊宝石」と66年の「ジュニア・ミステリ・ブックス」に収録されているらしいけど…(後者は近隣の図書館にあるみたいだけど、児童書というところからして抄訳っぽい…)

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2005.09.12 23:42 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 07. 21

『贖罪の終止符』 サイモン・トロイ

Cease Upon the Midnight (1964)
サイモン・トロイ / 水野恵 訳 / 論創海外ミステリ15
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村の名士ビューレイ医師が睡眠薬を飲み過ぎ、死を遂げた。検死審問では事故死と判断されるが、周りには常日頃から金の無心をしていた俳優の弟、年の離れた若き婚約者など怪しい人物ばかり。誰一人信用が置ける者がいない中、舞台はガーンジー島にある女子寄宿学校に移り、新たな事件が展開する! 人間の哀しき性(さが)が描かれた心理サスペンス。

主な探偵役は、最初の事件が起こったイギリス南西部シルストーンの事件担当者・スミス警部。
事件の真相には大きなサプライズはないけれど(犯人は途中で明らかにされる)、登場人物たちの心理的駆け引きが緊張感たっぷりに描かれており、その点では読み応えがあった。
ただ、一部の登場人物が、どんなつもりで何を考えて行動しているのか、わかりにくい箇所も多かった。

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2005.07.21 23:24 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 06. 13

『ジェニー・ブライス事件』 M・R・ラインハート

The Case of Jennie Brice (1913)
メアリ・ロバーツ・ラインハート / 鬼頭玲子 訳 / 論創海外ミステリ16
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夫を亡くして、生まれ故郷のピッツバークへ帰ってきたミセス・ピットマン。アレゲーニー川の下流で家を借り、毎年起こる洪水に悩まされながらも下宿を営んでいた。洪水の夜、下宿人のひとり、女優のジェニー・ブライスが行方不明になる。ミセス・ピットマンは、ジェニーの夫ラドリーが夫婦仲の悪かった妻を殺したのではないかと疑う…。

古典サスペンスの女王メアリ・ロバーツ・ラインハートが、自分の生まれたペンシルバニア州ピッツバークを舞台にして書いた作品。
中盤の展開がちょっとかったるいけれど、終盤で明らかにされる事件の真相はなかなか意外なもので、予想以上におもしろかった。

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2005.06.13 23:56 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 05. 29

『断崖は見ていた』 ジョセフィン・ベル

Fall over Cliff (1938)
ジョセフィン・ベル / 上杉真理 訳 / 論創海外ミステリ14
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断崖から男が転落した。事故死という見解に疑問を抱いた医師ウィントリンガムは、男の一族がここ数年謎の事故死を遂げていることを知る。ラストに待ち受ける驚くべき真相に向け、富豪一族を襲った悲劇の幕がいまひらかれる。

ラストに待ち受けていたのは、「(あまりに予想通りすぎることに)驚くべき真相」でした。もうちょっとひねりようもあると思うんだけど…。
おまけに、探偵役の若い医師ウィントリンガムとその妻が、自己満足しきった嫌な人たちで(作者はそうは思っていないようだが)。お互い相手が完璧だと信じて疑わず、始終イチャイチャしているこのバカップルに付き合わされるのは非常に苦痛だった…。

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2005.05.29 23:44 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 04. 24

『アレン警部登場』 ナイオ・マーシュ

A Man Lay Dead (1934)
ナイオ・マーシュ / 岩佐薫子 訳 / 論創海外ミステリ18
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従兄のチャールズとともに、ヒューバート卿の屋敷〈フラントック〉に招待された新聞記者のナイジェル。パーティーの余興として「殺人ゲーム」が催されるが、その最中、ゲームのルールに則った本物の殺人事件が起こってしまう。事件を捜査することになったのは、一見警察官らしからぬスコットランドヤードのアレン主任警部だった。

