2009. 11. 01
『メイク・ビリーブ・ゲーム』 リアノン・ラシター
Bad Blood (2007)リアノン・ラシター 著 / 乾 侑美子 訳 / 小学館 (SUPAR!YA)
2009-08
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親たちの再婚で義理のきょうだいになった、ローリーとキャトリオーナ兄妹とキャスリンとジョン姉弟。しかし折り合いがいいとは言い難く、特に同じ「キャット」の愛称を持つキャトリオーナとキャスリンはいがみあってばかり。そんななか、一家は初めての休暇旅行で湖水地方を訪れる。滞在するのは、キャスリンとジョンの亡き母アンが少女時代を過ごした家で、フェル・スカー屋敷と呼ばれる大きくて古い館だった。そこで、キャトリオーナは「デリラとドローンたち」と名付けられた不気味な人形たちを、キャスリンは秘密の部屋と「メイク・ビリーブ・ゲーム」と記されたノートを見つける。やがて、屋敷のなかや周囲の森で奇妙な事件が次々と起きる……。
邦題の「メイク・ブリーブ・ゲーム」とは「ごっこ遊び」のこと。少女時代のアンが、友人のエミリーとシャーロットとともに行なった「メイク・ブリーブ・ゲーム」が暗い森の恐ろしい力を呼び覚まし、十数年のときを経て、その力が子供たちに襲いかかる。
「新しい家族」というYA的テーマを含んだ、サスペンスホラー。図書館の新刊棚で見かけて何気なく手にとってみたんだけど、私好みの要素も多く、「当たり」だった。デリラがどこまでもキャトリオーナを追いかけてくるところや、キャスリンが秘密の部屋で見つけた本の登場人物たちの名前が消されているところなど、かなりぞっとさせられた。(ホラーで人形が出てくるのって、ホント怖いです)
ちょっと不満だったのは、アンたち三人がなぜこれほどおぞましい空想を生み出し、それに没頭したのか(孤独な少女たちの「遊び」にしては病的すぎるように思える)、その背景があまり深入りせずにさらりと流されている点。
そして、終盤あたりのジョンは出来が良すぎだろ(笑)と思うと同時に、世界各国のジョンさんたちには甚だ失礼な話だと思った。
ちなみに、著者のリアノン・ラシターは、「ストラヴァガンザ」シリーズで有名な児童文学作家メアリ・ホフマンの娘さんなんだそうだけど、親の七光りでないことは確かだろう。
2009. 10. 19
『リヴァトン館』
The Shifting Fog (2006)ケイト・モートン / 栗原百代 訳 / ランダムハウス講談社
2009-10
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老人介護施設で暮らす98歳のグレイス。ある日、彼女のもとを新進気鋭の映画監督が訪れる。1924年に「リヴァトン館」で起きた悲劇的な事件を映画化するにあたり、ただひとりの生き証人であるグレイスにインタビューしたいと言う。封じ込めていた「リヴァトン館」でのメイドとしての日々がグレイスのなかで鮮やかに甦る。ふたりの美しいお嬢様、苦悩する詩人、厳格な執事、贅を尽くした晩餐会――そして、墓まで持っていこうと決めたあの悲劇の真相も。死を目前にした老女が語り始めた真実とは……。 (カバー折込より)
帯の「ゴシック風サスペンス」という文字に見事釣り上げられて、飛びついてみたけれど……最後まで「どこがゴシック風サスペンスなんだろう?」と首をひねりながら読み終えることになりました。
私の偏見と独断で言わせてもらえば、「ゴシック風サスペンス」とはちょっと違うと思うんだけどなー。
「悲劇の事件」――ハンナとエメリンの令嬢姉妹が目撃した詩人ロビーの自殺の真相、というミステリーは終盤まであまり前面に出てこず(冒頭からあまり興味を惹きつけられる謎でもないし、その事件の真相と過程も正直言って陳腐だ)、第一次世界大戦によって、個人が、社会が、上流階級が、使用人たちの世界が大きく変わりゆくさまが、メイドであるグレイスの眼を通して語られる、というのが物語の中心となっています。
しかし、その時代背景描写をこなしていくことに筆をとられてしまっている印象があり、ちょっと表面的な話に感じられたというか、もう少し物語世界の奥行きみたいなものが欲しかった。
ちなみに、この作品はオーストラリアの作家のデビュー作で、訳者あとがきによると、2作目は東京創元社から刊行予定があるとのこと。
2009. 10. 04
上海旅行
先週末に、上海へ旅行にいってきました。
蘇州観光(留園、運河遊覧など)もセットになった、3泊4日の格安ツアーで。
上海は、人もめちゃくちゃ多くて、かなりの都会に感じられました。
奇抜な形の超高層ビルが秩序も何も関係なしに乱立していて、なんだか映画の世界のような景観。
でも、その足元を見ると、古い家があって、洗濯ものがあられもなく干してあったり、食べ物屋の軒先の白いプラスチックのテーブルで朝食をとっている人がいたり、ボロいバイクや自転車の大群が走り回っていたり、とっても庶民的。
そのギャップが、不思議でおもしろいところでした。
※左の写真は、東方明珠塔(上海のテレビ塔)と、上海ヒルズ(中央奥のビル)です。(適当に画像縮小したら画質悪いなあ……。夕方だから画面暗いし)
上海では来年、万博が開かれることもあって、あちこちで工事しまくってました。
びっくりしたことには、泊まったホテルも、エントランス部分がまだ工事中だった……! 去年末に開業したばかりという触れ込みでしたが、デラックスクラスなのに格安なのにはこういう理由があったのか(笑)。客室や朝食バイキングはなかなか良かったけど。
毎朝、手作業ながら着々と工事を進めているのを横目にみながら、移動用のバスに乗りこんでました。
これから上海へ行くなら、万博に会わせて行くか、終わってからのほうがいいと思う。
食事はあまり期待していなかったのですが(中国の料理はあまり口に合わなかったと北京へ旅行した人から聞いていたのと、中国に限らずツアーパックの食事というのは大抵おいしくない)、予想していたよりはおいしかったです。肉類や魚介類はあまり出なくて(上海蟹や蘇州名物の揚げ魚のあんかけは食べましたが)、野菜中心の料理で、特に青菜類の炒め物がシャキシャキでおいしかった。
中国ではちょうど中秋節(十五夜)の直前で、あちこちで月餅が売られていて、地元の人たちが次々と買い求めていました。日本で、お正月にお餅を買うような感覚かな?
上海第一食品商店(食べ物のデパートみたいなところ)でも、月餅のコーナーが大々的に設けられており、お客さんたちでごったがえしていました。個別包装のミニサイズの月餅が500グラムいくら(約10個)の量り売りになっていて、人数の多い職場でのバラマキ土産用にちょうど良かったです。(正直、中国製の食品をもらっても嬉しくない人がいるのはわかっているけど、食べ物以外に買えるようなものもないからなあ……)
家族用には普通サイズの月餅を買って帰ったんですが、食べてみたら、かなり美味しかったです。
ちなみに月餅にもいろいろあって、茶色い皮のもの(日本の中村屋で売っているタイプ)を広州式、パイみたいな皮のものを蘇州式と言うそうです。ハーゲンダッツでは、月餅の形をしたアイスが売られているらしい……(店の外にポスターが貼ってあるのを見た)
格安ツアーのせいか、シルクだの蘇州刺繍だの中国茶だの、あちこち土産物屋に連れて行かれたのには閉口しましたが、そのほかはあの値段にしては満足できるツアーでした。楽しかった。
蘇州観光(留園、運河遊覧など)もセットになった、3泊4日の格安ツアーで。
上海は、人もめちゃくちゃ多くて、かなりの都会に感じられました。奇抜な形の超高層ビルが秩序も何も関係なしに乱立していて、なんだか映画の世界のような景観。
でも、その足元を見ると、古い家があって、洗濯ものがあられもなく干してあったり、食べ物屋の軒先の白いプラスチックのテーブルで朝食をとっている人がいたり、ボロいバイクや自転車の大群が走り回っていたり、とっても庶民的。
そのギャップが、不思議でおもしろいところでした。
※左の写真は、東方明珠塔(上海のテレビ塔)と、上海ヒルズ(中央奥のビル)です。(適当に画像縮小したら画質悪いなあ……。夕方だから画面暗いし)
上海では来年、万博が開かれることもあって、あちこちで工事しまくってました。
びっくりしたことには、泊まったホテルも、エントランス部分がまだ工事中だった……! 去年末に開業したばかりという触れ込みでしたが、デラックスクラスなのに格安なのにはこういう理由があったのか(笑)。客室や朝食バイキングはなかなか良かったけど。
毎朝、手作業ながら着々と工事を進めているのを横目にみながら、移動用のバスに乗りこんでました。
これから上海へ行くなら、万博に会わせて行くか、終わってからのほうがいいと思う。
食事はあまり期待していなかったのですが(中国の料理はあまり口に合わなかったと北京へ旅行した人から聞いていたのと、中国に限らずツアーパックの食事というのは大抵おいしくない)、予想していたよりはおいしかったです。肉類や魚介類はあまり出なくて(上海蟹や蘇州名物の揚げ魚のあんかけは食べましたが)、野菜中心の料理で、特に青菜類の炒め物がシャキシャキでおいしかった。
中国ではちょうど中秋節(十五夜)の直前で、あちこちで月餅が売られていて、地元の人たちが次々と買い求めていました。日本で、お正月にお餅を買うような感覚かな?