ナイオ・マーシュのデビュー作。
マーシュ作品の魅力というのは登場人物(事件関係者)たちの生き生きとした描写や人間模様にあると思うのだけど、この作品ではその特徴はまだ薄い。その代わりにアレン警部の捜査場面の比重が大きく、ロシアの秘密組織をめぐる大捕り物劇が繰り広げられたりもするものの、全体的にちょっと平板。
しかし、マーシュが一般的な警察官のイメージを覆す存在としてロデリック・アレンというキャラクターを創作したことがわかる点や、当時の探偵小説に対するマーシュの意見がアレンの口を通して冗談まじりに語られているところはおもしろい。でも、これ一作だけでは、アレンの人物像ってよくわからないな。悠々としていて紳士的だけど、なんだか掴み所がなくて食えない人物って感じだ。
犯行トリックについては、ちょっと無理があるような気がするけど、犯行場面を想像してみると妙に笑える…。

とりあえず、マーシュの長篇第一作を読めただけで、私は満足だわ。(推理小説としての出来は後の作品に期待)
名門出身で外交官だったアレンが刑事に転職したのには個人的な理由がある、と作中である人物が言っていたけど、続編でその理由が語られることはあるのでしょうか?(あるとしたら、その作品は論創社の近刊予定のなかに入っているのだろうか?)

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2005.04.24 23:27 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 03. 31

『検屍官の領分』 マージェリー・アリンガム

Coroner's Pidgin (1945)
マージェリー・アリンガム / 佐々木愛 訳 / 論創海外ミステリ7
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第二次大戦下のロンドン。政府の極秘任務に従事していたキャンピオンは、休暇をとり、途中、自宅に立ち寄って風呂に入っていた。そこへ、使用人のラッグと先代カラドス侯爵夫人が若い女性の死体を運んでくる。その女性はカラドス夫人の息子ジョニーのベットのなかで死んでおり、結婚間近の彼のスキャンダルを避けるために死体をよそに移そうとしたのだという……。

『幽霊の死』 『判事への花束』 を読んで、「地味」だという印象を持っていたアリンガム作品。これも途中までは「こんなにおもしろそうな導入部なのに、なんでこんなに地味になるんだ…」と思いながら読んでいたのだけど、中盤からはなかなかおもしろかった。現カラドス侯爵かつ英国空軍中佐として英雄視されているジョニー、彼を取り巻く人々の人間関係の輪のなかで起こった殺人かと思いきや、予想外の方向へと事件がつながっていく意外性。また、事件も人間関係も、戦時下で書かれた作品ならではといった感じなのが興味深い。
だけど、複雑なトリックや推理がない点は、他のニ作品と一緒。キャンピオンもあっちへ行ったりこっちへ行ったりしているだけで、あいかわらず目立たない地味なキャラだし…。それに、登場人物が次から次へと出てくるわりには、中途半端でもったいなく思える使い方をされている人物が多い。そのへん、もう少し手際よくまとめてあるとよかったのに、と思うのは贅沢かなあ。

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2005.03.31 23:24 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

2005. 01. 15

『トフ氏と黒衣の女』 ジョン・クリーシー

Amazon.co.jp で詳しく見るトフ氏の事件簿 1
Here Comes The Toff (1940)
ジョン・クリーシー / 田中孜 訳 / 論創社
[ Amazon ]

「論創海外ミステリ」第1弾。貴族でありながら貧民街イーストエンドをこよなく愛し、数々の凶悪事件を解決してきたリチャード・ローリソン卿(通称トフ)と、彼と深い因縁を持つ美しい悪女アーマの対決を描いた活劇もの。

あまりおもしろい話ではなかったな……。密度の薄いストーリーがタラタラと展開され、物足りない。
でも、この手のスリラー小説のなかにはおもしろいものもあるので、どんどん翻訳してもらえると嬉しい。

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2005.01.15 23:52 | Comments(0) | Trackback(0) | ミステリ&サスペンス

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読んだ本の感想メモ、気になる本の情報など。翻訳小説が中心です。特に好きなのは、海外古典ミステリと19世紀イギリス文学。
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