上海第一食品商店(食べ物のデパートみたいなところ)でも、月餅のコーナーが大々的に設けられており、お客さんたちでごったがえしていました。個別包装のミニサイズの月餅が500グラムいくら(約10個)の量り売りになっていて、人数の多い職場でのバラマキ土産用にちょうど良かったです。(正直、中国製の食品をもらっても嬉しくない人がいるのはわかっているけど、食べ物以外に買えるようなものもないからなあ……)
家族用には普通サイズの月餅を買って帰ったんですが、食べてみたら、かなり美味しかったです。
ちなみに月餅にもいろいろあって、茶色い皮のもの(日本の中村屋で売っているタイプ)を広州式、パイみたいな皮のものを蘇州式と言うそうです。ハーゲンダッツでは、月餅の形をしたアイスが売られているらしい……(店の外にポスターが貼ってあるのを見た)
格安ツアーのせいか、シルクだの蘇州刺繍だの中国茶だの、あちこち土産物屋に連れて行かれたのには閉口しましたが、そのほかはあの値段にしては満足できるツアーでした。楽しかった。
2009. 09. 13
『ホワイトストーンズ荘の怪事件』
Double Death (1939)セイヤーズ、クロフツ他 / 宇野利泰 訳 / 創元推理文庫
1985-03
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遺産目当てに殺されそうだと訴える老夫人。そこで、はるばるロンドンからヴェテランの看護婦が呼ばれることになった。ところが、屋敷に到着する前、乗換え駅で、彼女は何者かの手で毒殺されてしまった。そして、さらに……!? 連続殺人の謎を追う警部の捜査。二転三転するプロット、意外な結末。第一線の作家が連作した話題の推理長編。 (裏表紙より)
ドロシー・L・セイヤーズ、クロフツ、ヴァレンタイン・ウィリアムズ、F・テニスン・ジェス、アントニー・アームストロング、デイヴィッド・ヒュームによるリレー推理小説。
この手のリレー小説は、話の出来なんてのは二の次で、黄金期探偵小説作家たちの豪華な共演(とは言っても、セイヤーズとクロフツ以外は、現代日本人にとっては馴染みの薄い作家だが)を楽しむものではあるけれど、それにしたって、いまいち冴えない作品だった。なんか地味なんだよなー。
各作家の受け持ちの章の終わりに、執筆時の構想を示す「作家ノート」がついていて、それがこのリレー小説の最大の特色だと言えるのだけれど、かえって逆効果になっているような気がする。後のほうの作家になるにしたがって、前の作家たちの執筆部分に文句をつけ、修正や書き直しを要求し始めるのだ。それじゃあ、リレー小説の意味ないじゃん!
特にひどいのが、F・テニスン・ジェス。彼女の章のやたら感傷的な文章とベタベタな展開にすでに閉口気味だったのだけど、その作者ノートでの、先行の作家たちへのおべっか使いと、そんな下手に出るふりとは裏腹な出しゃばりっぷりときたら。この作家の長編は多分翻訳されていないだろうけれど、翻訳されたとしても、絶対に読みたいとは思わない(笑)。
まとめ役のデイヴィッド・ヒュームの最終章は、これまたつまらないことこの上ない解決だけれど、なんとかそつなくまとめようと思ったら、ああいう解決にでもしておく他ないのかもしれない。
2009. 09. 05
『従僕ウィリアム・テイラーの日記』
Diary of William Tayler, Footman, 1837 (1962)ドロシー・ワイズ 編 / 子安 雅博 訳 / 栄宝社
2009-07
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家事使用人のスケジュール、食事、賃金、役得など、いわゆる階下の世界の記録に留まらず、若きヴィクトリア女王の即位に歓喜する民衆、クリスマスの賑わい、鉄道の敷設工事、選挙、インフルエンザの蔓延、霧と煤煙など、人口集中の進むロンドンの社会事情を独特のユーモアを交えて描き出した、無名人ウィリアム・テイラーの日記。 (「BOOK」データベースより)
1837年の1月1日から12月31日までの、「紳士に仕える奉公人の日記」。ただし、このときウィリアムが仕えていたのは「紳士」ではなく、東インド会社で財を成した人物の未亡人(プリンセップ夫人)と、40代の未婚の娘。彼は屋敷で唯一の男性奉公人で、他に女性奉公人が3人いると書かれている。
ウィリアムは「紳士に仕える奉公人の生活は、籠の中に閉じ込められた小鳥の生活のようだ。小鳥は立派な家に住み、しっかりと餌を与えられてはいるが、自由を奪われている。」と嘆いている。しかし、空き時間に趣味の絵描きやスクラップブック作りや読書を楽しんだり、台所で客をもてなしたり、毎日のように頻繁に外出したり、女主人とともにブライトンへ夏の滞在に出かけたときには毎日海水浴を楽しんだりと、割りと自由時間が多い印象を受ける。
この日記は誰かに読ませることを想定して書かれたらしく(「さて、この日記を読まれた方々には奉公とはどんなものか少しは分かっていただけるだろう」)、日々の記録の他に、自分が上流階級の生活をどう見ているか、実例を挙げて説明したりしている。ウィリアムが紳士階級に向けるまなざしはかなり辛辣で、自分の女主人一家に対しても遠慮なしだ。
1837年(ヴィクトリア女王が即位した年)の記録であるところといい、男性奉公人の生活について人々が知りたいと思うであろうことをカバーしているところといい、もしかしてこれはフィクションなのではないかと、一瞬思ってしまった。
2009. 08. 30
読了メモ 『ゴースト・ストーリー傑作選―英米女性作家8短篇』
川本静子・佐藤宏子 訳 / みすず書房 2009-05[ Amazon ]
19世紀から20世紀初頭の、イギリス・アメリカの女性作家8人の怪奇小説アンソロジー。収録されている作家は、エリザベス・ギャスケル、メアリー・エリザベス・ブラッドン、シャーロット・リデル、ヴァイオレット・ハント、シャーロット・パーキンズ・ギルマン、ケイト・ショパン、メアリ・ウィルキンズ・フリーマン、イーディス・ウォートン。
「ゴースト・ストーリー」という書名ではあるけれど、怪奇現象が起きているのかどうかはっきりしない、もしくは起きていないとも読める作品が半分くらいを占めている。
そのなかでも印象的だったのが、「祈り」(ヴァイオレット・ハント)と「手紙」(ケイト・ショパン)。両方とも、夫婦の間に起きた心理的な悲劇で、夫婦だからこその残酷さ、身勝手さに背筋がぞっとさせられる。
しかし本音を言えば、「死んでいる人間よりも生きている人間のほうが怖い」なんてしたり顔で言われるのには食傷しているので、純粋に幽霊とかお化けが出てくる怪談を読ませてくれ!と思ってしまう……。(100年前の女性たちの精神的内面を描いた短篇集としては優れているんだけど、「ゴースト・ストーリー傑作集」という書名とはいささか乖離していると思うのだ。「ボウエン・ミステリー短編集」といい、みすずは時々こういうことするよなー)
イーディス・ウォートンの「呼び鈴」は、ウォートンの怪奇小説短編集 『幽霊』 に収録されていた「小間使いを呼ぶベル」と(多分)同じ。どうせなら未訳のものを収録してくれればいいのにね。

Rie (04/29)
きゃろる (04/27)
Rie (04/25)
有沢 (04/18)
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有沢翔治 (02/22)